空間演出デザインコース 横江 喜美子
寒天イロハ
寒天は素材そのものにモノをつなぐという特性がありますが、私たちの暮らしのさまざまな営みにもつなげてくれています。寒天は海洋に育つテングサからできています。自然のものを使うことは最終的に自然に還り美し地球環境へとつながり、その寒天を使うことは人々の安心、健康につながります。地域食材を活かした寒天の食べ方やレシピアイデアをきっかけに会話が弾み、さまざまな場でのコミュニケーションが生まれ、家族、地域との交流の場へとつなぎます。寒天の自然循環の学びから、寒天発祥の地、伏見が持続可能なまちづくりの活性化のモデルとなる提案を1冊の本にまとめました。本書をきっかけに、今、社会問題となっている環境問題に対する気持ちが行動となって良い方向へと向かい、地球環境をより大切にしたいという価値観へつながることを願っています。
霧ヶ峰の裾野に広がる雪景色。 寒天干し場が一面真っ白に変わる。 冬場の氷点下になる厳しい冷え込みと晴天との寒暖差で、凍結と乾燥を繰り返し寒天はできあがる。 また一軒、自然の寒天づくりの生産者がその幕を閉じました。 今、地球温暖化や工業寒天の台頭で昔ながらの自然の寒天づくりが減少し絶滅するとも言われています。 この自然の寒天づくりを後世につなぎたい。 そんな思いで寒天をデザインでつなげます。
「イ・ロ・ハ」とはイロハ順のはじめの言葉となることから物事の初歩や基本を意味しています。寒天の自然循環のしくみを知って、地球にやさしい暮らしにつながるよう、「イ・ロ」のリサーチから「ハ」の提案へと順を追って進められるれように制作いたしました。 目次 イ_寒天について学ぶ ・寒天のカタチいろいろ ・寒天は何からできているの? ・テングサ採り ・自然環境でつくる寒天の生産地 ・寒天とトコロテンの違い ・寒天の多様な特性 ・こんなところにも寒天が ・寒天と近代医学 ・寒天とSDG's ロ_伏見と寒天 ・寒天発祥の地、伏見 ・寒天と命名される ・寒天広まる ・伏見寒天プロジェクト ・寒天と小説 ・伏見のまちの魅力 ・伏見とSDG's ・サスティナブルな伏見の今 ハ_寒天と伏見でつなぐやさしい暮らし ・京都の食材でつなぐ寒天のおもてなし ・寒天と伏見でつなぐコト・空間のデザイン
イ・・・寒天について学ぶ 寒天はテングサなどの海藻からできています。 テングサは海中の岩礁近くに生育しています。自然に生息しているテングサを直接採取するほうが上質なため、今でも素潜りなどの原始的な方法で採取されています。 酸素ボンベを背負い潜水したり、海女さんたちのように人の手で採られています。
イ・・・寒天について学ぶ テングサを煮熟した絞り汁が固まるとトコロテンのようになる。 天突きでついて葦簀の上に干す。 夜間の冷え込みと日中の晴天を繰り返し、寒天の水分は抜けていく。 やがて乾物となって出来上がる。 太陽の日射しを浴び栄養分も高まる。 雨の日には取り入れ、晴れたらまた干す。 今日も自然と相談しながら寒天をつくる。 これが、昔から受け継がれた寒天づくり。
イ・・・寒天について学ぶ 寒天づくりは自然のサイクルでつながっている。 海洋に生育するテングサを採取して自然環境下での寒天づくり。 テングサを搾った粕は、家畜の飼料や野菜の肥料へと生まれ変わる。 出来上がった寒天は私たちの食卓や医学のために。 そして自然に還る。 自然に生まれ自然に還る、寒天づくりは環境にやさしい。
ロ・・・伏見と寒天 伏見城の外濠であった豪川。豊臣秀吉の伏見城築城にともなう河川整備によって水上交通が注目され、伏見港を中心に水路と陸路の中継拠点として栄えてきました。海で採れたテングサも船運で伏見に届き、ここを拠点に各地へ運ばれたと言われています。今も残る豪川に続く宇治川派流に往時を偲ぶように十石船が浮かんでいます。 寒天の製法は江戸時代、京都の伏見で生まれました。 伏見は、むかしから「伏水」とも謳われるほど地下水の美味しい水の地、寒天は海洋で育つテングサと、どちらも水は大切な存在です。いつまでもその水を愛する気持ちが行動となって、寒天発祥の地、伏見から美しい地球環境へとつながる発信をします。
