風の童子・雷の童子
「ふうちゃん らいちゃん 蒼空(そら)で遊ぶ・・・」
日本画コース 高村 輝美 (Terumi Takamura)
コース奨励賞
116.7 x 160.6 cm
高知麻紙 / 水干、岩絵具、金泥
日本画を学び始めてから、美術館を訪れる際には、自然と日本画作品に目が向くようになりました。なかでも強い印象を受けたのが、酒井抱一筆《風神雷神図屏風》です。表に描かれた躍動感あふれる風神・雷神だけでなく、裏面の《夏秋草図屏風》にも深く心を打たれました。雷神の背後には雨に打たれる夏草と水流が、風神の背後には野分に吹かれてしなう秋草が描かれており、金地の表に対して、裏は渋い銀地で表現されていて、自然への眼差しと日本画の技法によって、日本の叙情性が美しく昇華された作品であると感じました。
《風神雷神図屏風》は、俵屋宗達に始まり、尾形光琳、酒井抱一、鈴木其一へと、約二百年にわたり描き継がれてきた主題であり、日本美術における重要な系譜を形成しています。現代においても多くの画家が取り組むテーマである点に魅力を感じ、本制作の着想の背景となりました。
制作にあたり、今の自分が最も描きたい身近な存在として、主人の姪の二人の子どもを題材に選びました。三歳の兄と二歳の妹と過ごす時間は大変でありながら、笑いと驚きに満ちており、このかけがえのない瞬間を作品として残したいと考えました。二人が動画に合わせて踊る姿を見たとき、その無邪気な動きが風神・雷神のイメージと重なり、「神にも子ども時代があってよいのではないか」という発想に至りました。
風神の童子「ふうちゃん」は、ボッティチェリ《ヴィーナスの誕生》に描かれた天使を参考にし、口元の表情や花びらを吹き散らす動きによって風の流れを表現しました。雷神の童子「らいちゃん」は、おもちゃの小太鼓で遊ぶ姿から着想し、雷神の太鼓の代わりに小太鼓を持つ姿として描いています。雲の表現には平等院鳳凰堂の雲中供養菩薩像を参考にし、足元には雲と輪宝を配しました。画面上部には天上界の星を、雲の下には大地を潤す雨をイメージして描いています。
制作途中の損傷をきっかけに、「ふうちゃん」「らいちゃん」の上半身に衣装を描きました。平安・鎌倉時代の童子像の装身具や文様を取り入れて描きしました。(2025年12月制作)
高村 輝美 Terumi Takamura
日本画コース
1959 福島県いわき市生まれ
1978 東京造形大学デザイン学科テキスタイルデザイン 入学
1982 同大学 同学科 卒業
1982-1983 福島県内公立中学校美術科・家庭科講師
1983-1993 東京都内公立中学校美術科教諭
1993-1996 夫に帯同して渡米、ワシントン州立ベルビューカレッジ(旧ベルビューコミュニティカレッジ)で水彩画を学ぶ
2017 臨床美術士(クリニカルアーティスト)3級資格修得
1996-2022 東京都内公立中学校美術科教諭(2021定年退職)
2022-2025 東京都内公立中学校美術科講師
2022 藝術学舎の一般公開講座で日本画を学ぶ
2023 第82回日本画院展にて新人賞受賞
2023 京都芸術大学通信教育部美術科日本画コース3年次編入学
2026 同大学 同部 同科 同コース 卒業
現在東京都清瀬市在住
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