キャラクターデザイン学科

インタビュー

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2019年9月12日  インタビュー

ゼミ通ヒーローズ Vol.10_ 2

 

ゼミ通ロゴ

 

ゼミ通ヒーローズ Vol.10

ゲームジャム座談会の巻 Part2

 

 

 

 ゼミ通10_1

村上

さてさて現場の話に戻そう。

実際にゲームを開発したスタッフの構成とかワークフローの話をしたいんだ。

 

石倉

ゲームジャム当日は、専門学校のナオヤさんを含めプログラマーが2人。

プランナーが3人、あとは全員デザイナーで、デザイナーの内訳としては、

キャラクターデザインが3人、UIデザインが2人、アニメーションが1人、背景画が1人。

あとは現場には来てなかったですけど前日にタイトルロゴを作ってくれた人が1人。

 

村上

来年やるときにはプログラマーを45人連れて行かなきゃキツいね。

デザイナーが多かった点では人海戦術で効率良く作業は進んだけど。

 

石倉

でもそのお陰で仕事を依頼したら物凄いスピードで絵がどんどん仕上がってくるんですよね。

お願いしたら何でも返ってくるっていう安心感は大きかったです。

 

村上

現場での情報共有の仕方は?

 

仕様書を作る時間はなかったので、口頭指示か、ホワイトボードを使ってやってましたね。

 

石倉

上がってきた絵を僕がチェックして、OKであればプログラマーにデータを渡して実装していただくという流れでした。

 

村上

崎と熊澤は?

 

ゲームジャムが始まる前から、正直「音」関係の作業をする人って多分いないんやろうなぁって思ってたし、

編集ツールのPremiereを扱えるのも僕しかいないと思ってたから、

何となく必然的に僕がやる事になるやろなと思ってましたね。

 

村上

開発の終盤になって、「そういや音ってどうする?」

みたいな話になって現場がパニクるのが容易に予想できたから最初に名乗り上げたと。

 

そうです。

 

熊澤

私は、音楽と効果音のフリー素材をネットで拾ってきて、それを崎先輩に確認していただいて、という感じでひたすら素材探しをしてましたね。

 

村上

デザイナーのワークフローはどんな感じだった?

 

奥田

最初に作るべき素材は全部決まってたし、皆それを理解してるところからのスタートだったので、動ける人はどんどん動いてましたね。

私はUI周りを総合的に見てたんですけど、手の空いた人がいたら仕事を振って、

石倉先輩にチェックしていただいてプログラマーさんにデータを渡すという流れでした。

 

村上

ウチの場合、デザイナーといえども1年生の時からみんなゲームプランナーとしての勉強をするから、

2年生にもなると「絵が描けるプランナー」「プランニングができるデザイナー」みたいな感じでゲームデザインを理解してるもんね。

両方分かってるからこそ企画意図を説明するだけでそこから最終イメージまで膨らませて作業をしてくれるから話が速いよね。

 

石倉

企画の時に絵も一緒に考えて、まず最初に画面のレイアウトとUIを整理して必要な素材の工数を出したり。

 

ニュアンスの全体像が見えてたからスタートダッシュは良かったよな。

 

奥田

ちょむ(吉田未来/当日参加していたデザイナー)にゲーム全体のメインカラーを決めてもらったんですよ。

使う色を最初に全部決めてカラーパレットを用意してもらって。

ポップなホラー要素がちょむの作風に合ってるなと思ったので、コンセプトに合わせてゾンビっぽい色とか世界観を決めていってもらいました。

 

菊竹

基本的にこのパレットだけで構成されてたので、あまり悩まないでどんどんデザイン素材を作っていく事ができましたね。

 

村上

こちらからは何も指示を出してないのに、すごい組織力だ(笑)

それぞれの作業の中で苦労したポイントは何かある?

 

石倉

苦労というか、宿泊のときの崎のいびきがうるさかったことくらいですかね。

制作については、チームとしてのまとまりも良かったし、プログラマーのナオヤさんにイメージを伝えた時も、

できる事とできない事をちゃんとメリハリをつけて説明してくれるので意思疎通もスムーズでと、ても居心地の良い環境でディレクターをやらせていただけたなぁという感想です。

 

菊竹

キャラクターを作ること自体はすぐに出来てちゃんと完成したんですけど、点数別に3人のキャラクターを並べたときに、

どれが一番点数の高いキャラクターなのかが一目で分からないっていうところが悩みでしたね。

 

村上

そこだけ各スタッフによって想い描いてたビジョンがバラついてた印象があったね。

髪の毛の色が明るい人は点数が高いっていう設定だったけど、そもそも「明るいって何?」という時点でイメージがズレてたね。

ゲーム画面で見ると、背景色が紫だったから黄色い髪の毛のキャラの方が目立ってて点数が高く見えるし、

でも実際には赤い髪のキャラが一番高かったんだけど、背景色が紫だったから、紫の上に赤を置いてもあまり目立たないという誤算があったね。

 

菊竹

実際にビットサミットの会場でお客さんにプレイしてもらったときに「どれが一番高いの?」て聞かれて…そこは反省点ですね。

作る前に背景も含めてもっとすり合わせをしておけば良かったなって思いました。

 

村上

コンセプトは「採用したくなる就活生」が点が高いという設定だったから、見た目が真面目そうな人ほど点が高くて、ヤンキーっぽいやつが点が低い設定にしてたよね。

 

結局ファンキーなやつほど点が高いっていう設定に変わってしまってましたね…。

 

石倉

デザイン面では、ゾンビとしてどんどん体が崩れていく方ができの悪い人で、欠損の少ない人ほど優秀っていう話もあったんですけど、

表示されるキャラクターのサイズが小さくて、プレイヤーとしてはゲームの展開上そんな細部まで見てる余裕もないので結局視認性優先で色を明るくしましたね。

 

奥田

UIはまだ勉強をしていない領域だったので正直どうしようって思いました。

でもゲーム全体をパソコンのデスクトップ上の世界としてまとめようって話になって、社長キャラがスカイプで出てきたりとか、

別のウィンドウ上で社員を管理してるような構想が出てきて徐々に見せるべきものが明確になってきましたね。

 

村上

あれだけ大勢のスタッフがいて皆がバラバラでデータを持ってくるから、予めパレットが決まってたとはいえ、

実際に画面に配置すると思ってたような感じにはならなかったりするだろうし、整合性を取るのは苦労してたよね。

 

奥田

サンプルを作る時に、大きさとか見てみたんですけど、結構難しかったのと、背景画がほとんどウィンドウで隠れていたので、

メインのウィンドウを半透明にした方が良いんじゃないかとか、色々試しました。UI周りは全体的に色々大変でした。

 

音の領域は、ビジュアルよりも先に遊んでる人の耳に届いて世界観を決定づけるものでもあるから、ゾンビの血生臭い感じを出すことが優先なのか、

デスクトップの世界観というところから電子感を重視すべきか、比重をどっちにするかで悩みました。

クリックしたときの音として、最初は「ピコン!」ていう電子音で進めてたんですけど、

最終的には「グシャ!」ていう汚い感じの音を実装しました。

 

村上

狙いとしてああいうポップな世界観だったので、あえてギャップを持たせてリアルに腐食した肉っぽい音を出すべきか議論してたね。

 

最終的にはボタンを押したときの感覚とか気持ち良さを優先に決めていきました。

 

村上

採用通知を落とすときの音が気持ち良いよね。

通知が当たった時の音はどのゾンビも一緒だったっけ?

 

一緒です。「ぶちゃちょばげ!」ていう北斗の拳っぽい感じの音です。その後で鳴るゾンビの昇天音として

「しょわー…きらきらきら…」って澄んだ感じの綺麗な音を入れる事でプレイヤーに達成感を与えるようにしています。

 

村上

ゲームプレイの気持ち良さは効果音で決まる事が多いし、気持ち良いと病みつきになってついついボタンを押してしまうよね。

マリオがジャンプするときの音が気持ち良いから、障害物が何もない所でもつい意味もなくジャンプを繰り返してしまったりするよね。

 

そうですね。他には合格通知と不合格通知を切り替えるときの「カチャコ!」ていう音がかなり苦労しましたね。

色々試してみて結果的にハンドガンのリロード音を使ったんですよ。あれが一番気持ち良くて。騒がしい展示会場でもちゃんと主張できる音にして、

それが遊びの気持ち良さにつながらないと意味がないので、あの音にして正解だったと思います。

これはプレイヤーが介入できる数少ない要素というか、即時フィードバックを促す大事なところなので、通知の切り替えと、それを落とすときの音はとにかく小気味良くしました。

あとは、熊澤さんに吹き込んでもらった女ゾンビの声を加工してどこまでブサイクにするか(笑)あんまり低すぎるとマツコになるんで。

 

一同

(笑)

 

石倉

最初にあがってきたとき、ゾンビの声が小さくて全然聞こえなかったんですよ。BGMの「天国と地獄」のボリュームが大きくて。

ていうかこの曲を使ってゲームを作ることが昔からの夢だったので、そこに力が入ってしまったんです。

 

村上

は?なにそれ(笑)

 

石倉

卒業までに「天国と地獄」を使ったゲームを作るって決めてたんですよ。だから、今回は「これだけは通してくれ」ってお願いして実装させてもらいました。

 

村上

結果的にあの慌ただしいゲームの雰囲気に合ってたから良かったけどね。

 

石倉

で、かなり調整をして何とか効果音も音楽も両方聞こえやすい音量と音質にしてもらって、綺麗に収まりました。

 

熊澤

でも、「天国と地獄」になると思ってなかったので、最初は背景の色とかビジュアルの雰囲気から、この色だったら可愛い系の音なのかな、

それともちょっとホラーチックな物々しい感じの音がいいかな、とその二択で考えて効果音を探してました。

で、途中で「天国と地獄」に決まったって聞いて、二つのイメージとも全然違ってたから「ど、どうしよう!!」てなりました。

 

石倉

(爆笑)

 

ところで、村上先生が社長役でゲーム内に登場してるけど、これは誰のアイデア?

