距離を通してうつ病を見る
グラフィックデザインコース 村山 庸一
コース奨励賞
A2 写真 28点
iPhoneアプリ 1点
A6 小説 1点
ミクストメディア 1点
アパレル 6点
(掲載外:A4 写真集 1点、A4 写真展レポート 1点)
うつ病は、理解することが難しい病気です。
一つの説明や視点で捉えようとすると、かえって本質から遠ざかってしまうような、掴みどころのない存在でもあります。
制作を通して改めて向き合う中で、うつ病は「よくわからない病気である」という感覚が、よりはっきりとしました。
同時に、うつ病には社会との関係、自分自身との関係、そして他者との関係など、複数の側面が重なり合って存在していることに気づきました。
本卒業制作では、うつ病を一つの答えに収束させるのではなく、距離を変えて見てみることによって、その在り方を考えることを試みています。
具体的には、
うつ病と社会との距離、
うつ病と自分自身との距離、
うつ病である自分と他者との距離、
この三つのレイヤーを、それぞれ写真・小説・デバイスという異なる表現手法で扱っています。
制作の結果として導かれた結論は、やはりうつ病は「よくわからないものだ」ということでした。
しかし同時に、その「よくわからなさ」を無理に解消しようとせず、分かったふりをしないまま向き合える距離があるのではないかと感じるようになりました。
本作品群に触れることで、鑑賞者それぞれが、うつ病に対して近づきすぎることも、遠ざけすぎることもなく、自分なりの適切な距離を見出すきっかけになればと考えています。
【写真展:社会との距離】
2024年12月6日・7日に千葉県で「うつ病をもっと身近に」というタイトルの写真展を開催しました。
被写体をあえてぼかすことで、うつ病が社会の中で見えにくく、誤解されやすい現状を表現しています。「うつっぽい」シールを貼ることで、うつの見えにくさを体験できる展示としました。
本展示は、社会とうつ病のあいだに存在する見えない距離を可視化する試みです。
【小説:個人との距離】
うつ病を抱えた個人の内的な体験や思考の揺らぎを描くために「名前のない休職届」という小説を制作しました。
症状によって変化する認知や感覚、言葉にしづらい重さや違和感を、文章とグラフィック表現を重ねることで表現しています。読者が主人公の視点を通してその内面に触れることで、うつ病を「外から理解する」のではなく、「内側から感じる」体験を目指しました。
本作は、うつ病と個人との距離を可視化する試みです。
【デバイス:他人との距離】
うつ病の人と他者とのあいだに生じる「伝わらなさ」や距離感を提示するために、体験型のデバイスを制作しました。
音声を入力すると文字が印字されますが、距離が離れていると文字はぼやけ、手で触れ温めることで徐々にはっきりと表示されます。これは、コミュニケーションには、寄り添う姿勢や関係性が大きく影響することを示しています。
本デバイスは、うつ病と他者との距離を身体的な感覚を通して可視化する試みです。
社会との距離 →「うつ病は、社会では見えにくい」
個人との距離 →「うつ病は、自分でもよくわからない」
他人との距離 →「うつ病は、寄り添っても完全には伝わらない」
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