01 大学院に進んだ理由
芸術と心理学。
どちらも学ぶことで、
誰かの力になりたい。
高校生の頃から、人の心について興味があり、心理学のプログラムを受講したり、ペインティングや写真などアートに関わる授業を受けられるだけ受けて、自主的に作品をつくったりもしていました。ニューメキシコ大学では、主専攻として心理学を、副専攻として日本の文化と言語を学び、京都への留学も経験しました。当時の私は不安神経症を抱えていたため、アートセラピーについても興味があり、芸術と心理学どちらかを選ぶのではなく、どちらも学ぶことができないかと考えるようなりました。大学を卒業して、YMCAに就職。子どもたちと関わる経験を積む中で、自分自身を助ける方法を知り、そこから「芸術を通して、誰かの力になりたい」という想いが大きくなり、より深く芸術を学ぶために大学院へ進む決意をしました。
02 大学院での学び
原子爆弾をつくった街と、
落とされた街。
「真実を知りたい」という
気持ちが、
研究の原動力に。
京都は、日本美術を学ぶのに、この上ない場所です。一方で、現代アートも成長を続けていて、そこに世界中からゲスト講師や学生が集まってくる「グローバル・ゼミ」は、私にとって理想的な環境でした。グローバル・ゼミの講義は、すべて英語。言葉の壁に不自由することなく、世界を舞台に活躍されているアーティストやキュレーターの方から直接指導していただきながら、自分自身の研究を深めていきました。私が焦点を当てたのは、広島と長崎、そして、自分の故郷であるロスアラモスについての研究です。ロスアラモスは「マンハッタン計画」の都市のひとつとして知られ、原子爆弾の開発拠点となった街です。私の故郷で暮らす人たちは、原子爆弾がつくられたことは知っていても、それがどこに落とされたのかという事実は話すべきでないことになっています。研究の原動力になったのは、小さい頃から抱いていた、「真実を知りたい」という気持ちでした。
03 現在の活動
プランは、ただのプラン。
どのような状況でも、
進むべき道は見つかる。
真実を知るためには、日本とアメリカ両方の歴史や文化を学ぶ必要がありました。はじめのプランでは、広島や長崎に足を運び、インタビューや撮影を行う計画でした。しかし、コロナウイルスが流行し、現地でのフィールドワークを断念。その頃、大きな支えになってくれたのがゲスト講師のヤン・ジュンさんです。彼自身、広島で映像作品をつくられた経験があり、研究や制作の進め方について親身にアドバイスしていただきました。そこからプランを再検討し、原子爆弾の最初の標的リストに含まれていた京都を舞台にビデオ撮影を行い、ロスアラモスにいる母親へのインタビューと私自身の考察を折り重ねるような映像作品が生まれました。この作品は修了展で優秀賞をいただき、私の糧になっています。グローバル・ゼミが修了した今は、日本語学校に通い、語学習得に励んでいます。この大学院で培った、アートを世界へ発信する力を活かせるように、次のステップを模索しています。
04 大学院の特徴・メッセージ
世界とつながる経験が、
大きな自信につながっていく。
グローバル・ゼミは、世界中からゲスト講師や学生が集まる環境です。ここでの経験を通して、様々なアートが世界とどうつながっていくのかを肌で感じることができました。同じゼミの学生からも学ぶことがたくさんあり、自分とはまったく異なる人生経験や文化的背景をもつ人たちの、様々な価値観にふれることができました。そして、作品をつくってゼミの中だけで講評するのではなく、展覧会に参加させていただくチャンスが何度もあり、空間構成を考える力を養うとともに、展覧会を発展させるための要素を学び取ることができました。これまでは、自分のことに対して、「本当にこれでいいのか」「これでよかったのか」と思い悩むことがありました。しかし、様々な人とコミュニケーションを取り、作品を人に観てもらう経験を積むことで、自分の決断に自信をもつことできました。大学院で出会える知識や経験は、より深い洞察力を得るために役立ち、新たなアイデアへの探求を促してくれるはずです。
Leia Barela Roachリーア・バレラ・ローチ
グローバル・ゼミ 2020年度修了
アメリカ、ニューメキシコ州のロスアラモス出身。ニューメキシコ大学で心理学や日本の言語・文化を学び、京都の立命館大学への留学も経験。大学を卒業し、YMCAに就職して社会人を経験した後、本学のグローバル・ゼミへ。アメリカと日本の両サイドから原子爆弾の問題を描いた作品『Parallel Conversations』は修了展で優秀賞を受賞。ホテル アンテルーム 京都でのグループ展や、東京都美術館で開催された『KUA ANNUAL 2020』にも参加。
芸術実践領域
(旧:グローバル・ゼミ)Contemporary Art Practice
トップアーティスト、
キュレーターを生むことだけを
考え抜いたゼミ
このゼミでは総合力と跳躍力のあるアーティストやキュレーターを育てます。つまり、世界を俯瞰的に捉え、広い視野から世界の動向を把握できるような総合的な視点をもち、自分なりのリサーチを蓄積していくことによって、その後の跳躍を助ける知識をもつ人材になるということです。加えて、世界のアートシーンでは英語力が問われるため、授業やゲスト講師とのコミュニケーションはすべて英語で行います。在学中に可能な限り多くの学びと気づきを得て、卒業後にアーティストやキュレーターとして世界のアートシーンで高くジャンプできる人材を育てたいと思っています。