アートという不可能なことを、どのように可能にするか。檜皮という作家を、どのようなかたちで生かしていくのか。大学院で研究したいと考えました。学部時代に彫刻を通して造形の強さを突き詰めた経験と、舞台美術や演者としてパフォーミングアーツの分野に関わってきた経験をもとに、私の作品は可変性/可塑性を帯びていきました。檜の皮やポータブルラジオ、照明器具、そして車椅子。誰でも手に入る物を使って作品を構成しながら、コミュニケーションの量と密度を高めていく。音や光、私や来場者自身のパフォーマンスによって、作品は終わりなくかたちを変えていく。自分の手を動かすという行為は必要なくなり、作品のほうが動き始めたのです。
学問としてのアートは
とても自由で、
生きる知恵を与えてくれる。
手を動かす時間よりも、頭を動かして作品と向き合う時間が増え、座学の大切さを再確認しました。私は、アートは人文領域のひとつだと考えています。たとえば、美術はいつも社会の動向と対比しているため、美術史を理解するためには世界史を知る必要があります。他の学術分野と接続できる点が無数にあり、学びたいことは次々と見つかりました。学問としてのアートはとても自由で、社会がどのように変わろうとも、その流動性に耐えうる知性を与えてくれます。アートを学び、「自分の作品をつくる」という固執からも自由になれたことで、今の私を支える核となる「hiwadrome」というコンセプトに辿り着けたのかもしれません。
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檜皮 一彦
美術工芸領域 2017年度修了
大阪府生まれ。修了展で発表した『hiwadrome type ZERO』で大学院賞を受賞。inner space colony(ARTZONE)、ULTRA×ANTEROOM exhibition 2018「Re:Traffic」、アートアワードトーキョー丸の内2018など、修了後間もなく次々と展示を手がける。第22回 岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)受賞。
プロフィールはインタビュー時の経歴となります。
芸術実践領域 CONTEMPORARY ART PRACTICE

アーティストとしての
確実なキャリアを
実現するため
の実践的プログラム
本領域では、世界で活躍できるアーティストやプロフェッショナルの輩出を目指しています。そのために、必要な専門的スキルを高めるとともに、自己の作品や立ち位置を客観的に見つめる視点や、作品を言語化し伝える力を実践的に養います。
選抜された、異なるメディアを扱うアーティストたちがひしめき合う国際的な環境で、違いを豊かさと捉え、多様な人々とつながりながら、新たな表現を生み出す力を育み、コミュニケーション能力とプレゼンテーション能力を育成します。


