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2023年度 通信教育課程 
卒業・修了制作展に寄せて

通信教育課程をご卒業の皆さま、大学院修士課程修了の皆さま、おめでとうございます。

数年間続いたコロナ禍もようやく収束の方向に向かい、今年度は通信教育課程開設25周年や芸術教養学科10周年を祝う行事を対面で行うことができました。

2013年にスタートした芸術教養学科は、本学初の完全オンラインの学科です。開設当初は、芸術教育を完全オンラインで実施することはできるのか、と懐疑的な意見も少なくなかったと聞いています。開設後は、周囲の不安を払拭して、毎年、クオリティの高い卒業研究が会場に展示されます。京都の瓜生山キャンパスで開催された10周年の記念行事には、全国から数多くの卒業生が集まり、指導教員だった先生たちと旧交を温める様子に胸が熱くなりました。

今年は、元日に能登半島で大地震が発生し、被害に合われた在学生もおられたと聞いています。心よりお見舞い申し上げます。卒業研究、卒業制作に集中的に取り組んでいる時期で心配しましたが、指導の先生から「思うように卒業制作が進まない状況の中で何とか制作を続けました。審査に合格した後も卒展に向けて作品の改良を続けておられ、頼もしさと希望を感じます」とメッセージをいただきました。また、「今年は最後まで投げ出さずに試行錯誤しながら取り組んでいる学生さんが多く、良い学年だったと思います」と感想を寄せてくれた先生もいました。

本学の通信教育課程の卒業展・修了制作展は、作品のクオリティが高いことでも知られています。広い会場に展示されたひとつひとつの作品を、どうぞゆっくりと鑑賞してください。

本学卒業後も、教えを受けた先生とのきずな、共に学んだ同期の仲間たちとのきずなは切れることはありません。通信教育課程の「収穫祭」、「卒業生・修了生全国公募展」、airUコミュニティなど、本学のさまざまな繋がるしくみを活用し、卒業後も長く芸術の学びを続けてゆかれることを心から願っています。

𠮷川 左紀子
京都芸術大学学長

春到来

まずはご卒業、ご修了をされるみなさん、まことにおめでとうございます。ご家族、ご友人の方々にも心から祝福の気持ちをお伝えしたいと思います。

大学生活の多くを新型コロナウイルスとの共存に費やされた方も多かったのではないかと思います。しかし、こうして卒業・修了制作、卒業研究・学位論文をかたちにされたみなさんの挑戦と努力は、何ものにも変えがたい経験であり、財産であると思います。

「つくられたるものはなんであっても鑑賞せられ、それを讃美しなければなるまい」とは、建築家で考現学を提唱した今和次郎[こんわじろう](1888~1973)の言葉です(今和次郎「工芸全野の讃美」『工芸時代』2-7、アトリヱ社、1927年)。今[こん]は、関東大震災直後の東京のまちを歩きながら、被災者が作り出した「バラック(barrack)」と呼ばれる仮設建築に魅せられ、その力強い生命力のなかに藝術を見出したのでした。

今年は年頭より残念な災害が起きてしまいました。今般の令和6年能登半島地震で亡くなられた方々に心より哀悼の意を表するとともに、被災された方々にも心よりのお見舞いを申し上げます。一日も早く生活再建がかないますことを願っております。

さて、今[こん]の言葉に込められた思いとは何か。それは日常、非日常を問わず、人間の営みのなかに認められる藝術 (性)への讃美ではないでしょうか。今後の復興に際して、本学の卒業、修了生のみなさんも、直接、間接的に携わられることもあるかと思います。いまこそ修得された藝術の学びが役立つときといえるかもしれません。

まさに、そうした藝術の学びの成果が、今回の卒業・修了制作展のすべての作品、研究には詰まっています。卒業・修了制作展へご来場いただいた皆さん。我々通信教育課程の誇るこの素晴らしい成果を存分に堪能してください!

そしてご卒業、ご修了される皆さん。健康に留意されて、これからの人生をさらに実り豊かなものとされますように祈念いたしております。

石神 裕之
京都芸術大学 通信教育部長

東風ふかば

春です。たまさかには寒さも感じますが、もう、そこにかしこに顔を出す早緑の芽吹きに心が弾みます。

昔の詩人は花咲く季節に言葉を寄せて、年々歳々花相似たり、歳々年々人同じからず、と嘆じました。しかし、毎春の卒業制作展を見ていると、嘆くには当たらないようにも思います。人の世代の交替や、個人の老いは仕方ありません。しかし老いるということは、成熟さらには成長でもあります。世阿弥が自分の父親(観阿弥)の芸を評して、老木に花が咲いているよう、と言ったように、人間も年々に花を咲かせられます。そして実のところ、樹木の花にしても、毎年同じ花が咲いているように見えているだけで、ひとつひとつの花は毎年違う花です。年々歳々冬が過ぎるたびに草木が新たなつぼみを膨らませるように、歳々年々の卒業制作展でもその都度、新しい才能が花を咲かせます。そうしてどちらの花も大きな命を受け継ぎ、伝えてゆきます。

大学には学園祭というものがあり、講演会、コンサート、屋台、仮装大会など、大学ごとにさまざまな趣向を凝らして学生たちが楽しみます。本学にももちろん学園祭があります。しかし、おそらく芸術大学のどこでも同様ではないかとおもいますが、学園祭以上に学生が熱心に取り組み、学園祭以上に大学が賑わう行事が卒業制作展でしょう。卒展の季節は、春という以上に心弾みます。

大学の校舎に吊るされた卒業制作展の垂れ幕が豊かに風を抱いて翻っています。今年も忘れることなく春が来ました。ご来場のみなさまも、どうぞ個々の作品にこの春ならではの匂いをご堪能ください。

上村 博
京都芸術大学 芸術研究科長(通信教育)

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