細井広沢「楽志論」の書風に学ぶ
細井広沢から文徴明、趙孟譜、そして智永へ
書画コース 大田直子
半切 掛軸 後漢書「仲長統伝」にある、「楽志論」をあらわした仲長統の言葉。
「人生滅し易し。優游偃仰、以て自ら娯しむ可し。居を清曠に卜し、以て其の志を楽しましめんと欲す。」
江戸時代の書家、細井広沢の「楽志論」の書風に憧れて、「楽志論」を節臨することから始まった卒業制作。自分の好きな言葉を好きな書風で書いてみたいという大きな目標に向かっての学びであった。
まず、広沢の書の特徴である、美しい字形と切れ味鋭く伸びやかな筆遣いを学びたいと思った。広沢の「楽志論」の一部を節臨したが、それ以外の広沢の作品が手に入らなかったので、広沢が範としたという趙孟頫や文徴明の作品を調べるうちに趙孟頫の「赤壁賦」と文徴明の「九日雨中虎丘悟石軒燕集」にたどりついた。特に文徴明のこの作品は、字形の美しさと引き締まった中にも伸びやかさと軽やかさを兼ね備えた筆遣いが広沢に通じると思った。全臨してみると、作品全体の中での変化やリズムのようなものも感じることができた。
その上で、「楽志論」を著した漢の文人、仲長統の言葉を書くことにした。「楽志論」は広沢だけではなく、中国では趙孟頫や文徴明、日本でも市河米庵が書にしており、池大雅は画に表している。帰田幽居のこの思想は、昔も今もこれからも、自然の中で悠々と生きていきたいと願う人たちの中に受け継がれていくと思うし、私の共感するところでもある。
初めての創作だったので、字形から配置、線の抑揚や全体のリズムなど迷うことばかりであったが、広沢風の書きぶりと、悠々とした清々しさを表現するようにつとめた。
この作品は、広沢の「楽志論」、文徴明の「千字文」、智永の「千字文」から集字したが、広沢の書風を学ぶ中で文徴明や趙孟頫、さらには智永の書にも触れることができ、大きな収穫となった。
大田直子
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