- 2015年8月21日
- 日常風景
取材先その① 『瓢亭』
取材先は、南禅寺の近くにある懐石料理の老舗「瓢亭(ひょうてい)」さんです。 京都を代表する料亭にお邪魔して、学生たちがそれぞれアートエッセイを書いたので 一部ご紹介します。 6日間の講義で、取材記事とアートエッセイを織り交ぜながら1冊の本にします。 今から楽しみです!
================== 「視界を彩る京料理」 吉積 愛 一歩足を踏み入れると、現実から切り離された空間がそこにあった。 今回伺ったのは、京都・南禅寺畔にある老舗「瓢亭」だ。 緑の木々に囲まれ、辺り一帯に苔が生え、わびさびを感じさせるには十分な雰囲気を 醸し出している。とても立派な坪庭だ。敷地内の川を泳ぐ鯉が、ジメジメとした京都の 夏に涼しさを投じていた。 通されたお座敷は14畳程の広さがあった。ふすまの引手には、瓢亭の象徴である瓢 箪があしらわれていて、なかなか粋な工夫である。 掛け軸の中で舞うように泳ぐ魚たちが、しんとしたこの部屋に音を奏でていた。部屋 の後方に立てられている屏風に描かれた京野菜も賑わいを見せている。 柔らかな照明の中で、この店の14代目・高橋英一氏はこう語る。 「料理はまず、目から楽しませるんです。」 食器のすべてが同じ柄ではなく、一つ一つの器に季節感を出すのが、日本の食文化の 特徴なのだという。 料理は味だけではない。玄関やお座敷、食器の細部までこだわりを光らせ、目から客 をおもてなしする。それが、瓢亭の「京料理」なのである。