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「隣の野草は青くみえる 下 」

洋画コース 松隈 あや

162 × 130.3cm
キャンバス/油彩

本作は、自身と他者の容姿を比較してしまう感覚や、その関係性と向き合うために制作した作品である。F100号キャンバスを縦に連結した二枚組の画面に、大きな女性像と、その足元に立つ怪人を描いた作品である。女性像はロリィタ・ファッションをまとい、幼なじみをモデルとしている。足元の怪人は、自身の分身として表現した存在である。
女性像の足元に立つ小さな怪人は、他者と並ぶことで生じる比較の視線を内面化し、必要以上に自分を小さく感じてしまう感覚を形にしたものである。無意識のうちに他者と自分を比べ、その中で揺れ動く自己認識や不安定さを象徴している。

本作でロリィタ・ファッションを用いたのは、その装いが持つ二面性に惹かれたためである。過剰な装飾や可憐さを特徴とする一方で、ロリィタ・ファッションは、着る者が自身のコンプレックスや現実への違和感を引き受け、外部からの視線や評価から心を守るための「鎧」としての側面も持っている。本作ではその性質に着目し、女性像を、外見評価や他者との比較から自己を守る存在として描いた。

制作当初は一枚のキャンバスに全身像として描く構想であったが、単なる肖像画として受け取られてしまうことへの違和感から、F100号キャンバスを二枚連結する構成へと変更した。画面を分割することで、女性像と怪人の関係性や距離感、両者の間にある心理的な隔たりが、より際立つのではないかと考えた。

背景には、「隣の芝生は青く見える」という慣用句を手がかりに、あえて芝生ではなく野草を描いている。野草は整えられた美しさとは異なり、踏まれてもなお生き抜く力強さを持つ存在である。その姿に、外見の優劣や比較の中で揺れ動く人間の在り方を重ね合わせた。野草を描くことは、他者と比較してしまう自身の認知を見つめ直すと同時に、「そのままの姿で生きていてもよい」という感覚を画面に置く試みでもある。

「隣の野草は青くみえる上」
162 × 130.3cm
キャンバス/油彩

松隈 あや

洋画コース

CONTACT

在学中から「容姿」をテーマに作品を制作している。
きっかけは、自画像の課題で自分の顔を描くのがどうしてもつらかったことだった。
そこから、外見と自分の認識のズレや、他人との関係について考えるようになる。
SNSで強く感じる外見至上主義や比較の空気を、自身が容姿を比較されてきた経験と重ねながら、外見の価値の曖昧さや、比較から自由になる視点を探っている。

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