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愛に包まれて

(大学院)洋画分野 河田 みほ子

78x109.1cm
水彩、紙

自然や日常の中に感じる温かさや愛情を主題に、水彩ならではの表現を探求しながら制作しています。透明水彩特有の瑞々しさや透明感を生かし、やわらかな空気感と静かな情感が画面に広がることを大切にしています。

本作品では、子供たちと過ごした時間や関係性の中で生まれた慈しみの気持ちを表現したいと考え、歩き始めた孫の姿をモチーフに選びました。小さな命の存在がもたらす喜びや愛おしさ、守りたいと願う思いを、やさしい色彩と光の中に込めています。

また、技術的、精神的に影響を受けた画家の作品を研究し、人間の優しさや温もりを描くことを試みました。特に母性を主題とするいわさきちひろの模写から得た知見をもとに、子供のやわらかな肌やふっくらとした頬を表現するように心がけました。さらに、「守られている」「包まれている」という感情が鑑賞者から引き出されるように構図や明暗の関係を重視して制作しました。樹木にはグラニュレーションを用い、木肌の複雑な色の変化と質感を表現しました。また、子供の手を樹の前面に配置することで、視線が手前から奥へと自然に導かれる構成としています。

制作を通して、慈愛の表現は、目や表情といった一部分の描写によって生まれるのではなく、構図や色彩、明暗など画面全体のつながりの中で自然に表れるものであることを学びました。慈愛の気配そのものを描くことを目指し、自然の中に包まれるような空気感と時間の流れを表現しました。

愛に包まれて(部分)
愛に包まれて(部分)

河田 みほ子

(大学院)洋画分野

花や植物を身近に感じて暮らす私にとって、自然は生命の躍動やエネルギーを実感させてくれる対象です。そのため、これまで技法を学び、花や風景から得たインスピレーションをもとに自然描写を主題とした制作に取り組んできました。

しかし、大学院で学びを深めていく過程において、自然描写を主題とする制作から一歩前進し、自身の内面にある思いや感情を表現したいと考えるようになりました。地域の美術展で孫を描いた作品が奨励賞を受賞したことがきっかけとなり、作品制作の焦点は、技術的な習熟よりも「心で見える風景」へと移行し、その中で「慈愛の表現」を追求することが研究のテーマとなりました。

自然の中に身を置いて制作に向き合うことで、触感や温もり、愛情といった目に見えない感覚が、絵画の中に「生命の記憶」として刻まれていくことを実感する日々です。

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