織部あそび
ふれる伝統、あそぶ美楽
空間演出デザインコース 松田 智代
コース奨励賞
私たちの暮らしの中には、毎日を少し楽しくしてくれる“ 小さなあそび” がたくさんあります。それは特別なものではなく、ふと目に入る色や形、思わず触れたくなる素材の温度感など 、ほんの小さな心の動きです。
本卒業制作では、岐阜県東濃地方に受け継がれてきた伝統工芸「織部」を、そんな暮らしの「あそび」と結びつけることをテーマにしました。織部焼に見られる独特のゆがみや深い緑の釉薬は、完璧さよりも“ 面白さ” や“ 自由なこころ” を大切にしてきた伝統です。
その背景には、戦国時代の武人であり茶人である古田織部の美意識、いわゆる「オリベイズム」があります。「決まりきった形よりも、自分が面白いと思えるものを大切にしよう」そんな精神が今も織部の表情に息づいています。
「ORIBE ASOBI」シリーズは、こうした織部の自由でのびやかな精神性( オリベイズム) をプロダクトに広げ、“ 眺めるだけの工芸品”ではなく、手で触れたり、遊んだりしながら“ 使うたびに楽しい” という体験として届けることを目指しています。
形にはゆらぎがあり、並べたり組み合わせると新しい美( 景色) が生まれる。使う人それぞれが自由に楽しみ方を見つけられるもの。そんな風に、織部がもつ“ あそび心” が、暮らしの中にそっと入り込み、毎日をやさしく彩る存在になれたら・・・。
この作品を通して、織部の精神が暮らしの中に自然と息づいていきます。そのことで、「完璧な正解」を求められがちな現代社会との間には、「あそび」という程よい距離感が生まれるはずです。現代人が忘れかけていた「心の自由」を呼び起こす、その小さな鍵になればと考え、本作品を提案します。
日本酒を「感じて楽しむもの」として捉え直したプロダクト。少し広い口、わずかな傾き、手に伝わる重さ。 その違いが、香りや口当たり、余韻の印象を静かに変えていきます。
遊びながら、見ること、感じることを共有する。 それもまた、ORIBE ASOBIが考える「あそび」です。 不揃いの石を置く感触、返る音、 変化していく盤の景色に目を向けてほしい。
穴の位置や大きさ、釉薬の表情によって、 光はにじみ、揺らぎます。その不揃いな光が、 空間に静かな変化をもたらします。 揺れる光、影のかたち、時間の流れを感じて。
松田 智代
空間演出デザインコース
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