ひみつのアトリエ

この村に生息する本学教員は皆個性豊かな表現者であり研究者です。彼らにとって大切な「ひみつのアトリエ」を紹介します。普段なかなか見ることのできない先生方の素顔、意外な一面が見られるかもしれません。また、みなさんにとって何かしらのヒントが見つかるかもしれませんね。
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久田多恵

染織コース教員


 「ひみつのアトリエ」は上村博先生が書いてくださったように、元々は『雲母』誌上で染織コースが連載していたコラムのタイトルです。先生方の秘密のアトリエは本当に興味深く、様々な工夫が参考になりました。卒業制作のスクーリングや3年次配当のテキスト科目などでは学生の皆さんに自宅制作の状況を写真に撮って見せてもらうことがあります。それぞれに個性的な制作場所と道具の工夫に驚くことがあります。作品完成への道筋が制作場所を作っていくのだと実感します。
 振り返って私のアトリエはといえば秘密の工夫などはあまりありません。「秘密のケンミンSHOW」というテレビ番組があり以前は好きでよく見ていました。それぞれのお国言葉で「秘密なんてない!」と叫び、地域独特の習慣や言い回し、食べ物などを取り上げていて楽しめました。番組流に言えば愛知ケンミンの私は「秘密なんてないがね!」と言いたいところです。京都府民になってから長らく住んだ向日市から二年ちょっと前、木津川市に引っ越しました。向日市の住まいは秘密のアトリエ候補になったのですが、遠いので頻繁に立ち寄ることはできません。今のところ秘密の荷物置き場となっています。今の住まいのいいところは通勤途中に京都府南部の山を越えてくることと国立国会図書館の関西館が近いことです。

 近いといっても歩いて一時間ほどかかります。歩かなくてももちろんいいのですが、なぜか歩いていくのにちょうどよい距離感なのです。たくさんの図書に囲まれて調べ物をするのもいい。でも歩いていく途中に四季折々の植物の様子を見たり、山田川に集まる水鳥たちを眺めたりすることの方が今のところ発見が多いような気がしています。図書館はここに来たらいろいろな資料があるのだな、と思えるだけで安心感があります。東京外苑キャンパスに出張した折に千代田区の方も訪ねてみました。あいにく日曜日でお休みでした。図書館は日曜日も開けてほしいですね。いつか再訪したいと思っています。
 さて秘密がないと言っていても仕方がないのでここのところの取り組みをご紹介します。四月の終わり頃にゴーヤの苗を四株もらいました。

蔓性の植物は触手を伸ばすように繁茂していくところが生命力を感じさせます。クズやカラスノエンドウ、ヤブガラシなど時には茂り過ぎて困ってしまいますね。絞め殺しの木と呼ばれる蔓性植物は他の木に絡みついて枯らしてしまうこともあるそうです。

 もらったゴーヤの苗は土用を気にしつつプランターに植えました。野の植物とは違ってまだまだひ弱なのですがスケッチしました。

 葉先の鋭さと柔らかさが描けずゴーヤに申し訳ないくらいです。夏に向かって元気に育っていくのに従ってスケッチも力強くなっていくといいな、と思っています。黄色い花が咲き小さな実がなるのを心待ちにしています。一番楽しみにしているのは実を食べること。私は無類のゴーヤ好きなのです。四株あるので少なくとも百個くらいは収穫できるのでは、と期待しています。この先作品になるとしたらゴーヤ模様の着物か帯か、はたまた絵画かと夢は広がります。
私のアトリエは野、または地球といったところでしょうか。秘密でも何でもなく魅力的な題材に触れている毎日が創造の場となっています。