ゼミ通10_2

 

奥田

私が落書きで村上先生を描いてて、それ見た伊藤舞(デザイナー)が

「あ、これいいやん。これ社長にしたら?」って言い出したのが始まりで、私のラフをもとに伊藤舞が清書していきました。

 

菊竹

先生にバレないように、こっそり描いてたんですよ。先生が近づいてきたら皆でモニター隠して(笑)

 

村上

最初に出てた案を見て、どうも社長のセリフが優しすぎるというかブラック感が足りなくて、「俺ならこう言うな」って言った瞬間に

石倉がすごい嬉しそうな顔するから、隠し事してたのもバレバレだったよ。

 

奥田

社長のコメントとして、村上先生らしい言葉を引き出そうとして、先生ならどう言います?って。先生と先輩との会話が人狼みたいになってました(笑)

 

村上

で、結果的にファミ通の人に「社長がうさん臭くていいよね」って言われた(笑)

ちょっと話は変わるけど、今回、2年~4年のゲームゼミの学生が入り混じって制作をしてみてどうだった?

 

石倉

この企画の前にも学年やゼミをまたいでハッカソンを一緒にやってた経緯もあって、何人かは顔馴染みになってましたね。

 

菊竹

学校終わりの部活みたいな感じで、先輩後輩でワイワイガヤガヤやって、アットホームな感じですごい楽しかったです。

 

奥田

ウチらみたいな騒がしい2年生に混じって、真面目な大瀬先輩が一人黙々とアニメーションを作り込んでるのがなんだか申し訳なくて(笑)

 

石倉

大瀬は職人気質だからひたすら仕事に集中してましたね。

 

村上

彼女は去年までアニメゼミにいたから、そこでの経験を活かして、パターンでのアニメーションを制作してくれたりして、持ち味は活かせたよね。

ただ、表示サイズが小さかったから、拘りのアニメーションがほとんど視認されないという(笑)

 

熊澤

私は中学校の時に部活に入ってたんですけど、中学校って上下関係がめちゃくちゃ厳しいじゃないですか。

最初そのイメージで今回の現場に行ったので、何て話せばいいんだろうって凄く心配でした。崎先輩とか見た目怖いし。

 

 ゼミ通10_3

 

熊澤

でも実際に話したら案外アットホームな感じだったので良かった~って思いました。

 

石倉

アットホームな感じを作るっていうか、「ちゃんと伝える」みたいなことはプランナーの基本なので、

そこは皆できてることが前提になるじゃないですかね。現場の空気作りとか人との接し方とか。

 

村上

あと、今回の作品は何が評価されたんだと思う?受賞は逃したものの、

後から大手の雑誌二社からの取材を受けてメディアで公表していただけた理由っていうのは何なんだろう?

 

それ、一つ僕なりの仮説がありまして。

 

一同

ほほう!

 

僕らがモチーフにした就活のイメージって、子供の頃にニュースなんかで聞いてた所謂就職氷河期のイメージですよね。

それで、今回取材に来られた方たちって、ど真ん中でそれを経験された人達じゃないかと思うんですよ。

いい感じでトラウマを刺激されて気になる作品として取り上げてくれたんじゃないかなって勝手に思ってます。

 

石倉

僕としては、プレイした時の感情曲線が明確だったというかメリハリの効いたゲームだったからかなって思ってます。

「これ、アクションゲームです」て言って渡されたら「あー、こんな感じか」で終わるんでしょうけど、見た目がパズルゲームみたいなのに、

いざ遊んでみると全然イメージが違うっていうギャップでも驚くし、その驚きって、つい誰かに言いたくなる面白さだと思うんですよ。

「これ作ったやつ頭おかしいよ。面白いからやってみなよ」って。

 

うーん、それはあるかもな。

 

菊竹

ゾンビが就活するっていうワケ分からなさとか。

 

西村

私はシンプルにビジュアルがいいなって思いました。まずパッとみて面白そうだなと思うし、情報も整理されてるし、遊んでみたくなるので。

 

村上

人を惹きつける切っ掛けはまずそこにあると思う。「おっ、ちゃんと作り込んである。じゃあ遊んであげよう」って。

そして「なんじゃこりゃ!」ってなる(笑)。このゲームはそういう感情曲線になってるよね。

ファミ通さんに掲載されたみたいに「落ち物ゲームかと思いきやクレーンゲームみたいな遊び方だった」っていう例え話が凄くうまくて、

逆にこっちが「なるほど、我々はそういうゲームを作ってたのか!」て思わされたね。

 

一同

確かに!

 

結局このゲームって、ジャンルは何なの?ポスターにはSSSとか書いてあったけど。

 

奥田

あれは村上先生が急に「就活シューティングシステム、略してSSS」って思いついて、それでポスターを作ったんですよ。

 

村上

嘘でも「前代未聞の××システム!」とか書かれると興味湧くでしょ。Sって付いたらなんかレベル高そうだし。ゲーム開発の仕事をしてた頃は、

毎回「××システム」って名前をつけて、その略語がキャッチーになるように考えて、とにかくお客さんの記憶に残るようにするっていうやり方をしてたもんだから、つい。

 

奥田

あの時先生頭バグってるって思いました。顔にパックしながら仕事してたし、ワケわかんない(笑)

 

村上

バグってるのはいつもの事なんだけど…。そういやポスター作ったのってビットサミットに出展する前日だったよな。

奥田

そうですよ。前日の夜にポスターと取扱説明書を作ったんです。私が通ってた英会話の先生に急遽電話してその場で説明書の英訳してもらったりして。

 

村上

あの時のスケジュールは本当に無茶苦茶だったね。でもそう言える制作の方が後から思い返した時に良い思い出になるもんなんだよね。

 

石倉

勢いがあったからこそ作れたものだと思いますしね。一回立ち止まって吟味してたら多分企画が頓挫してましたよ。

 

トランス状態になるにはあの二日間っていう時間が心地よかったですね。

 

村上

まぁ、そんなこんなで無事に全行程終了したわけだけど、思い出話をし出すと切りがないのでそろそろこの辺でお開きにしましょう。

それでは皆さんありがとうございました。

 

一同

ありがとうございました。

ゼミ通10_5

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2019年9月4日  インタビュー

ゼミ通ヒーローズ Vol.10

 

 ゼミ通ロゴ

ゼミ通ヒーローズ Vol.10

ゲームジャム座談会の巻 Part1

 

「ゼミ通ヒーローズ」とは、キャラクターデザイン学科のゲームゼミに在籍する学生たちのインタビューを行ないながら、

ゲーム・遊びの研究内容について掘り下げていくというものです。

今春、vol.0109を実施し、この度シーズン2と題して更にコアなインタビューとして復活させたいと思います。

もうかれこれ3か月以上前の話。我がゲームゼミの学生たちがビットサミット主催のゲームジャム(2日間でゲームを開発するコンテスト)に参加しました。

その完成作品「わーきんぐでっど」がゲーム雑誌のファミ通や電撃PlayStationに記事として取り上げていただいたこともあり、

制作に関わった一部のメンバーと共に、当時の制作を振り返ってみたいと思います。

ゼミ通座談会 ゼミ通座談会2

「わーきんぐでっど」とは。

新卒採用したい就活ゾンビに合格通知を与え、よりレベルの高いゾンビを獲得するゲーム。

左右移動で通知を落とす場所を決め、決定ボタン入力で通知を落下させます。合格通知に当たったゾンビは昇天して画面右下の控室へ移動しますが、

不合格通知に当たったゾンビは突然暴れ始め、ゾンビたちの配置をメチャクチャに引っ掻き回します。

ゾンビにはランクがあり、髪の色が「青<黄<赤」で点数が異なります。高得点となる赤い髪のゾンビを獲得するために、

邪魔なゾンビに一旦不合格通知を与えて場所を移動させ、タイミングを見計らって通知を落としていきます。

ノルマの点数を獲得できればゲームクリア、ダメならゲームオーバーとなります。

このゲームは、ファミ通.comと電撃PlayStationにて紹介記事を掲載していただきました。

ファミ通.com    https://www.famitsu.com/news/201906/05177330.html

電撃PlayStation  https://dengekionline.com/articles/2559/

 

 

村上

ていうか、今回の収録はプランナー4人だけでゲーム企画の話をする予定だったんだけど、

デザイナーの菊竹と奥田が乱入してきたので、急遽6人での収録となります。では皆さん宜しくお願いします。

 

