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ランドスケープデザインコース 寺村由佳

往古来今、住吉川にて

“Water is Driving Force of All Nature.” Leonardo da Vinch
水は万物の原動力である

 この言葉のとおり、四大文明は川の側で始まった。そして水辺では人々の生活が営まれ、歴史や文化、その地域特有の風土が培われてきた。
 神戸市東灘区を流れる住吉川も同様で、豊かな河畔林が海まで続き、江戸時代以降は六甲山からの急流を活かした水車で行われた精米を使い、下流では酒造りが盛んとなり、日本一の酒処「灘五郷」となった。人々の生活と川が密接に関わり、美しい風景を織りなしてきた歴史がある。
 しかし1938年の阪神大水害で甚大な被害が発生し、治水対策として堤防が築かれた。高度経済成長期には、上流の宅地開発で出た土砂を臨海部の埋立て地に運ぶために河川敷に「ダンプ道」が作られ、1974年まで河川敷は立入禁止となるなど、川と人との繋がりが断たれた。河川敷解放後は遊歩道が整備され、地域住民の憩いの場として親しまれているが、急な階段がメインアクセスとなり誰もが気軽に訪れることができる状況ではない。同時に地域社会においても、高齢化、緑地減少、気候変動に伴う水害の頻度増や甚大化が想定されるなど課題を抱えており、地域の持続可能性、レジリエンスが求められている。
 そこで、以前のように住吉川が身近な存在となりコミュニティの強靭化に繋がるよう、「住吉川から広がる繋がり」をデザインコンセプトとし、堤防道路に新たな緑地「住吉の杜」を創出することとした。
 なお、気候変動の要因である温室効果ガスの75%は都市から発生しており、都市における対策が喫緊の課題である。人(社会活動)・生態系・気候変動は相互に関連し合っており、デザインはNature-based Solutions (NbS, 自然に根差した解決策)を用いた。
 また、住吉の杜の二酸化炭素吸収量、樹木補償額等の算出、モニタリングの検討・提案、樹木の遷移と二酸化炭素吸収量および保水量の関係、そしてWell-Being含め住吉の杜が地域コミュニティ強靭化への貢献について考察を行った。

*往古来今:過去から未来まで、綿々として続く時間の流れ。また時間と空間の限りない広がり。(学研『四文字熟語辞典』)

寺村由佳

ランドスケープデザインコース

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