ひみつのアトリエ

この村に生息する本学教員は皆個性豊かな表現者であり研究者です。彼らにとって大切な「ひみつのアトリエ」を紹介します。普段なかなか見ることのできない先生方の素顔、意外な一面が見られるかもしれません。また、みなさんにとって何かしらのヒントが見つかるかもしれませんね。
backnumber


髙梨武彦

ランドスケープデザインコース


 私の専門は森林美学。森林の調査を通じそこから森林の美を見出す・引き出す、そんな調査研究をしています。とすれば、調査に向かった森林が僕にとってはアトリエ空間の一つなのでしょうか。とはいえ、原稿執筆などの諸々の業務を自宅でこなします。ですから、普通に思い浮かべられるようなアトリエ空間は自宅にはありません(もちろん、別に仕事場を借りていることもありません)。しいていえば、一つ目は書籍や資料・写真のフォルダーなどを置いている現実の空間そして二つ目は執筆からデータ整理そして食事など行っている電気炬燵の机。三つ目は収集してきた書籍・新聞記事・写真をデータベースソフトで日々更新保存管理しているPC空間内のファイルである。この三つが僕にとってのアトリエ空間であろうか。じつは、妻と子は4年前に介護や農作業のこともあり横浜の妻の実家に戻すこととなり、現在、築40数年の3DKの団地に単身赴任状態にあります。3人で居るときから壁は本棚に、押入れは資料と新聞フォルダーおよびスライド写真ケースそして本棚に置けない書籍などが入った段ボール箱とで占められていました。そんなたたずまいであるからか、妻は人が訪ねてくると倉庫(書庫)の中に住んでいると話ししているのでした。一人になったので3DKの部屋は僕専有となり空間が空くのかと思ったのですが、遊びに来るからと2人は衣類を持っていったくらいで多くはそのまま残されたため、ちっとも空き空間は確保されなかったのです。そのため、増える書籍や資料・写真のフォルダーの置き場の確保に苦労し、文句を言われることもないため、元子供の机に置くようになり、それでも足りずに畳の上に積読しています。はたして写真のようなここをアトリエと見て感じていただけるのかまったく自信はありません。が、40数年にわたって収集してきた森林美学に関する本多静六先生・田村剛先生などの書籍や恩師の出口一重先生が投稿された「造園研究」などの雑誌や林野庁が出版した嵐山や東山の森林風致施業報告書など、手に入らないと思っていた原本を含む収集書籍と年代順に並べている資料フォルダー、そして全国各地で撮影してきた森林のスライド写真を収めたケースとで占められた倉庫(書庫)とこれらを保存管理するPC空間内のファイル、そして執筆という制作活動の場である机、この3つはたしかに僕にとってアトリエ空間なのです。