一同

はい、お願いします。

 

村上

では、まずは一人ひとり名前と役職を教えて下さい。

 

石倉

3年の石倉凛太郎(鹿児島工業高等専門学校出身)です。今回はディレクターをやらせていただきました。

石倉

3年生のリーダー。

最近眼鏡を外して髪型を変えたが、これがお年頃的なアレなのかリーダーとしての心変わりなのかは本人のみぞ知る。

 

菊竹

2年の菊竹茉由(福岡県立八幡中央高等学校出身)です。キャラクタ―デザイン兼プランナーでした。

プランナーとしては、企画立ち上げの時に案出しをしたくらいですけど。

菊竹

2年生のリーダー。絵も描けてプランニングも出来る、所謂歌って踊れるゲームデザイナー。

高校がかなり厳しかったらしく、すっかり心身共に打たれ強くなった。

                                                   

奥田

2年の奥田菜陽(広島県立広島観音高等学校出身)です。ゲームの中のUIデザインを担当しました。

UIデザインを授業で習うのは後期からなのでまだ先なんですけど、一足先にやってしまいました。

奥田

2年生で代議員という大役を司るプランナー兼デザイナー。

とにかく辛いものが大好物で、出された料理には悉く大量の一味唐辛子をまぶし、

RBG値でいうところの「255.0.0」くらい真っ赤に染め上げる。

 

3年の崎佑輔(奈良県立桜井高等学校出身)です。プランナーという名の声優をしました。効果音・音楽含め音周り全般の編集もやってました。

崎

2年次はプロデュースゼミに在籍していたが、3年次よりゲームゼミに転籍。次々にアイデアを広げ、

遠慮なさすぎる発言でチームを鼓舞するアグレッシブなプランナー。

 

熊澤

2年の熊澤優依(京都市立銅駝美術工芸高等学校出身)です。崎先輩のサポートという形で音関連のプランナーをやってました。あと、女版ゾンビの声も担当しました。

熊澤

ゲーム音楽とノベルゲームに興味を持ち、普段はシナリオ作りを中心に勉強しているゲームプランナー。

残念ながら今回の企画ではシナリオは必要なかった…。

 

西村

2年の西村涼(大阪府立港南造形高等学校出身)です。授業の関係でゲームジャムの現場には行けなかったんですけど、今回はプランナーを担当しました。

西村

物静かな性格ながら内に秘めた熱い向上心から休むことなく技術的な実験を繰り返すなど日々鍛錬を怠らない。

ゲームゼミが誇る静かなるリーサルウェポン。

 

村上

では、今回のゼミ通ヒーローズはこの面々で対談形式という形で進めていこうと思います。

実際にはゲームジャムの現場で制作に携わったメンバーは、プランナー、デザイナー、プログラマー合わせて12名で、

その他にも、開催前の準備として仕様を考えたりタイトルロゴを作ったりした人を含めると総勢17名くらいになるのかな。

ゲーム開発の中身について触れる前に、そもそも今回のこの企画が何だったのか、プロジェクトの全容について触れておこうか。

まず、今回「ゲームジャム」というイベントに参加したんだけど、このゲームジャムとは「ハッカソン」のゲーム版のことね。

元々ハッカソンはIT関連の企画としてプログラマーを集めて、24時間以内とか48時間以内という制限の中で何か社会に役立つ技術を開発しようっていうイベント。

エンジニアリング用語のハックとマラソンを足した造語ね。ゲームジャムもこれと同じで、

48時間以内に企画・デザイン・サウンド全てを含めてコンピュータ上で動作するゲームを作るコンテストってことになる。

そしてビットサミット(日本最大級のインディーズゲームの祭典)が京都で開催される関係で、京都=学生の町、

歴史文化と最新テクノロジーの混在する町、そして任天堂のお膝元、みたいなところから、

ビットサミットの運営スタッフが関西の大学や専門学校に呼び掛けてゲームジャムを行なうことになったわけ。

で、そこで参加したのが、立命館大学、京都精華大学、大阪電通大、京都コンピュータ学院、ECCコンピュータ専門学校、そして京都造形芸術大学の6校。

その6校の中でゲームデザインやアート、プログラムに興味のある学生たちをシャッフルして、いくつかのチームを作ってそこで出来を競い合うというのが概要です。

 

石倉

他の教育機関からの参加者はバラバラにしてシャッフルしてましたけど、うちはシャッフルしませんでしたね。

京都コンピュータ学院からナオヤさん(メインプログラムを担当した学生)を吸収しただけっていう。

 

おいしいところだけ取ってったな(笑)

 

村上

たった二日間でゲームを完成させたわけだけど、結果的には我々の作ったゲームが「ファミ通.com」さんと「電撃PlayStation」さんの取材を受けて

記事を掲載していただけるという大変ありがたいお話もあったので、ぜひこれは皆さんの実績としてポートフォリオに載せるなど大いに利用しちゃって下さい(笑)。

ではゲームの中身の話をしていこうかな。

 

石倉

まず今回は参加した全チーム共通で「渾然一体」というテーマが与えられたので、それを元にゲームゼミの2年~4年全体のグループLINE上で企画のコンペをやりましたね。

 

村上

40人もゼミ生がいるとはいえ、ゴールデンウィークのど真ん中だったし、せいぜい56個のネタが集まったらいいなと思ってたんだけど、

皆やたらムキになってどんどん企画を考えて、結局半日で32個ものゲーム企画が上がってきた。あの時のゼミ生全体のテンションの高さはヤバかったよね。

このノリとスピード感がゲームゼミの特徴だなって痛感したよ。

 

 

ゼミ通座談会4

コンペ形式で2年生~4年生の企画草案を集めたところ、6時間で32案ものゲーム企画が集まりました。

 

石倉

あのコンペが始まった時、僕は東京観光で秋葉原にいたんですけど、後輩が頑張ってアイデアを出してるのをLINEで見てて、

ネットカフェにこもってずっとゲーム企画のネタ出しをやってました。

 

村上

観光しろよ。せっかく東京まで行ってるのに(笑)

 

石倉

結局僕は10個くらいゲーム企画案を出しましたね。

 

村上

ここでゼミ生全員で投票をして、西村の作品が見事1位に。

 

西村

はい、ありがとうございます。

 

村上

一番最初の企画案には何て書いてあった?

 

西村

「降り積もる屍に魂を入れていくテトリス型ゲーム。屍に魂が入ると奇声が鳴り、動き出す。入れる度徐々に音が増えていく。

ステージクリア後には1つの曲(不協和音)が出来上がっている。ステージの進行と共に、蘇った人間と、

この世を滅ぼさない為に人を蘇らせる神(プレイヤー)の苦難のストーリーが展開していく」という内容の提案でした。

 

村上

不協和音を渾然一体と解釈した企画だったね。

 

西村

プロットでは抽象的な表現も使ってたので言葉だけじゃ理解してもらえないかもと思って、イラストを描いてアップしたり、

あとはもっと具体的に伝えるためにUNITYで実際に動いてるところを作ってみて、その動画をアップしたりしました。

ゾンビたちがポップコーンみたいに弾けて暴れてたら面白いな、と思って。

これがイメージ画です。

 

ゼミ通座談会5

 

村上

これがアップされた瞬間に全員のイメージががっちり共有できたね。

不思議なことに、抽象的な文章でありながら他の学生が出してきた具体的な案よりも感覚的に「あれ、なんか面白そうだぞ」って思ったんだよな。

みんなは何に魅力を感じた?

 

僕は厨二心を刺激されました。特に不協和音のくだりが。

 

菊竹

私は、他の企画よりも内容が想像しやすかったです。

 

奥田

先生も大絶賛してましたけど、そもそもゾンビっていうモチーフがみんなの共通意識としてあるし、

現代社会へのアンチテーゼとしても使いやすいと感じたからですかね。

 

村上先生が最初に大絶賛しちゃったから全員バイアスがかかった可能性はありますね(笑)

 

村上

それは言えてる。反省するわ(苦笑)

 

石倉

このプロットをもとにどうやってゲームにするかを考えた時に、ちょうどJapan Expoに持ち込むゲーム企画も同時並行で進んでいて、

しかもゲームジャムはテーマ発表から開催まで一週間を切ってる状態だったからとにかく時間がなくて、

リーダーだけ集まって大まかな仕様の方向性を決めることになったんです。

パッと見た感じは普通の落ち物ゲーム(テトリスやぷよぷよみたいなもの)なのに、

実際に遊んでみたらかなりぶっ壊れた印象のゲームにするっていうのを狙ってました。

そして、ゾンビゲームのシチュエーションとして「就活」をモチーフにしようとか、画面構成なんかを固めていきました。

その他にも遊びの要素としてどんなものがあれば面白くなるかを話し合いながら詰めていきました。

その後全メンバーを集めて仕様の詳細を固めていって、UIを含めた画面レイアウトもこの段階で決めました。

 

菊竹

その時既にゲームジャム開催の二日前でしたね(笑)

作品のテーマとは別に「多様性」っていうイベント全体のテーマがあって、そこにも就活の要素を結びつけてましたね。

なんでこの国の就活生はみんな同じスーツを着て同じ髪型をしなきゃいけないのかっていう疑問から、

そんな就活生に「多様性」を感じる事ができないっていうアンチテーゼをゲームの中に盛り込んでいきました。

多様性を奪われた立場からの、多様性を取り戻すゲームみたいな設定でしたね。

 

村上

最終的にその設定をゲームストーリーとしてシステムに絡めていったのね。

 

ゲーム自体のテーマとなってる「渾然一体」は、就活ゾンビの呻き声の不協和音という意味合いと、

暴れるゾンビたちが画面中を混ざり合って弾ける様子に込めたんですよね。まるでミキサーの中身を覗いてるみたいな感じで。

 

西村

そこは私が想い描いていた通りのゲームになってたと思います。

 

村上

完成したゲームはビットサミットに出品させていただけたけど、他のライバルチームの作品はどうだった?