ハ・・・寒天と伏見でつなぐやさしい暮らし 2021年3月、「みなとオアシス」への登録を機会に、「川のみなとオアシス水のまち京都・伏見」として発進をはじめた伏見の地に、寒天で賑わうサスティナブルな伏見のまちの未来を思い描いてみました。人と人、人と地域をつなげる寒天のモノ・コト・空間(場)のデザインを提案いたします。
ハ・・・寒天と伏見でつなぐやさしい暮らし モノのデザイン 京都の食材で地域や暮らしの中で楽しめる寒天のおもてなしのレシピを考えてみました。四季折々の食材を使った寒天レシピや歳時を寒天でお祝いしたり、寒天ライフをきっかけに会話が弾み、地球にも身体にもやさしい暮らしへとつなぎます。
ハ・・・寒天と伏見でつなぐやさしい暮らし コトのデザイン 「伏見みなとどこ(床)〜寒天まつり」 鴨川は「ゆか」、貴船は「かわどこ」、それなら伏見は「みなとどこ」 初夏の穏やかな季節に、川沿いの遊歩道につくられたで「みなとどこ」。地域のお店自慢の寒天レシピが並ぶ「寒天まつり」で賑わいます。 「FUSHIMI酒蔵DINING」 お酒を楽しむ場に欠かせないのが「酒のあて」。蔵元おすすめのお酒に合う「寒天を使った酒のあて」で、お酒の場のシーンを演出する酒蔵体験を企画しました。 空間のデザイン 「伏見の寒天レストラン〜石花菜(せっかさい)」 寒天発祥の地、伏見に寒天レストランを考えてみました。海藻からできた寒天が人にとって安心な自然素材であることを知ると、健康のこと、地球環境のこととナチュラルな暮らしへと気持ちが向かっていったのではないでしょうか。誰人ひとりとして取り残さない「SDG’s」という持続可能な暮らしかた、この地球上のすべての生命のためにやさしい暮らしへとつなぐ発信の場として企画しました。
制作物 : 本 「寒天イロハ」 A5版 106頁 取材にご協力いただいた方 西田 篤廣様(元株式会社西田彰吾商店代表) 株式会社福井商店 福井 俊行様 有限会社丸文寒天産業 樋田 恭一様 伏見寒天プロジェクト 植野 彰様 千葉大学海洋バイオシステム研究センター銚子実験場 羽賀 秀樹様 有限会社イリセン 茅野 文法様 画像元 <海女の潜水>山岡駅かんてんかん様にて撮影 <寒天場撮影>有限会社丸文寒天産業様にて撮影 <冬の寒天場>有限会社イリセン様提供 参考文献・資料 松橋 鐡二郎著「寒天・トコロテンの科学 その奇妙な性質と効用」株式会社光琳、2012年10月30日 鎌田 實 著「「寒天パワーを使いきる!健康便利帳」株式会社 青春出版社、2005年7月5日 松橋 鐡二郎著「寒天・ところてん読本」社団法人農村漁村文化協会、2008年 横浜市立大学医学部健康社会医学ユニット 名誉教授・特任教授 栃窪 修 著「京都伏見発祥の寒天ーその歴史と功績ー」2018年2月10日、伏見寒天プロジェクト講演会資料 京都市伏見区役所、京都府港湾局広報資料、令和3年4月2日発行「川のみなと・伏見港が「みなとオアシスに登録」 「第十二回企画展示図録 職人の民族誌ー寒天づくり篇ー」亀岡文化資料館、平成4年2月8日 「海藻海草標本図鑑」http://chibadai.flier.jp/algae/algae/ 学校法人大阪医科薬科大学 館長ブログ記事「高槻 寒天雑話」https://www.omp.ac.jp/tradblogvqh17r000000evwo.html NPO法人 伏見観光協会HP https://kyoto-fushimi.or.jp 他
横江 喜美子
空間演出デザインコース
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