未曾有の被害をもたらした今回の震災と津波で被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
今、芸術大学として、ものづくりに関わるものとしてできること。
その答えが出ずに悶々としているところ、通信教育部の授業や昨年の国際陶芸トリエンナーレでお付き合いのある信楽の作家から連絡が入りました。
被災地の関係者との話の中で器の重要性が浮かび上がりました。
避難所での炊き出し、そこでは紙コップなどの使い捨ての器やカップラーメンの容器を繰り返し洗って使っているということを聞きました。十分に洗えないとか、耐久性の問題などは想像するに易く、それ以上にその現実にショックを受けました。
そこで我々と陶芸産地である信楽が連携し、器による支援活動を進めることにしました。
活動の一歩として炊き出しで必要とされる機能性の高い丼を送るから始めることとしました。
次のステップとして一汁一菜の器プロジェクトがあります。
避難所から仮設住宅への移動の時期に一汁一菜の器の提供を開始します。
阪神大震災ではその仮設住宅以降の生活での孤独さ、生活の豊かさの喪失が問題点とされました。今回、仮設住宅で居住することになる被災された方は津波や家屋倒壊により家財道具を喪失した方がほとんどで思い出深い器も同様に失われています。
器が必要とされる「食」とは人間生活の維持という生きるためのものでなく、何気ない日常の中で生活の豊かさを感じることのできる道具です。食卓から文化を感じ、生きる活力を生み出してもらいたい。その支えとなる器を制作し希望される各地に届けていきたいと思います。