400年以上前の漆器から、
塗装の技を読み解く。

芸術文化研究領域
(旧歴史遺産研究領域)
Arts and Culture Studies

芸術文化研究領域
(旧歴史遺産研究領域)
2013年度修了

東京文化財研究所
保存科学研究センター

近代文化遺産研究室
研究補佐員
山府木 碧

関東の美術大学に通っていたころ、授業がきっかけで“文化財の保存修復”に興味を持ちました。進路に迷っていた私に、先生が修復家の方を紹介してくださり、その方に薦めていただいたのが、本学でした。私はまず、文化財研究の基礎を学ぶために大学への3年次編入を選びました。そして、漆工品の塗装技術の調査において、第一人者として研究に取り組まれている岡田文男先生のゼミに参加。この先生のもとで、さらに研究を深めたいと考え、大学院へ進みました。漆器の塗膜の断面から、顔料や塗膜の層構造を分析、観察し、その塗装技術を読み解くことが私の研究テーマでした。研究の対象は、宋時代から明、清にかけての中国の漆器。大抵は3mm以下の小さな試料から観察用の標本をつくります。層構造がよく見えるように丁度良い位置まで手作業で削る必要があり、それには集中力と経験を要しました。そして、その研究を通して、私は多くのものを学ぶことができました。試料を一度見て終わりではなく、観察と考察を繰り返すことの大切さを、身をもって教わったのです。

観察と考察を繰り返すことで、
育まれた姿勢。

岡田先生の指導や、研究の姿にふれた私は、目の前の漆器と深く向き合うことを学びました。見て、考えて、見て、考えて、観察と考察を何度も繰り返すことで、最初は得られなかった発見や新しい視点が生まれるのです。そんな体験を重ねることで、ものを見る目が鍛えられ、粘り強く研究に臨む姿勢や、失敗を恐れず「何でもやってみよう」という好奇心を育むことができました。その経験は今、東京文化財研究所で研究員として働く私の土台になっています。私が携わっているのは、近代文化遺産の保存修復に関わる調査です。日本の近代化を担ってきた文化遺産の保存修復のための情報収集・技術や材料の調査を行っています。対象物は違っても、ものと向き合う姿勢は同じ。私にとってこの大学院は、研究者としての軸を与えてくれた場所です。

山府木 碧

歴史遺産研究領域 2013年度修了

武蔵野美術大学在学時に文化財の保存修復に興味を持ち、卒業後に本大学の3年次に編入。漆器の塗膜断面分析に取り組み、調査技法や研究員としての姿勢を身につける。現在は、東京文化財研究所の近代文化遺産研究室に所属し、富岡製糸場や第二次世界大戦中に生産された国産戦闘機(飛燕)などの保存修復に関わる調査・研究に従事。

プロフィールはインタビュー時の経歴となります。

Works

芸術文化研究領域 ARTS AND CULTURE STUDIES

「本物」と対峙し研究を通して
新たな「未来」をデザインする

この領域では、京都を中心に、様々な人々によって育まれてきた有形・無形の芸術文化の「今」を肌で感じ、各自の研究を通してその価値を捉え、芸術文化の持続的活用を考えていきます。単なる論文執筆に留まらず、実践的な授業・研究活動を通してコミュニケーション力や表現力を鍛えます。自身の専門性をもとに、時空を超えた芸術文化と人との関わりを、より多くの人々に魅力的に伝える力を育みます。

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