本文へ移動

「天馬行空」  ー桜梅桃李の如くー

静かに佇む左馬、多彩に駆ける天馬。

染織コース 嶋田 悦子 (Etsuko Shimada)

「左馬」タテ85㎝×ヨコ39㎝  絹・綿/草木染め/組織織・綴織
「天馬」タテ178㎝×ヨコ125㎝  羊毛・綿/酸性染料/綴織

卒業と還暦という人生の節目が重なったことから、卒業制作では、今年の干支である「馬」をモチーフとした。

馬は古くから「幸運」「成功」「前進」「繁栄」の象徴として、世界中で愛されてきた存在である。

前期作品では、自由に空を駆け上がる力強さや躍動感をイメージし、毛筆で漢字「馬」を書いた。さらに、それを反転させることで「左馬」の下図とし、より象徴性を高めている。
後期作品では、毛筆で書いた漢字の字形を基に天馬を描くことにした。作品題名でもある「天馬行空」の言葉通り、天馬を自由な線で描き、織りの下図としている。また、色の持つパワーを借り、多彩な色彩の糸で天馬を織り上げた。
副題の「桜梅桃李の如く」には、「私は私」という思いを込めている。他と比べることなく自身の成長を喜び、染織を楽しみながら織り続けたいという願いである。さらに、常識や型にはまりがちな心に、「自由でいいんだ」と思い出させてくれる作品を作りたいと考えた。

足元の水飛沫の色は最後まで決めかねていた。天馬が高く飛ぶための原動力は何かと考えたとき、これまでネガティブな思考や感情を前向きに受け止め直し、成長の糧としてきた自身の歩みを思い出した。
そこで、黒糸には不安や悔しさといったネガティブな感情を、赤糸にはそれを乗り越えようとする強い意志や、前へ踏み出すための力を託した。
迷いや苦しみさえも力へと変え、天馬がさらに高く舞い上がるためのエネルギーを生み出す源なのだと考えるに至った。
それは、前へ進もうとする私の姿でもある。

しかし、この作品は私の想いだけに留まるものではない。作品を見て頂いた人それぞれが、言葉にならない何かを心の奥に感じ、その感覚を自由に受け取ってほしい。そして、その想いを乗せて、天馬はさらに高く、より遠くへと飛び続けていく。

空へ向かって進む天馬の姿が、見る人それぞれの歩みと重なり、前へ進むための力となることを願っている。

「左馬」 掛け軸風 〜異なる織りを重ねて〜
組織織(ひし形斜紋織)・草木染め(梅/桃)・鉄媒染 
染色・整経・織りの様子
制作風景
毛筆のかすれを再現
「天へ躍る」 〜下から見上げる天馬〜              
自作の綴織用木枠(240㎝×183㎝)
制作風景
「始まりの白」 〜育てた綿花を紡ぎ、風の流れを表現〜
「内側から生まれた色、そして跳ね上がる」
〜情熱・強さ・躍動感をイメージ〜
「天馬と迎えた完成」 〜もちろん!ご褒美は人参〜

嶋田 悦子 Etsuko Shimada

染織コース

CONTACT

2019年10月、以前からの興味とタイミングが重なり、裂織を始めた。

初日から時間を忘れて集中することができ、織りの楽しさに強く惹かれていった。次第に、布だけでなく様々な糸を使って織ってみたい、使う糸を自分で染めてみたい、さらに異なる技法を知りたいという思いが強まり、2022年4月、染織コースに入学した。

裂織との出会いをきっかけに、織ることそのものへの関心が深まり、学びを重ねる中で綴織へと表現の幅が広がっていった。

制作の日々は決して楽なことばかりではないが、糸を織り重ねる時間は心が満たされ、疲れを忘れるほど夢中になれる。イメージを膨らませ、悩み、考えながら自分だけの表現を形にしていく。その過程にこそ、綴織の大きな魅力があると感じている。

このコースのその他作品