空間演出デザインコース 蔭山 夏美
まなびのかいたく
国語、算数、理科、社会、、、、「何」を学ぶかにプラスして「どのように学ぶ」のか「何ができるようになるのか。」ということの重要性が高まってきています。これまでの「まなび」の多くは「教えてもらう」ことが中心でした。これからは仲間と共に考え、実際に体感する「まなび」の場が求められています。しかしいきなり「さぁ、自ら学んでください」「子どもたちが自ら学べるように教えてください」と言われても難しい。畑で土づくりが大切なように、学びの土壌も丁寧に積み重ねながら整えていくことが必要ではないでしょうか。
身近な素材をつかって暮らしにつかうモノをつくる「てしごと」。心をこめて人の手でつくられたモノから「ぬくもり」をかんじます。こわれた時には手直しし、愛着が生まれていく。そうやって積みかさねていく暮らしのありかたから現代の社会に不足している温かさをかんじます。最近では大量生産されたモノがあふれモノへの愛着がうすれてきました。新しいモノから新しいモノへ、たくさんのモノが捨てられています。今あるわたしたちの「暮らし」はこれまでの世代が積みかさねてきた「暮らし」のありかたです。私たちの「暮らしかた」はこれからどのような「暮らし」を次の世代に残していくのでしょうか。自分の「手」を動かすことで身近な素材に興味をもち、暮らしを大切に積みかさねていく「てしごと」は未来の暮らしをつくる「まなびの宝庫」だと考えています。
このような想いから「こどもたちの手でつくるまなびのば」をテーマに「てしごと」の魅力がつまった土のおうち(アースバッグ工法)によるまなびの空間を提案します。
【まなびのかいたく】どこに、どんな材料で、どうやってつくる?机の下、階段の下、近所の雑木林、段ボールの大きな箱。子どもたちは自分たちの空間をつくることが大好きです。自分たちで考え自分たちの「手」で空間をつくる力があります。子どもたちにとって「まなびのば」をつくること自体が「まなび」になると考えました。自分たちの手で空間をつくりだすことで生まれる「やりたい!」「知りたい!」という気持ち。この気持ちこそが未来の暮らしをつくる「まなびの種」だと考えます。「つくる」過程を楽しむことで「やりたい!」「しりたい!」を増やしていく。空間を「たのしみ」「つどう」ことで新たなまなびの種がひろがっていく。そんなまなびの土壌となる空間をつくります。
【プラン】自然のなかで子どもたちがのびのびと遊びまなぶ学校「ゼロスクール」。ゼロスクールは自然豊かな熊本にあります。学校には竹でつくったアスレチックや畑、動物たちもいて、子どもたちの生き生きとした笑顔が印象的でした。動物たちの糞を堆肥化して畑に使用したり、畑で取れた食材を使ったりと現代社会に必要な温かさと暮らしのまなびが詰まっている学校です。今回は、新たに開校した菊池校の土地にアースバッグのまなびの基地とつどいのベンチを設計しました。
【アースバッグ工法】古代中東建築をヒントに考案された方法で土を詰めた袋を積みあげることで空間をつくる工法です。シンプルな工法のため子どもから大人まで参加でき、一人ひとりが役割を持ちながら一つのものを作り上げることでコミュニティーが生まれます。身近な素材である「土」を使って「てしごと」を重ねて空間をつくること、仲間と共につくる過程をたのしむ工法であること、 つくった空間を大切に手直しして使っていくことからアースバッグ工法を選択しました。
【まなびの基地】てしごとのぬくもりに包まれた温かい空間。 A.様々な人が訪れることができるように宿泊スペース、B.天窓から降り注ぐ光、C.こあがりでつどう少女。こあがりは小さな図書館になっている。 D.キッチンから外へとつながる窓。E.キッチンは流しに蓋をして机としても使用することができる。
