「2025年」
洋画コース 加藤 敦史
162 × 130.3cm
キャンバス/油彩、アクリル
「2025年」を描く意義
芸術、アートの社会問題解決への関与を積極的に発言する芸術家は多い。日比野克彦は「アートは社会的な課題解決の役割も担う」と提唱し、また政治学者の御厨 貴は「2025年は歴史の流れが大きく変わる節目の年で、歴史書にはこの年が記録されるだろう」と言及した。
我々はこの年に生き、この変化を目の当たりにしている。今まで積み上げてきた秩序や民主主義が崩れ、衆愚政治がはびこり、僭主政治が生まれている。弱肉強食の力の支配が世界を覆う時代となった。また、格差・分断(ジェンダー、貧富、人権、一極集中・・)、フェイクニュース、SNSによる誹謗中傷が蔓延し、さらには気候変動をはじめとする環境悪化が深刻化している。我々はこれからどこに向かうのか。これが「2025年」を描く理由である。
・制作に関して
色彩は日本の伝統色にこだわり、まず赤色の使用を考えた。赤は日本では邪気を払、魔除けの色とされている。あずき、赤飯、Japan Redと言わるベンガラ、漆器や鳥居で頻繁に使用する朱色、黒を少量入れた赤のジェッソを地塗りとした。背景は宗達の屏風絵を参考にした方眼を描いた。その上に油彩で世界地図(オーサーグラフ)を投影した。ただオーサーグラフとF100号キャンバスは縦横比が異なり、さらに拡大されているので、世界地図は歪み、不思議な形態となった。
また、魔物が地球を勢いよく這い回る表現をするために、白髪一雄を参考にした。
黄金色の曲線は、鉄のカーテン、ベルリンの壁、パレスチナとイスラエル、ウクライナとロシア、南北朝鮮、南北キプロスや国境の空間的形態を表す。我々は分離壁を想像するときは垂直にあるコンクリートの姿を想像する。しかし、その壁が地表空間でどのような形態で存在しているかは知らない。かつてのベルリンの壁は東京23区に匹敵する西ベルリンを取り囲んでいた。ここではいくつかの壁を取り上げ、さらに黒の断裂を地球上に表した。そして2025年この世界を覆うのは絶望、不安、叫び、不条理などが地球を大蛇のように締め付ける。
162 × 130.3cm
キャンバス/油彩、アクリル
加藤 敦史
洋画コース
日本の各地に居住し、1900年代に英国へ一家転住。長く家族とともに暮らし、在外邦人の経験を有す。「鉄のカーテン」、「ベルリンの壁崩壊」、移民流入などを目の当たりにする。
2026年1月には3人(98歳、84歳、72歳)「254歳の美術展」を開く。
現在は社会的テーマをもとに抽象画を描く。
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