 

熊澤

今回優勝した、赤と青の色眼鏡をつけて遊ぶゲームが感動しました。これは二人で遊ぶゲームだったんですけど、画面の中に青い障害物と赤い障害物があって、

赤い眼鏡をつけてる人には赤い障害物が見えなくて、青い眼鏡をつけてる人には反対に青い障害物が消えるという状況で、

お互いに声を出し合いながら障害物の位置を説明し合って、協力してゴールを目指すゲームになってました。

そんな協力プレイの感覚に渾然一体感があって凄く良かったです。あとはビジュアルも可愛くて、この作品の受賞は納得でした。

 

ゼミ通座談会6

ゲームジャムの会場にて、他のチームが制作したゲームを試遊する奥田(左)とちょむ(右)。

 

村上

個人的には、あの作品が受賞したのは、まず単純に嬉しかったなぁ。ていうのも、ゲームジャムの現場に企画の女の子が一人で乗り込んできて

「仲間が誰もいないので誰か手伝って下さい」って言いながら企画のプレゼンをする姿がたくましかった。

でも最初はそのプレゼン内容が正直あまり面白いと思わなくて少し心配だったんだけど、

徹夜状態で試行錯誤しながら完成まで漕ぎつけて、更には優勝するっていうサクセスストーリーに感動した。

 

菊竹

なんか、完全にお父さん目線ですね(笑)

 

それ聞くと、我々は悪役ですね。事前にガチガチに仕様を固めて、しかも11人もの大所帯で乗り込むっていう(笑)

 

石倉

しかも京都コンピューター学院さんからプログラマーのナオヤさんだけいただいて更に組織力を強化して。

 

村上

でも彼は石倉の企画プレゼンが面白かったから我々のチームに協力したって言ってたよ。

 

石倉

本当にありがたい限りです。

 

菊竹

11人もいるチームに1人で入ってくる勇気が凄いですよ。普通怖いですよね。

 

奥田

髪染めてるのもウチらだけで浮いてたしね(笑)

 

村上

ガラの悪い大学だと思われただろうな。

 

一同

(爆笑)

 

 

ゼミ通ヒーローズ Vol.10 Part2に続く

 

 

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2019年6月13日  インタビュー

ゼミ通ヒーローズ Vol.09

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中西由弥と「枯れた技術の水平思考」について語るの巻

 

今回のゼミ通ヒーローズは、村上ゼミ4年生の中西由弥さん(相愛高等学校出身)をピックアップします。

ゲームゼミの中で「玩具」の研究と制作を続けているアナログ人間。

ゲームの神様である故・横井軍平氏(知らない人はすぐにググろう)の哲学「枯れた技術の水平思考」に基き、

新しい面白さを生み出す秘訣について語ります。

 

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学科展の会場にて、自身のゲームのルール説明をする中西由弥さん。

 

村上 横井軍平氏(1941-1997/任天堂で様々な玩具、コンピュータゲームを開発してきたヒットメーカー。退社後、株式会社コトを設立。ゲーム業界の神様とも称される)が提唱する「枯れた技術の水平思考」っていう概念は、ゲーム制作の授業の中でもかなりしつこく説明してきたね。

 

中西 既に使い古された遊びの中に新しい発想をプラスして新しい価値を生み出すっていう考え方ですよね。

これ、おもちゃ会社の説明会に行ったらよく言われますね。

 

村上 ちなみに横井軍平さんって知ってるよね。

 

中西 もちろんです。でも先生から授業の中で聞いて初めて知っただけなんで、なかなか一般の人は知らないかもですね。

 

村上 ゲームゼミの中でも横井軍平さんの存在とこの思想は散々刷り込んできたからかなり根付いてきてるね。

この考え方が分かってると面白い企画がどんどん溢れ出てくる。今の流行を追いかけるんじゃなくて、新しい価値を生み出すのが大学としての使命なんでね。

我々からすると軍平さんといえばゲーム業界の神様として崇め奉るけど、普段テレビに出るようなこともないから、学生はなかなか知る機会はないかもね。海外に行ったら、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、グンペイっていうレベルの人として知られてるんだけど。

 

中西 ゲームっていうか、この哲学は遊びの根本にあると思いますね。

この前芸人さんがおもちゃ会社に行って「面白さとは何か』みたいなことを教えるっていう番組があったんですよ。その中で、失敗したネタを一回見せて、失敗の理由を考えてその答えを元にもう一回ネタを見せるっていうのをやってたんです。ぶっ飛んだネタを見せたら、身に覚えがなさ過ぎてついていけないけど、ありふれたネタの中にぶっ飛んだ要素を組み込んだら面白さが伝わる、て言ってたんですよ。

それ、すごい遊びに繋がるなーって思って、へぇ~って思って見てました。

 

村上 それこそ「枯れた技術の水平思考」だよね。枯れた技術ってことはみんな知ってるものってことだから、まず「こういう内容です」って言われたら頭の中でイメージを構築しやすい。そしてそこにコレ(新しい価値)を足したら「おお、なるほど!」ってなる。

仮にパソコンもスマホも触ったことがない民族に「ソサエティ5.0がね」とか言ってもワケ分からんだけで好奇心も何も湧いてこないよね。

 

中西 そもそも何すかそれ!?てなりますよね。そうなると気持ちが離れちゃう。

 

村上 ちなみに、横井さんの作品って知ってる?

 

中西 以前コトさん(株式会社コト。横井軍平氏が任天堂退社後に設立した会社)にお伺いしたときに

紹介していただいたので大体は分かります。

 

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株式会社コトさんの会議室に展示されている横井軍平氏の偉大な発明品の数々。

 

村上 あの時は、学生を大勢引き連れて押し掛けたにも関わらず懇切丁寧に会社の中を案内してくれて、新しい発想を引き出すような貴重な裏話を聞かせてくれて、ピザをご馳走になって、お土産に新商品までいただいて…。職人気質で人間味に溢れた良い会社だったよね。

で、話を戻して…。横井軍平さんの作品で有名なものって、まずはファミコン登場前の任天堂時代に開発した『ウルトラハンド』があるね。

 

中西 あの伸びるやつですね。

 

村上 あれは元々軍平さんがセクハラにならないように女性のスカートめくりをしたくて開発したって聞いたけど。

あとは『ラブテスター』。手をつないで二人の相性度を測るメーターが動く玩具。

これは軍平さんが女性社員と手をつなぐ口実がほしくて作ったという逸話がある。

 

中西 そんなんばっか(笑)。あとは野球のピッチングのおもちゃもありましたね。

 

村上 『ウルトラマシン』ね。今言ったやつ、子供の頃全部持ってたわ。

あと有名なものといえば『ゲーム&ウォッチ』。電卓が普及した頃に、この液晶を使って何か面白いことができないか、っていうアイデア商品ね。電卓の数字をキャラクターに置き換えたらゲームになりました、っていう。

 

中西 私は触れたことはないですね。子供の頃にゲームを買ってもらったことはありますけど、他の学生に比べるとそんなにデジタルゲームをやってきた方ではないんで。

デジタルのゲームっていうのが、まず任天堂しか家になくて、PlayStationとかやったことないですし、おもちゃもあるにはありましたけど、何でも買い与えられてたってわけではなくて、一つ買ってもらったものを延々遊んでましたね。一日一時間と決められてましたけど。

小学一年生のときにNintendoDSを買ってもらって、そこから『どうぶつの森』とか『さわるメイドインワリオ』とかで遊んでました。あとはゲームボーイの『ポケモン』で友達同士が通信してたのを横で見てただけですね。

 

村上 それほどデジタルゲームに興味があったわけではない?

 

中西 興味はあったんですけど、ピアノ、水泳、英会話、公文と習い事をやってた関係で時間がなくてあまりゲームで遊んでた記憶がないんですよ。

 

村上 いつからこの道に進もうと思ったの?

