ひみつのアトリエ

この村に生息する本学教員は皆個性豊かな表現者であり研究者です。彼らにとって大切な「ひみつのアトリエ」を紹介します。普段なかなか見ることのできない先生方の素顔、意外な一面が見られるかもしれません。また、みなさんにとって何かしらのヒントが見つかるかもしれませんね。
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清水六兵衞

陶芸コース教員


 私のアトリエは以前、父清水九兵衞が彫刻のアトリエとして使っていたところで、京都五条坂の六兵衞窯工房の中にあります。この部屋にロクロはなくて、ドラフターがあるなど陶芸家のアトリエとしては少し趣が違うかもしれません。ドラフターは私が建築学科の学生だった時に使っていたもので、今も現役で使っています。この機械があったからこそ、今のような作風が生まれたといってもいいでしょう。ものを作っていく上で道具はとても大事です。タタラ板を作る機械もこれがあるからこそ今の作品が出来上がっているといっても過言ではありません。それから陶芸にとって欠かせない窯も今や電気炉が大きく普及し、温度管理もマイコンでできるようになりました。このことで安定して焼成できるようになったことも大きく影響しています。
 大学卒業後、東京から京都へ戻り、陶工を育てる職業訓練校で1年間ロクロ成形を学びました。当初はロクロで作品を作っていたのですが、公募展に応募するようになって、当時はすでに市民権を得ていた陶によるオブジェを作り出しました。その技法が図面を引いて土の板を組み立てていく今の技法です。子供のころから定規で線を引いたり、コンパスで円を描いたりすることが好きだったことが、建築を学び、そして今の仕事につながっているように思います。そういった感覚が歳を重ねてもどこか自分の感性の中に残っていて、作品の制作発想もそこから出てきているように思うのです。そういえば電車に乗っていてトンネルや鉄橋をくぐったりしたときに感じた興奮や、鍾乳洞、迷路などが好きだったことも空間を意識している私のコンセプトにつながっているような気がします。
 今のアトリエに移ってほぼ10年になりますが、このビルの4階にあるこの部屋が一番心休まるところであり、作品の発想もほとんどこの部屋でしか考えられません。単にモノを作り出す場所というのでなく、作家としての生活の貴重な場所です。