【つどいのベンチ】景色の良い南側にもうけた心地よいつどいの空間。 A.花壇。森で見つけた種やお気に入りの植物を育てる。B.入口ドア。施工しやすい長方形のドアを装飾することで丸くみせる。C.幅を広くとったベンチ。舞台としても使用することができる。 D.ファイヤーピッドを囲うよう2つのベンチを配置。E.柔らかな曲線と中央の段差により、座り方のバリエーションが豊富なベンチ。
【つくる】は土壌づくり。皆で一緒に身体を動かしながら「つくる」ことで「まなび」を楽しむ土壌を育てます。土とは何か?どんな性質があるのか?アースバッグハウスをつくるためにはどんな役割が必要か?それぞれの特性に合わせて役割をきめ、みんなで力を合わせて土を積み上げていきます。土を混ぜるミックス、土を渡すパッサー、土を袋へ詰めていくバギング。カタチを確認するチェック、水平にカタチを整えるタンパー、形袋と袋を繋げるダボ石。だれが欠けても空間は完成しません。はじめはぎこちななくても続けていくことで徐々にみんなのリズムがあっていく心地よさ。各自が役割に慣れてきたところで持ち場をローテーションし、他の役割も体験します。一つの物事に対して様々な立場から関わってみる。どのようにしたらみんなが動きやすいか、相手の立場から人を思いやることをまなびます。シンプルな工程をみんなで力を合わせながら繰り返していくことで、一つ一つの作業からは想像もできなかった空間ができあがる経験は「もっとやりたい!」「もっと知りたい!」というまなびの種をひきだします。
【たのしむ】じぶんたちの「手」でつくりあげた空間で過ごす時間は格別。自分たちのつくりあげた空間で楽しい思い出をかさねていくことで、「もっとやりたい!」「もっと知りたい!」という「まなびの種」を育てて行きます。自分たちの手でつくりあげた唯一無二の空間。何もないところから積み上げてきた空間には愛着をかんじます。この空間のどの部分を自分がつくったのか、次はどんな空間をつくってみたいか、自分たちの手で、自分たちが過ごす空間をつくりあげたことは自信につながります。仲間と一緒に次につくってみたい空間やモノについて計画してみたり、「ものづくり」や「自然」に関する本を読んでみたり。新たな好奇心が「まなびの芽」となり、暮らしに必要なものは自分たちの手でつくるということを身近にしていきます。
【つどう】これまでの自分では想像できなかったまなびの視野をひろげ好奇心の芽を育てていきます。「つくり」「たのしむ」ことを通して、集まってきた地域の人や手伝いに来てくれた学生や地域の人。さまざまな人が持つとりどりな価値観やスキルに触れ、仲間と想いを共有することで、ひとりでは実現できなかったことを実現できることを体験します。同じ体験をとおして感じること、まなぶことは人それぞれ違います。一人ひとりの内面から湧き上がるさまざまな興味や好奇心はやがて「まなびの花」を咲かせます。「まなびの花」は「やりたい」「しりたい」という新たな学びの種を生み出していきます。
【ひろがる】みんなで一緒に空間を「つくる」ことから始まったまなびのば。「つくる」「たのしむ」「つどう」の循環を丁寧に重ねていくことで、まなびの種はひろがっていきます。今度はビニールハウスで野菜を育てたいな。みんなでつくった野菜を使って料理をつくってみよう。どうやったらもっと美味しい野菜ができるかな?動物たちの糞を堆肥にできるかな。きじ小屋をリノベーションして動物たちのおうちにしようかな。堆肥をつくるためにコンポストをつくってみよう。一人ひとりの好奇心から生まれたまなびの種を仲間と協力しあいながら実現していきます。「てしごと」を積みかさねにより暮らしに必要なものは自分たちの手でつくることができるという自信が生まれます。暮らしのなかで「てしごと」を「たのしむ」ことが未来の暮らしをつくっていきます。
蔭山 夏美
空間演出デザインコース
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