 

中西 昔から絵を描くのは好きで、中学3年生の頃に美大の存在を知って、そこから絵をちゃんと勉強したくて高校1年のときに既に勉強は切り捨ててたんですよ。で、大学に入ってゲームの授業を受けて、最初の授業のときにポケモンのゲーム性分析みたいなグループディスカッションをやったんですね。そこでストーリーとかキャラクターではなくてゲームシステムのことを意識するようになって、ゲームの企画を考えるのってこんなに面白いんだって思いました。

それでもそんなにゲームをしてたわけではなかったんで、このままここにいていいのか、って悩んだんですけど、課題のゲーム企画をするとき、私は「たまごっち」みたいな媒体を作って、その中で遊ぶ企画を立てたんですね。その時に「あそび」を考えようと思ったら、ハードウェアありきのものを考えるんじゃなくて、媒体から考えちゃえばいいんだって思って、そこからおもちゃにますます興味が出てきた、ていう経緯があります。

 

村上 なるほど。じゃキミもゼミで洗脳されたクチだ。

 

中西 そうですね、完全に(笑)。ゲームというより遊びですね。とにかく楽しいことを考えたかったんです。

おもちゃも面白そうだなってなったときに『おもちゃショー』に行ったんですけど、そこに来てた子供達の必死に遊ぶ様子を見たんです。

笑顔の子もいるんですけど、どちらかというと真剣になってるんですね。で、達成感を得た子供が「できた!」って大声で喜んでる顔を見て、あ、私がやりたいのはコレだ!て思いました。

 

村上 人を喜ばせるのはこの仕事の醍醐味だしね。ちなみに一番面白かったおもちゃって何?

 

中西 やっぱり『たまごっち』ですかね。最初はそんなに好きじゃなかったんですけど、ピアノ教室でのレッスンが終わった後にみんなで通信する時間がすごく楽しくて、そのためだけに行ってたって感じでした。赤外線通信ができたのでそれぞれのたまごっちを見せ合ったり交換したりして。あれが楽しくて楽しくて。

同時期に『でかたま』ていうのが流行ってて、親の携帯でネットに繋いだら、自分が今育ててる前の世代の子からプレゼントが送られてくるんです。そんな遊び方もできて楽しかったですね。

 

村上 『たまごっち』が出たときは業界内でも話題になったからね。

その頃の男子はなんだろう、『ムシキング」かな。

 

中西 女子も『ムシキング』やってましたね。あと『ラブandベリー』とかも。お小遣い全部使いましたもん。

ゲームを買ってもらえなかった分、外でそうやって遊んでました。

 

村上 遊ぶのが嫌いな子供なんていないんじゃないかな。いるのかな。

 

中西 勉強しなきゃいけないから遊びを切り捨てる子はいましたけど。

 

村上 でもそれって我慢してるってことだよね。

 

中西 でも私は我慢できなかったんで(笑)。

 

村上 以前山中楓のインタビューの中でも言ってたけど「勉強はゲームだ」っていう考え方があって、問題を解くことを楽しむっていうか。

 

中西 私はそれが出来なかったですね。中学生の頃、勉強しろって言われて自習室に8時間閉じ込められたことがあったんですけど、8時間の中でどれだけポケモンを育てられるかってことに一生懸命になってて、監視されてる中でどこまで遊べるかっていうのを楽しんでました。

 

村上 『ポケモン』というゲームじゃなくて、『ポケモンで遊ぶ』というゲームってことね。

じゃ今度は作り手の方の話に移ろう。「ゲーム制作応用」の授業の中で、廃材置き場で拾ってきたガラクタや木材を使って新しい玩具を作ろうっていう課題を出したけど、あれは『枯れた技術の水平思考』の実験だったね。

 

中西 あの時私何作りましたっけ…?たくさん作ってたからもう忘れました(笑)。

でもそこでの蓄積をもとに学科展用の作品として『Beeeeee Bearful』を作りましたね。

 

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中西さんの作品『Beeeeee Bearful』。

 

村上 このゲームの発想の原点って何?

 

中西 あれはtwitterを見てるときにデザイナーさんの絵で六角形をモチーフにした画像がたくさんアップされてて、それ見て単純に可愛いなと思ったんですよ。四角形でも五角度形でもなく六角形が可愛いなと思って、これを使って何かできないかと思ったのが切っ掛けです。まだその時はシステム(ゲームのルール)も何も考えてなかったですね。

 

村上 内容ではなく形から入った?

 

中西 形から入るのって結構大事かなって思ってます。おもちゃを買う時って、遊び方を重視して買うよりも、特に小さい子供って「あ、これかわいい!」ってなって商品に近づくじゃないですか。そこで触ってみて遊び方を知るって感じなんで、見た目として何を触りたいと思うのかというのは一番大事にしてるんです。

その分システムを考えるのに時間がかかっちゃうんですけど(笑)。何をやりたいかの前に何を触りたいかっていう考え方ですね。

 

村上 ゲームの作り方にルールはないから、それも一つの正解だと思うけどね。要は面白けりゃいいわけで。

 

中西 はい、そこからシステムを考える上で色々とアイデアをメモしていきました。

私が大事にしてるのは独り言のような内容でも全部文字に起こすことなんです。例えば、何かアイデアが出たときにそれをメモして、そこに矢印を引いて自分でツッコミを入れて、その時の思考を全部書き留めるんです。

企画が迷走して行き詰った時も、メモを見返せばその時の思考やテンションまで全部振り返れるので、その時の感情になってもう一度考え直すんです。

結局「Beeeeee Bearful」も試行錯誤したんですけど、回り道した挙句に結局一番最初の案に落ち着きましたね。

 

村上 企画あるあるね。結局最初の直感が一番正しかったってやつ。

 

中西 奥の深いゲームにしようと思ってあれこれ要素を足していくと複雑になって対象年齢がどんどん上がっていくんですよね。どうしてもカードが増えたりサイコロが増えたり。

 

村上 アイデアを足し算にすると複雑になるしプレイヤーとしても覚えなきゃいけないことが増えるばかりで分かりにくいものになるよね。掛け算にすると原型は変わらずに中身が濃くなる。

 

中西 そうなんですよね。だとすると最初のシンプルなルールが一番スッキリしていて遊びやすいんじゃない?てなりますね。考えて形にするというよりはパッと思いついて形になる方が多いですね。

 

村上 直感で動くタイプね。

 

中西 完全にそうですね。ちなみにあのゲームって、一つの枠の中に三枚までパネルを押し込める構造になってるんですけど、あれってウルトラファクトリーで木工のレーザーカッターの使い方を教えてもらってるときにたまたま思いついたものなんで、「あ、それできるんじゃない?」ってなって、その場の思い付きで広げていきました。

考えようとすると逆に思いつかないですね、直感型なので。

 

村上 直感ってことは、つまり日頃の観察の結果でネタが蓄積されてるってことだね。脳ミソの中身がゼロの状態では直感も何もないから。

発想っていうのは記憶の中にある情報Aと情報Bを瞬間的に編集して創出することだから、直観力=観察力とも言えるよね。

 

中西 意識して観察するとしんどいんで、なんか楽しそうだなーくらいの感じで物事を見るようにしてます。

 

村上 楽しいって思える条件って何?

 

中西 楽しいにも色々あるんですけど、例えばアンパンマンのDIYを出してるところがあって、インパクトドライバーを使う体験をしてる子供がいたんですね。でスイッチを入れるとドライバーの先のアンパンマンがクルクル回るんですけど、それを見てるだけでも楽しくて子供たちが夢中になってるんですね。

気持ち良さを求めて一生懸命やってるっていう楽しみもあれば、その過程そのものを楽しむ子がいたり、楽しいといっても色々あるんじゃないかと思いますね。続けたいって思えたらそれは楽しいってことなんじゃないですか?

 

村上 何があったら続けたい?

 

中西 普通に気持ち良さじゃないですかね。私はあんまり結果とかを求めてないんですよ。

単に気持ち良さというものを突き詰めていったら結果的に面白いものが出来上がったって感じになりますね。

 

村上 さっきのアンパンマンのDIYの場合「できた!」っていう成功体験が大きいんだと思うんだけど、その成功体験の前に「やってみる」ってことが必要なわけだよね。インパクトドライバーって普通だったら怖いから触らない。でも触りたくなるのはアンパンマンっていうキャラクターの力があったからなのかも知れないね。

 

中西 ていうか既に何人かの子供たちが体験してる様子を外から見てるんで、その姿を見て私もやりたいって思うのかも知れないですけど、そこの社員の方たちのプレゼンの盛り上げ方とかオペレーションによるものも大きいと思います。

 

村上 おもちゃショーはネタの宝庫だもんね。メジャーなものもあるけどマイナーなものの方が得られる刺激が大きい。

ゲームでいうと、東京ゲームショウよりもビットサミットの方がクリエーターとしては刺激があって楽しいと感じるし。ソフトの展示が中心だけどハードというか新しい実験的なインターフェースやデバイスの紹介が多いからここから更に発想が広がるよね。枯れた技術の水平思考を体現したような作品が多いというか。

 

中西 すごいヘンなコントローラーとかたくさんありましたもんね。

 

村上 でっかいハサミの形をしたコントローラーとか、シャンプーのボトルの形をしたものとか。

これどうやって遊ぶんだ!?ってなるけど触ってみて感動して納得する。

 

中西 今やってる卒業制作では、その辺の見た目とか触り心地とか、今まで作ってきたものを総動員して、

とにかくコミュニケーションそのものの面白さを追求できるようにシンプルなものにしようと思ってます。

 

村上 コンポーネントが多いと、箱は大きくなるし難しそうな印象になるし、もっともプリミティブな遊びを突き詰めていって、そこに遊びのバリエーションを足していくっていう形で作れるといいね。

 

中西 何度か言われてきた「モノ」ではなく「コト」のデザインという点が重要ですね。見た目の美しさはもちろん重要ですけど、それ以上に「体験をデザイン」するんだって意識してます。

 

村上 そのコトとして印象に残ってるゲームってある?

