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愛犬と共にいつまでも

愛犬との一生を支える暮らしのデザイン

空間演出デザインコース 南 成吉

愛犬と共にいつまでも ― 愛犬との一生を支える暮らしのデザイン ―

犬を飼うことは、かわいい存在を共有することだけでなく、誕生から老い、そして最期までの一生に寄り添い続ける責任を引き受けることです。
しかし現実には、成長や老化による変化への理解不足や生活環境との不一致によって、飼育放棄につながってしまうケースも少なくありません。
また犬の長寿化に伴い、老犬介護や飼い主自身も高齢となる「老々介護」の問題も顕在化しています。
調査の一環として介護施設を訪問した際には、里親が見つかる数よりも多くの犬や猫が保護され続けている現状を目の当たりにしました。
こうした背景の中で、多くの飼い主が語るのは、
「最後まで面倒を見るという心構えはあったが、具体的な知識や備えが足りなかった」という声が多く、
老犬期になってから慌てて介護の準備を始めたり、
子犬期における社会化の重要性を後から知るなど、
必要な知識が必要な時期に届いていないという課題が存在しています。
本作品は、老犬介護を特別な出来事として捉えるのではなく、日常の暮らしの延長として受け止められる在り方を提案するものです。
犬の誕生期から成長期、成犬期、老犬期、そして最期までを一つの流れとして捉え、
飼い主が早い段階から犬の一生を想像できるよう、ライフステージごとに整理した豆知識ブックレットを制作しました。
日々の暮らしの中で気づきやすく、実践しやすい内容を、専門的になりすぎない言葉でまとめています。
さらに、知識だけでは行動に結びつきにくい点に着目し、暮らしの中で使われるグッズへと展開しました。
デニム素材のお散歩バッグや木製のフードスタンドなどは、犬と人の生活動線や、加齢による身体的変化を考慮して設計しています。
デニムや木といった素材は、使い込むことで劣化ではなく味わいとして変化し、長く寄り添う存在となります。
それは、犬と過ごす時間の積み重ねや、変化を受け入れながら共に生きる姿勢を象徴しています。
 
本作品は、「最後まで面倒を見る」という意志を否定するものではありません。
それを現実の暮らしの中で支えるための、知識・環境・道具を可視化する試みです。
愛犬と共に過ごす時間が、誕生から最期まで、穏やかで肯定的なものとなるように、「愛犬との一生を支える暮らしのデザイン」を提案します。

愛犬との暮らしを「かわいい」だけで終わらせず、一生を見通すための最初の一冊。 成長や老い、介護までを重くしすぎず、暮らしのそばで手に取れる知識としてまとめた冊子です。

愛犬との日常で最も時間を共にする「散歩」を支えるデニムバッグ。 使い込むほどに風合いが増し、汚れや使用感さえも愛犬と過ごした時間の証として残る、 暮らしに寄り添うプロダクトです。

生活感が出やすいおしっこシートを、隠すのではなく暮らしに溶け込ませるデニム製ケース。 日々の世話の積み重ねが素材に刻まれ、愛犬との日常を静かに記憶していきます。

老犬の食事姿勢を支えながら、介護用品として主張しすぎない木製フードスタンド。 家具のような佇まいで生活空間に馴染み、食べる時間を最後まで「当たり前の日常」として守ります。

歩行が困難になっても、共に外の空気を感じる時間を諦めないための木製介護カー。 移動手段ではなく、愛犬と過ごす時間をつなぎ直す存在として、暮らしの延長に設計しました。

愛犬が安心して休める居場所として設計した、組み立て式の木製室内犬小屋。 日常では家具のように暮らしに馴染み、災害時や緊急避難時には素早く組み立てて使える、 生活と非常時をつなぐ設計としました。

排泄行為を特別な管理ではなく、日常の一部として受け止めるための木製トイレ。 生活空間から浮かない素材と形状により、成長期から老犬期まで自然に使い続けられる設計としました。

愛犬との一生を物として残すためのメモリアルボックス。 写真や首輪、思い出の品を収めることで、別れの後も暮らしの中で静かに記憶と向き合える存在を目指しました。

これらの作品は、愛犬の誕生から想い出になるまでの連なりとして構成されています。 一連のプロダクトで可視化することで、「愛犬と共にいつまでも」というテーマを 生活の中で実感できる形に落とし込みました。

南 成吉

空間演出デザインコース

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