マンガ学科

取材先その② 『冨田屋』

 

アートエッセイ 「神様と暮らす」

 

近藤 望美

 

京都ならではの細い入口の格子戸を開け中に踏み入ると、大戸と石畳が姿を見せる。昔から代々受け継がれてきた歴史ある京町家がそこにはあった。

ここは国の登録有形文化財でもある老舗呉服屋「冨田屋」。

今回13代目当主である田中峰子さんのお話を伺った。

田中さんは古来より受け継がれてきた、しきたり行事も含め、伝統が息づく町家として守り続けている。

「でもこんな面倒なことなんでわざわざやらなくちゃいけないのか不思議でしょう?」

伝統を守り続けている田中さんの口から出たことはとても驚いた。お母様には、しきたり行事をやるのが当たり前の生活であった。現代に近づくにつれ、当たり前ではなくなった。

幼いころから町家で暮らしてきた田中さん自身そう疑問に思ったこともあったそうだ。

日本には八百万の神様が存在し、行事しつらえは神様のためのものである。無病息災家内安全を神に「祈り、願い、感謝」を込めた。それが今の文化の由来である。

文化が受け継がれていく背景には、その行事が楽しかったからだと。

私の家では特に神様を信仰しているわけではない。全ての伝統行事をやるわけでもない。しかし、毎年お正月や節分など今でも一般的に続けられている行事、例えばおせち料理や豆を歳の数だけ食べるなど形だけだが、少し特別な気分を味わったものだ。母も大変だとか面倒くさいなどとぼやきながら、年に一度の特別な日が楽しいのだろう。

冨田屋さんにはたくさんの神棚がある。家に宿る八百万の神様のためのものだ。毎朝お祈りをささげ、しきたり行事のある日は全て意味を考え、神様に「祈り、願い、感謝」しつつ、何より楽しみながら伝統を継続している。

まさしく神様との暮らしだ。

 

冨田3

冨田2

冨田1

 

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