01 大学院に進んだ理由
たった数秒で人を惹きつける、
日本の広告デザインを学びたい。
韓国の工学系の大学で、プロダクトデザインを学んでいました。もともと、広告にも興味があり、プロダクトデザインを学べば学ぶほど、自分の関心は広告デザインにあるのだと感じました。韓国のテレビCMやSNSに上がってくる広告は、日本の影響を受けているものが多くあります。たった数秒しか目にしないのに、強く惹きつけられる。そんな広告を目にするたびに、日本で広告デザインを学びたいという意欲が高まっていきました。日本に留学している友人や日本人の友人もでき、何度も日本に訪れるうちに、京都の街が大好きになりました。自然も多く、都会のにぎわいもある。伝統的な風景も残っていて、こんな街で自分の好きなことを学べたらいいなと、大学院の進学を決意しました。
02 大学院での学び
デザインが、社会の活力になる。
豊かな文化的背景をもつ、
日本の広告史をリサーチ。
大学院では、日本の広告史について研究しました。江戸時代から昭和までの歴史を調べ、その成果をインフォグラフィックで分かりやすくアウトプットするという試みです。まず、力を注いだのはリサーチでした。1年目は本を探し集め、日本語を訳しながら読み込みました。東京にある広告博物館にも足を運び、様々な展示を目にしました。膨大な資料にふれる中で、アジアの中でも日本はとりわけ広告の歴史が長く、豊かな文化的背景を持っていることがわかってきました。たとえば、戦時中や戦後など、経済的に厳しい時代には、デザインの力で世の中を元気づけようとした広告がいくつも見られます。優れた広告が日本で生まれるのは、なぜなのか。奥行きのある歴史を辿りながら、考察していきました。リサーチした膨大な情報を整理するときは、大変な苦労がありましたが、指導教員の藤原裕三先生に時間をかけて寄り添っていただいて、インフォグラフィックや論文にまとめていきました。
03 現在の活動
自分の仕事を絞り込まず、
好奇心を大切にして、
視野を広げていく。
卒業後は、グラフィックから店舗の内装まで、幅広いデザインを手がける京都の会社に就職。1年目は、パッケージやカタログのデザインを担当しました。就職してからも、よく思い出すのは「好奇心を大切にしなさい」という学長の言葉です。大学院では、自分の研究テーマだけでなく周りの取り組みや制作にも関心をもつことで、視野が広がり、大きな糧になりました。この習慣がデザインの仕事にも活きていて、1年目から自分が任された仕事だけでなく、周りのデザイナーが担当している内装やインテリアにも興味をもち、プロジェクト全体を見渡すように心がけました。こうした積み重ねのおかげか、2年目からはアシスタントディレクターとして、企画から商品が世に出るまで、全体に関わる仕事を任されるようになりました。先輩のディレクターから「質問の質が変わったね」と褒めていただいたときは、これまでの努力が認められた気持ちになりました。
04 大学院の特徴・メッセージ
学びたい、もっと知りたい。
その意欲を、
さらに大きくしてくれる場所。
大学院は、自分の興味を深く掘り下げる場所です。2年間という限られた時間の中で、研究を進めていく日々は自分との闘いです。しかし一方で、絵を描く人や物をつくる人が同期にいて、自分自身の興味を“深める”ことだけでなく、“広げる”ことの素晴らしさも身をもって体験することができました。デザイナーとして仕事をはじめてからも、京都芸術大学の卒業展・修了展には必ず足を運んできました。学生が社会から学ぶことはたくさんありますが、社会に出た人が学生から学ぶことも、たくさんあると思うからです。これからは韓国に帰って、修士の2年間を通して関心が高まったインフォグラフィックを学ぼうと準備中です。もともと、学ぶことへの意欲は強いほうでしたが、修士の2年間で、「学びたい」「知りたい」という想いがますます大きくなっています。この気持ちは、これからの人生に向けて私の原動力になってくれると感じています。
鄭 惠允ジョン・ヘユン
情報デザイン・プロダクトデザイン領域(旧:デザイン領域) 2016年度修了
韓国出身。大学ではプロダクトデザインを専攻。もともと興味のある分野だった広告デザインを学ぶため本学へ。日本の江戸時代から昭和初期までの広告デザイン史をリサーチし、グラフィックで表現を試みた。卒業後は、京都のデザイン会社でデザイナー・アシスタントディレクターを経験。現在は、韓国に帰国し、デザインへの造詣をさらに深めるためにインフォグラフィックなどを学ぶ。
情報デザイン・
プロダクトデザイン領域
INFORMATION DESIGN
AND PRODUCT DESIGN FIELD
社会的課題を発見し、
情報伝達や生活の新たな仕組みを提案する
デザインは常に社会を変える原動力となってきました。地球環境や世界情勢が 大きく変動している現在、デザインの役割はますます重要になってきています。本領域では5年先10年先の世界を見据えて、情報コミュニケーション、ビジュアルクリエーション、プロダクトデザインに関わる実践者、研究者を育んでいきます。