ひみつのアトリエ

この村に生息する本学教員は皆個性豊かな表現者であり研究者です。彼らにとって大切な「ひみつのアトリエ」を紹介します。普段なかなか見ることのできない先生方の素顔、意外な一面が見られるかもしれません。また、みなさんにとって何かしらのヒントが見つかるかもしれませんね。
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加藤志織

芸術教養学科


 アーティストではない私にとってアトリエに相当する場所を探してみました。しかも秘密の…。西洋美術史を専攻してきた自分にとっては大学の研究室と自宅の書斎が美術家の仕事場に当たります。ちなみに研究室は楽心荘(能楽堂)近くにある小径を歩いていった先にある小さな建物の1階。私を含めた4人の通信教育部の教員でワンフロアをシェアして使っています。緑の木立に囲まれたその部屋は、第三者にとっては秘密の場所のように見えるかもしれませんが、室内には専門書や学術雑誌が詰め込まれた本棚をのぞけば、ご覧のようにごく普通のパソコンと電話が置かれたシンプルな机、コピー機、長机、空調機、冷蔵庫といったどこのオフィスでもみられる実用的なもので占められています。たいして面白くありません。とはいえ、大きなガラス窓が嵌め込まれ、美しい木漏れ日や鳥のかわいらしいさえずりを楽しむことができる点はちょっと自慢できるかも。

では自宅の書斎はというとこちらもとくにかわりばえのしない机と椅子、パソコンと書籍があるだけ。そもそも書斎と呼べるようなしろものではなくて一般的な集合住宅の一部屋にすぎません。白い壁紙と白い床によって構成されたそのホワイトキューブの空間に書籍・論文・学会誌などをおおざっぱに平積みしているので、どこにどの本があるのか、自分でもよくわからなくなることがあります。大きな画集などは目立つので探しやすいのですが、文庫本などは部屋の中をひっくり返しても発見できないことが多々あります。書架から溢れ、日々増え続けて分類不可能になった蔵書の扱いには困るばかりです。さりとて人文学の研究にとって書籍は必需品。無しで済ますことはできません。このようにまったく色気のない環境で毎日仕事をしています。