 

中西 うーん、『ナンジャモンジャ』じゃないですかね。

 

村上 あれは何であんなに面白いんだと思う?授業でも『ナンジャモンジャ』のゲーム性分析をしたけど、

誰がやっても5秒でルールを覚えられて、しかも絶対盛り上がるよね。

 

中西 盛り上がりますね。普遍的なネタだけじゃなくて身内ネタでも盛り上がれるっていう幅の広さですかね。

ゲームのシステムっていうよりは、その途中の会話が面白いのかなって思います。発想力とか、それに対する周りのリアクションとか。

 

村上 説明文もなく、パラメータ設定もなく、キャラクターの絵が描いてあるだけでUIも何もない。

 

中西 あれって勝ち負けとかどうでもいいじゃないですか。騒げたらそれでいいっていうか。

あとは今流行ってるのは『キャット&チョコレート』ですね。あれも想像力が問われるアナログゲームですね。

 

村上 『ナンジャモンジャ』に近い思考性はあるよね。提示されたお題に対して何かを考えて、それを聞いた周りの人が「あ、この人こういう人なんだ」って分かる。このあたりからじゃないかな。コミュニケーションゲームっていう形で爆発的に売れ出したのは。

 

中西 元々は人狼かTRPGあたりですよね。

 

村上 TRPGは自分が中学生くらいの頃に流行ってたな。今はクトゥルフ神話が人気だけど、当時はTRPGの元祖となる『D&D(ダンジョン&ドラゴンズ)』っていうのにハマったね。

でも当時は設定もルールも全部自分で作りたかったから、マニュアル作りも含めて友達の家に泊まり込んで何日も徹夜してずーっとこればっかりやってた。勉強は…しなかったな。

 

中西 そうなりますよね。アナログゲームというかコミュニケーションゲームって、相手がその場にいるっていうのが強みなんでしょうね。

 

村上 任天堂がやってきたことって、実はソレなんだよね。ネットで繋げるんじゃなくて、相手と一緒にいるとか、対話をするとか、家族のコミュニケーションツールにするっていうところ。

ファミコンなんて最初から「ファミリー」って名前がついてるしね。元々ゲームボーイも通信ケーブルで繋ぐものであって、相手と顔を合わせながらその場を共有する喜びが重要になってた。逆にオンラインゲームってどう思う?

 

中西 周りにネットゲームにハマってる子はいますけど、でもSkypeで会話しながら遊ぶので、やっぱり直接のコミュニケーションは重視してますよね。

知らない人と繋がる類のオンラインゲームであれば、単に自分の強さを見せつけるというのが大きな目的なのかと思いますね。

 

村上 MMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game-大規模多人数同時参加型オンラインRPG)だとそうなると思うけど、『スプラトゥーン』の場合は44という人数設定が心地良いのか、知らない相手のはずなのにヘンな連帯感が生まれて、新鮮な楽しみがあったな。個人的には10年に一度の名作だと思ってる。

で、また枯れた技術の水平思考の話に戻すね。アナログゲームの場合、何が「枯れた技術」なのかというと、「コミュニケーション」になると思うのね。ここに「意味不明なキャラクター」や「あり得ない状況」が組み合わされて『ナンジャモンジャ』とか『キャット&チョコレート』が生まれたと。

その面白さによってコミュニケーションの面白さがより引き立っていく。

 

中西 人間の本能的な部分での「楽しい」っていう感覚は今後も変わらないと思うので、枯れた技術の水平思考という考え方も変わらずどんどん面白いものが生み出されていくんだろうなと思いますね。

相変わらず私は直感で面白いと思うものを作っていきますが。

 

村上 結局はそれが全てなんだけどね。全ての物事から面白いを探せる観察力が大事。

 

中西 私は常に「死ななきゃセーフ」の考え方で楽しく能天気に生きてます。明石家さんまの「生きてるだけで丸儲け」って言葉もありますけど。

ポケモンのロケット団の歌で「くよくよタイムは5秒でじゅうぶん。そんなことより明日のためのご飯です」っていうのがあるんですよ。このフレーズが物凄く好きで、悩む時間を切り捨てて何か新しいものを作らないと時間が勿体ないって思っちゃうんですよね。

 

村上 そのシンプルさが幸せの秘訣なんだろうな。軍平さんが枯れた技術の水平思考って言ってるのは結局情報の蓄積であって、「そういやあんなのあったな」ってすぐに引き出せるようになってる。

あとは本能に正直。『ウルトラハンド』のときに「スカートをめくりたい」っていうのも、『ラブテスター』で「あの女の人とお近づきになりたい」っていうのも全部自分の本能に従った考え方。あとはそこに何をくっつけたら良いんだろうって考えた時に如何に周りを見るか。

枯れた技術っていうのは言わば過去の経験に基づく記憶であって、水平思考は「今のもの」なわけだから、どれだけ普段からアンテナを張り巡らせて周りを観察してるかが問われるよね。で、「これだ!」って言ってその二つを合成することで全く新しい価値のあるものを生み出すことになる。

 

中西 最初の授業でそれを言われて確かに納得したんですけど、やっぱり最初は絵を描きたくてこの大学に来たので、観察力が大事だと言われても「難しいなぁ」くらいにしか思ってなくて。

でもこの職に進みたいって決めると自然に周りをじっくり見れるようになるもんですね。意図せず出来てる感じがします。

 

村上 戦闘態勢に入れるかどうかなんだろうね。ただボーっと日々を過ごすんじゃなく。

 

中西 昔は視野が狭かったんですよ。自分の考え以外は全部良くない、みたいな。

でもプランナーを目指すようになってからは「あ、こういう考え方もアリなんだ」って思えるようになってきましたね。

 

村上 遊びを知ることによって視野が広がるっていうか、心が広くなるっていうか、枯れた技術の水平思考によって面白いゲームを作ろう、ではなくて人生を面白くしようってことだね。

というわけでインタビュー収録お疲れ様でした。

 

中西      ありがとうございました。

 

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2019年5月16日  インタビュー

ゼミ通ヒーローズ Vol.08

 ゼミ通ロゴ

 

 

 

杉山大地と敵という概念について語るの巻

 

 

 

今回のゼミ通ヒーローズは、ゲームゼミが誇る摩訶不思議なモンスターキャラ、4年生の杉山大地さん(済美高等学校出身)をピックアップします。

小学2年生の頃より創り続けたモンスター図鑑や、3年生の時に制作したデジタルゲーム「魔界創生」で奇抜で独特の世界を生み続けています。

 

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自撮り@フランスのJAPAN EXPO会場

 

 

村上 まずキミは一体…どういう人なの?

 

杉山 息する間にも無数の変体、すぎゃんです。

 

村上 …。

 

杉山 …。

 

村上 え?

 

杉山 宜しくお願いします。

 

村上 はい、宜しくお願いします。すぎゃんって元々ゲームに興味があったの?

 

杉山 えーとゲームに興味があったというより、大学に入る前からゲームの制作はやってました。

大学に入った動機は私のライフワークといえる「モンスター」の探求を追求できる環境に身を置きたいというのが大きかったです。

 

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小学2年生の頃から描き続け、今も尚増殖中のモンスター図鑑。

 

 

村上 てことは別にゲームが作りたいわけではなく、モンスターを描きたかった?

 

杉山 そうです。小学2年生の頃から描き続けてきたものがありまして、今でですね、11339体ですね。

 

村上 大学に入学したときに8000体だったっていう数字はよく覚えてるわ。

でも、これだけたくさん描いてタッチが変わらないっていうのは…!?

 

杉山 あえて変えないようにしています。

これは統一感というよりも、私が小学2年生で描き始めたときのことを「続行する」という意志で、

その創作は始まった時既に完成していて、それがあるべき姿に彫刻され続けているということです。

私はこのモンスターの創作を「モンスターデザイン」ではなくて「図鑑の創作」と考えているんです。

で、モンスターはそもそも私が考える以前に既に存在していて、私はそれをあるべき姿に描き出しているだけである、

そういう制作に対するスタンスで、探し出してそれを記録するという心で描いています。

 

村上 モンスターを探し出して、というのは、現実世界ですぎゃんにとって感じるモンスターを炙り出している、という意味?

 

杉山 現実世界と言ってしまって良いのか分からないのですが、最初にこの活動を始めたときから、そ

れまでそうであるようにモンスターが自然に描き出されるプロセスの中で、何を参照しているのか、その、えーと、そのものに素直になる。

 

村上 ???

 

杉山 現実世界の、例えば「これがモンスターに感じるからこう描き出そう」ではなくて、

もっと素直に頭の中に出てくるモンスターで、そこから変えないようにしようと、そんな感じです。

 

村上 てことは、定義としては「妖怪」ではないのね。

 

杉山 妖怪ではないです。もっと自然な動機で生み出されるモンスターです。

 

村上 自然な動機というのは?

