生死を包む風景
ランドスケープデザインコース 西脇 唯真
コース奨励賞
【関心のきっかけ】
寺院に生まれ育った私にとって、「現代の寺院が担うべき役割とは何か」という問いは、個人的関心であると同時に公共的な課題でもある。本計画はその答えを、寺院の境内空間から捉え直す試みである。
【寺院と庭園の役割】
寺院は本来、社会的な価値判断から離れて命そのものに目を向ける場である。花が咲いているだけで人を感動させるように、私たちが生きて死んでいくことは、それだけで尊い。お寺は、そんな当たり前だけれど大切なことをふと思い出させてくれる場所であってほしい。
歴史的に、寺院には庭園がつくられてきた。たとえば浄土庭園は、はるかなる彼岸(浄土)の情景を此岸(現世)に描き出し、やがて命が帰るべき安らかな世界を可視化した装置であり、禅の庭園(枯山水)は、石と白砂の象徴化と大胆な余白により、有限な方丈前庭に無限の世界を開く空間であるといえる。したがって、いずれも私の生死を超える大きなものを体験へ媒介してきたといえる。
それは、自然への敬意と仏教の信仰が折り重なってきた日本の宗教観の発露であり、寺院とランドスケープデザイン(庭園や風景、自然)が私たちに伝えるものの接点でもある。
【死が日常から切り離される現代】
今回対象とするのは、地域の日常に溶け込むごくありふれた浄土真宗の寺院である。浄土真宗は、浄土庭園を生み出した浄土教の流れを汲む日本最大級の仏教宗派である。
死が日常から切り離され「空白」となった現代にこそ、浄土の教えと寺院という空間が、再び人々の生死をやさしく包み込み、生きる力を育む拠りどころとして大きな役割を持つはずだ。
しかし、単に伝統的な様式としての浄土庭園を再現するだけでは、その感覚を真に取り戻すことは難しい。いま求められているのは、現代の日常生活の延長線上で、人智を越えたものを感じられる場である。
【提案:普元寺で結び直す】
本計画では、海と大地の記憶が重なる自坊・普元寺をモデルケースに、分断された生と死を、現代の日常のなかで結び直す。
遊びや憩いの場と、墓地の場をゆるやかにつなぐことで、幼い頃から当たり前のように美しい夕陽の風景に触れ、その向こう側にやがて命が帰っていくことを肌で知っていく。
訪れる人が、西へ沈む光の中に死者や土地の記憶を重ね、亡き人(仏)と共にあることを感じられる、死生観を育む風景を描き出す。
卒業制作「生死を包む風景」プレゼンテーション動画
普元寺紹介動画
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