ひみつのアトリエ

この村に生息する本学教員は皆個性豊かな表現者であり研究者です。彼らにとって大切な「ひみつのアトリエ」を紹介します。普段なかなか見ることのできない先生方の素顔、意外な一面が見られるかもしれません。また、みなさんにとって何かしらのヒントが見つかるかもしれませんね。
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下村泰史

芸術教養学科


 芸術教養学科の下村です。専門は環境論と緑地計画で、ときどき環境デザイン学科やランドスケープデザインコースにも顔を出したりしています。

さて、私の「ひみつのアトリエ」はここ。この佇まい、見たことある方いらっしゃるかもしれませんね。

茶山駅から瓜生山キャンパスまでのくねくね道の途中にこの場所はあるので、スクーリング等で本学まで来たことのある方は、この前を通っているかもしれないのです。まあ、何の変哲もない家屋なので、そんなのあったっけ、という方がほとんどでしょう。

中に入ってみると、通路を挟んでカウンターと座敷が、奥に厨房があります。むかし居酒屋だったことがまるわかりな構成。一時期は、ドイツパン屋さんが入っていたこともありました。

今は、ピアノがあったり、100年ものの足踏みオルガンがあったり、ホルンがあったり民族楽器がいろいろあったりと、ちょっとした音楽室の趣。どういう場所なのかというと、音楽家を中心としたアーティストたちがシェアして使っているのです。どういうわけか、私もそのメンバーに入れてもらっていて、時々使っているのです。
音楽のワークショップやライブが行われることもありますし、去年は古着市みたいなこともありました。私も役員をつとめるNPOの行事や、芸術教養学科のフライングカフェ(学習相談会)で使わせてもらったりしています。

東日本大震災と福島原発の事故があったときに、多くの人が西日本に移住してきました。この左京区にも芸術系の人々を含む何人もの人が移ってきました。この「ケパサキ」もそうした人たちが拠点として借りたものなのです。

私もこの仲間に参加して、いろいろ刺激を受けました。まちづくりの中での即興音楽の可能性など、ここでの交流から気付かされたものですし、盆踊りギタリストとしての活動も、ここが出発点となっています。

この「ケパサキ」が面している道は、「茶山街道」という古道で、比叡山と京の街をつなぐ、田園の中の一本道だったそうです。また、北白川村と一乗寺村、京都市と愛宕郡の境界線だったこともあるとのこと。この場所は、近代以前の昔から「あいだにあってつなぐもの」という役割を、なんとなく担ってきた場なのです。

ここで、新しい交流が生まれたらうれしいなと思っています。

「ケパサキ」は、スペイン語で「ここでなにをしているの?」という意味だとか。この前を通りかかったときに、中で何かしている人がいたら、ぜひ覗いてみてください。