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共生 森へ

日本画コース 稲森 京子

112.0 × 162.0 cm
紙本 / 岩絵具、水干絵具、墨、膠

 子どものころ、家の裏山でよく遊んだが、その山は二十数年前に都市開発で丸ごと無くなってしまった。今回の卒業制作では、楽しかった山の想い出とともに、切り倒されてしまった無数に近い木々を悼む気持ちや、人と自然が共生し、循環する姿を描きたいと考えた。絵の真ん中の木を黄色く目立つように描いたのは、大好きだった森の奥へといざなう意味合いを持たせたかったからである。画面には2人の人型があり、これは木の精だが陰と陽、理性と感情などを表している。
 絵の柱となるのは、中心へといざなう感じや、森全体が循環している様子、加えて神秘性や幻想的な雰囲気の表現である。これを表すヒントとなったのが、今はなくなってしまった山の跡地の片隅にひっそりと残る龍王社という社である。この社からイメージを得て、龍が山の木々を揺らして、絵の真ん中へザーッと駆け抜けていく雰囲気で描こうと考えた。具体的には絵の中心に向かって、様々な方向から刷毛で何度も数種類の薄い色をかけていった。また風にヒラヒラする葉や音を立てて舞う葉を意識して描くことで、風を感じさせたいと考えた。人型が木から浮かび上がるように見せるため、木と人型の境界をできるだけ曖昧にし、人型に木の色を足していった。岩絵具のみを使って描いたことで、より神秘的な感じを引き出すことができた。 
 この絵を描いていく過程で、故郷の山と自然を失って整理がついていなかった思いを、徐々に昇華していけたと感じた。絵の持つ力の大きさについて改めて学ぶことができた。

稲森 京子

日本画コース

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