 

杉山 これは「あそび」に繋がることなんです。モンスターを描くっていう人間の行為が自然な行ないだという直感があって、

それがどのように自然かっていうことを追及するために動物行動学を勉強したんです。まず、モンスターって仮想敵といえるじゃないですか。

仮想敵を作り出すということは動物にとって自然なことだといえるんです。

例えば狩りをする動物を動物園に閉じ込めて、餌を与えて運動をさせていても健康な状態ではなくなってしまうそうです。

そこで、エンリッチメントっていうんですけど、狩りとか縄張り争いのような行動の状態をあえて作り出す。

例えば、複数の同種を檻に閉じ込めることによって動物が健康になるであるとか、あと、こういう話もあるんですね。

ヒナから鳥のエサで育てたが、ある日部屋の隅に飛んでいって、そこに虫がいないのに獲って食べるという仕草をするんです。

仕草だけして満足して帰ってくるというようなことがあるんです。

だから、何か仮想の敵対を生み出して安心を得るっていう自然で素直な行動が動物にはあるんです。

私のモンスター図鑑は、そういった自然で素直な動機から生み出される想像のもののコレクションということですね。

 

村上 食物連鎖みたいな、所謂「天敵」というものとは別のもの?

 

杉山 一部当てはまります。食物連鎖でいう天敵も恐怖を感じて行動を誘発するっていうものの一つです。

あと縄張り争いで対峙する敵だとか、メスの取り合いで対峙する敵だとか、あとは単純に被食者が捕食する動物だとか、

そういったものですね。私が考える敵というのはそういうものです。

 

村上 ここに描かれてるモンスターは、すぎゃんにとっての敵ということではない?

 

杉山 そういうことです。ですが、そのモンスターが生み出される人間の深層心理がモンスターを生み出しているのであって、

それにおいて、私自ら敵対を生み出すっていう心を利用しているっていう感じですね。

だからそのモンスターを敵に思うっていう心を発信源としてモンスターが生み出されていると。ですが、理性的には敵対をしているわけではないです。

 

村上 心のよりどころとしてのモンスターなのかなっていう気もするね。写経のような感じというか、

悟りに向けて自分の中の何かを吐き出しているというような印象も受けるね。

じゃ、これが仮想である理由は?

 

杉山 動物図鑑を作っても、それは現実に存在するものなので数に限りがあります。

もしかしたら仮想敵を生み出そうとしていた最初の段階、つまり小学2年生以前の状態では、

ライオンを描いたりすることで満足していたので一定の効果があったのかも知れません。

でもモンスターっていうのは数に限りがないのでいくらでも作れるわけですよ。

それに、そういう敵対するものとしてゲームの中で組み込まれていたり、

例えば昔私はポケモンだとかドラゴンクエストモンスターズだとかピクミンだとか、そういうものをやってたんですが、

モンスターっていうのは基本的にそういうゲームの中では敵として存在するじゃないですか。

そういうものを見てきた中で、「敵がほしい」って自分の中で思った時にモンスターを描き出すのもまた自然なことだったんです。

 

村上 ここでいう「ほしい」というのは、敵を作りたいということ?

 

杉山 そうですね。動物の感情にそういうものが自然に存在する。

例えば、もっと簡単にすると、えーと、すごい怖い先生がいる。威嚇されると動物は威嚇し返したくなる。

そこで先生を打倒してしまえば本当は解決するんですが、倫理的にそれはできない。なんせ先生ですから。

となると、転移行動っていうんですけど、別のものに攻撃の方向を切り替えるんですよ。

その攻撃の対象が所謂仮想敵であると。そういうものの延長であるというか、それが形を持ったものがモンスターともいえるんです。

 

村上 弱い人が何かに八つ当たりをする感覚なのかな。

 

杉山 誰しもそういうことってあると思います。色んな状況がありますから。

ある行動を誘発されてもできないというときに行動が転移するので、何にでも起こり得ると思います。

ケーキが食べたい、でも太ってしまう。だからストレスがたまる。で、そのストレスの発散方法はいくつでもある。そういうことですね。

 

村上 それがすぎゃんにとってはモンスターを生み出すことなんだ?

 

杉山 はい。そのおかげでここまで継続できたというのは極めて稀な例だと思います。

 

村上 精神を高めるためとか、安らぎを求めてるとか、そういう浄化作用みたいなものを求めてモンスターを描いてる感じだね。

ゲームの話に戻すけど、ゲームの中には敵キャラがたくさん存在するよね。ドラクエは倒す為に、ポケモンは捕まえるためにとか色々あって、

いずれにしても主人公が前に進むときの障害物でしかないと思うのね。ゲームキャラとは所詮記号の塊だから。そんなゲームの中の敵というのはどう考える?

 

杉山 ゲームっていうのは、色々多様化されている中で、ユーザーを目的に向かって進ませていかないと遊びが成立しない。

その成立させるための要素としてモンスターというのはあると思います。

さっき言った通り、誰しも敵対するっていうことが人類にとって慢性的に不足してると思うんですよ。

だから敵対を作ることで人間はゴールへ向かっていくわけです。

 

村上 例えば社会生活の中で、「共通の敵を作ると結束が固まる」っていう場面もあるけど、それはどう捉える?

 

杉山 コンラート・ローレンツという動物行動学者の著作である「攻撃・悪の自然誌」っていう本があってですね、その中にそういうことが書いてありました。

縄張り争いがあって関係性がギスギスする。これは人間でも何でもいいです。

で、その関係ってある所で止まるんですよ。ABを追いかけるとBは逃げるじゃないですか。

そのときAは自分の縄張りから遠ざかっていって、Bは自分の縄張りに入るわけです。

するとAの勇気が段々なくなっていってBの方が強くなる。そしてBが勇気を持ってAを追いかけると、今度はその逆が起こるんです。

その結果縄張りというものがあるスペースを確保して落ち着くんです。そこに別の敵Cが入ってくると、ABが協力するんです。

それが学習されて仲間になる。で、人間社会において共通の敵を作ると仲良くなるというのにも、これが当てはまってると思います。

 

村上 少年ジャンプの中の王道ストーリーで、「魁!男塾」とか「ドラゴンボール」で敵が登場すると、当然戦うよね。

それが終わるとまた別の敵が出現する。その時にさっきまで戦ってた相手が味方になって力を合わせて新しい敵をやっつける。

この繰り返しで雪だるま式にチームが巨大化して最大の敵に挑むっていうのが、動物行動学的に言えば理にかなってるってことだね。

 

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精神統一中…

 

 

杉山 そうですね。それが色んなスケールで起こってると思います。

例えば人間みたいに先のことを予測できる想像力のある動物だと、

互いにパーソナルスペースを狭くした場合、物理的な接近点というものはあっても、心理的もしくは法的に守られているスペースが別に存在する。

目には見えないけれど、潜在的な心の距離は、ちゃんとさっきのABの関係のように存在しています。

それが物理的・直接的な縄張り間での関係というのが大きなスケールだとすると、その心理的なものはもっと小さなスケールといえます。

些細な切っ掛けで友達になるっていうケースもありますね。

大きなプロジェクトを成し遂げたとかではなくて、子供が「ちょっと気が合う」みたいなところで共通の認識を持つ。

同じメーカーの鉛筆を持ってるとか、それが心理的に小さなABの関係を作る。

そういうことがすごく反射的に、感じられもせずに起こっているんです。

 

村上 小学生のときに、いじめっこが突然優しくなったりすることがあるけど、これもさっき言った、

理由も分からないような些細な共通項を見つけたから起こる現象なのかな。

 

杉山 さっきの鉛筆の話は、同族嫌悪ですね。意識して嫌悪なんてしてないと思いますけど、

反射的に、そして感じられずにある同族嫌悪かもしれません。

それが、感じられないほど小さな縄張り争いとして勃発して、そこにまた仮想の敵も出てきて仲良くなるっていう、

仮想のプロセスが人間にはできると思うんです。いや、できてるんだと思います。

そういう、本人たちにとっても意味不明なプロセスによって、いじめっこの心境が急に変わったり、そういうことが往々としてある。

不思議な生き物ですね、人間って、ふふ(微笑)。

 

村上 日本の教育ってそれを求めてきたよね。皆同じ。皆で足並みを揃えましょう。同じスーツを着て同じ髪型で就活をする。

外国人からは気持ち悪がられるけど。これは同族嫌悪ではなくて安心を生んでるようにも感じるね。

 

杉山 安心の要素はすごくあると思いますね。それによる抑圧の側面もあります。

色んな人がいて、色んなことが出来て、色んなことができない人がいる。で、色んな条件があるんですよ、発散の条件が。

それに社会から保証される抑圧と解放の仕組みが沿わない人っていうのが出てくる。

最初から社会に反抗しようとする人はいないわけで。逆にそれに沿う人は安心すると思いますね。数の力は強大ですから。

 

村上 カテゴリーに収まりたがる傾向があるよね。何か病名をつけてほしくて医者に行って、それによって安心を得たり。

 

杉山 社会性のある動物として進化してきて、ここまで発展してきたという過程があるので、それは当然だと思いますね。

就活のときに皆同じ服で同じ髪型で、というのは、「社会に出なければいけない」から出る人と、「社会に出たい」から出る人に分かれると思うんですけど、

まあ、出たい人は出ればいいから置いといて、前者の場合は強制される感覚があるから「就活」そのものや、

それが強制するイメージを敵視する層というのが、足並み揃うことに安心する層の反対に結果的に存在することも必然のように感じますね。

 

村上 すぎゃんにとってゲームの中の「敵」っていうのはどういう存在?

 

杉山 アクションでもRPGでも、やられるための障害物としての存在っていう位置づけの敵を倒すことによって心理的な解放があって、

プレイヤーが自ら話を進ませていきます。それはすごくシンプルな構造ですよね。敵っていうと、怪物だとかゾンビだとか、

プレイヤーに危害を与えてくるっていう見た目を想像しますが、私は、最初に話したかもしれないですけど、

「あそび」そのものと「モンスター」が実は同じ定義であると考えています。あそびって言い方を変えればモンスターだし、逆もまた然り。

モンスターは仮想敵で、それは色んなスケールで存在するっていう話もしましたけども、

ゾンビとかっていうのはかなり大きなスケールで分かりやすくしてあります。

さっき鉛筆を例に、気付かないくらいの小さな敵対っていうのがあったように、そういうものがゲームの中に、

例えば落とし穴や単に壁といった障害として存在しています。更に言えばデザインそのものも。

色彩やUIとかも、「なんでこの形が正しいのか」ってあまり理論的には話されないじゃないですか。

黄金比がどうして美しいのか、とか、感覚では話されますけど。私はそこにも敵対というものが潜んでると思うんです。

 

村上 例えば?

 

杉山 黄金比ってフィボナッチ数列であり、自然の存在です。

やっぱり自然のものが刺激としてそれまで人類以前ずっと身の回りにあったわけですよ。

で、色んなものに関係を持ってきたと思うんですよね。その中にはもちろん敵対があると思うし、

それが蓄積された結果、黄金比っていうもの自体にある一定の刺激を得るようにDNAにプログラムされている、結果的に。

それが敵対の解放を交えているんです。

 

村上 敵対の解放を交えている???

 

杉山 そうです。黄金比そのものがDNAに組み込まれて、感じられないかもしれませんが、

黄金比でできているものを見た瞬間に何らかの解放を得るんです。

 

村上 生理的に美しいと感じるっていうのもあるけど、それそのものが解放を表してる?

 

杉山 そうです。「美しい」っていうものも謎ですけど、何かしらの原理で美しいというものがありますよね。

 

村上 美しいっていう言葉自体が主観だからね。定義のしようがない。

 

杉山 でも答えはあるじゃないですか。美しさの理由というのは。自然から生まれたものだという履歴があると思いますし。

だから逆算的に敵対の解放ともいえます。

これがすごく自然な動物の安心とか喜びのプロセスだから、それに関係するという考え方をすることが自然だと、私は個人的に考えています。

で、UIとか色彩においても同じで、この美しい色彩というのが敵対を含めていると。

で、その刺激の割合、抑圧の解放をもたらすプロセスもそれ自体があそびでありモンスターであると考えています。

 

村上 ゲーム自体が障害物だらけで構成されていて、解放に向かって進んでいくものであって、障害が大きければ大きいほど楽しくなる。

解放のために敵を好んでいくっていう心理的作用があるよね。

 

杉山 そうですね。私たち動物にとって攻撃は元来健全なものであると考えます。

だからゲームっていうのは、動物、特に人間にとっては必要なものと考えます。

 

村上 勉強に置き換えると、問題文そのものが敵であって、解いた先にある称賛であったり承認であったりっていうフィードバックが解放にあたるということね。

 

杉山 もっというと、敵対自体が解放である、ていう考え方もできると思います。

その問題に答えなくてはならないという状況に突き当たる刺激自体が、実は嬉しいことみたいな。で、勿論それを打破することも別の解放であると。

 

村上 現実世界だったら、問題を解決することによってそれが経験値になって、

もっと難しい問題に挑戦したくなったり自分の中の向上心を刺激するだろうし、

これがゲームだったら単純に与えられた次のステージで遊べるようになるという付加価値がついてくる。

敵を倒すということ自体が成長につながるというところがまず単純に大きい。

次は「なんで人は成長したがるんだろうか」っていう問題につながっていくんだろうけど。

解放の先にあるものが何なのか、ていうね。

 

杉山 成長というのは、私の考えとしては結果的なものだと思います。

無心に敵対を解放することで結果的に成長したという記憶があったら、それを学習して成長が目的になるんだと思います。

でも、敵対を目的にするっていうことはできないと思うんですよ。倫理的な観点からいくと。禁止されてますよね、危ないですから。

でもこれが人間をゲームに至らしめたものの一つだと考えます。

 

村上 抑圧されたから仮想のものに移ったっていう最初の話ね。

 

杉山 そうです。敵対自体を目的にできないんです。だから、成長を目的にして敵対する。

 

村上 でもゲームの中でいうと、ジャンルは違えど「敵が出てきてやっつける」という行為自体に喜びを感じてるだけで、

成長したいから敵と戦うっていう気持ちの人って実は少ないと思う。Aボタンを押したら剣を振りました。すると敵は倒れました。

この時の効果音やエフェクトやUIデザインなんかが複合的に演出されて喜びを増幅させるのであって、これがプレイヤーにとっての小目的になる。

それが蓄積されて次のステージへ行きたいという中目的が表れて、この小と中の快感のサイクルが最終的にゲームクリアという大目的へ向かっていく。

プレイヤーはこのサイクルを楽しんでるわけであって大目的へ行くことは意識してない。

結果的には行ってしまうけどね。

だからどちらが目的かというよりも、ゲーム的な発想からいうと、敵対と解放のサイクルそのものを人は楽しんでるともいえるんじゃないかな。

勉強でも小テストの先に中間テストや期末テストがあるのであって、最初から期末テストを目的に頑張る子供なんていないわけで。

日々の学びを楽しんだ結果として期末テストを迎える。

 

杉山 そのサイクルの仕組みが理解出来たら子供にとっても勉強が楽しくなるんでしょうけどね。

人間個人個人がもってる条件に勉強っていうものが提示する抑圧と解放のサイクルが当てはまった人っていうのが「勉強のできる人」になるんだと思います。

公式を覚えたとか年号をたくさん暗記したとか、そういうことではなく。

 

~インタビューの終わりに際してメッセージ~

 

杉山 あと、子供の頃から禁止されてきましたけど、敵対を観察してみて、

敵対自体を目的にするっていうことを心の中で少しやってみたら幸せになれるかもしれません。

敵対をネガティブに捉えるのではなく、攻撃は元来健全なものであるっていうことです。

そして抑圧は楽しみを生む条件であるともいえます。

抑圧もゲームのいち要素。ゲーム以前の抑圧もまたゲーム要素だと思います。つまり、人にストレスを与える要素や自身の限界などです。

これが切っ掛けで解放の方法を考えた結果ゲームというものが生まれたとも考えられますね。

と考えると抑圧というものはとても尊いものであるといえます。悲劇ですね、ふふ(微笑)。

 

村上 なるほど。抑圧というネガティブな響きを含むものも、こうして視点を変えてゲーム的発想に置き換えることでポジティブに捉えられるね。

「ゲームだから敵が出てきて当たり前」とかそういう考え方ではなくて、なんでそいつがいるのか、とか、それによって何を感じるのか、

ということを考えて日々生きると色んなものが面白く見えてくるんじゃないかな。

それによって現実世界っていうゲームがより魅力的で楽しいものになると思う。

というわけで、今回は「敵」というテーマで話をしてみました。

同じテーマでも違う人と話すとまた全く違う展開が楽しめそうなお題でした。ありがとうございました。

 

杉山 はい、今日はありがとうございました。

 

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2019年5月8日  インタビュー

ゼミ通ヒーローズ Vol.07

ゼミ通ロゴ

 

 

ゼミ通ヒーローズ Vol.07

五十嵐智哉とアクションゲームにおける自己表現について語るの巻

 

今回のゼミ通ヒーローズは村上ゼミ4年生の五十嵐智哉さんをピックアップ。

インディーズゲーム全盛期のこの時代に、学生でありながらハイエンドなメジャー路線のゲームを作り続ける彼の創作の神髄について触れていきます。

たまにはマニアックな話をしても良いかと思って専門用語満載のオタク談義になっているので、

よほどゲームや映像に興味がない人は別に読まなくてもいいです(笑)!

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ハッカソンの現場でゲームのプログラミングを行なう五十嵐さん。

 

 

村上 今回はちょっとマニアックなゲームの話を掘り下げてみようと思ってるんだけど、まず五十嵐の一番好きなゲームって何?

 

五十嵐 「聖剣伝説」とか「スターオーシャン」「テイルズ」シリーズみたいな、アクション要素の入ったRPG(ロール・プレイング・ゲーム)が好みです。

もちろんストーリーも好きなんですけど、それ以上にそのゲームの世界に入り浸れる時間が好きで。

RPGって、装備を買い集めたりして拠点にずっと留まることもできるじゃないですか。

でもアクションゲームって次から次へと通り過ぎていくので、

やっぱり自分のリズムで自由に遊べるものが好きなんだと思いますね。

 

村上 最近はその辺の要素が融合してるゲームが多いよね。「スーパーマリオ・オデッセイ」だと、アクションゲームでありながら、

まず拠点があって世界各地を旅してスターを持ち帰って拠点をカスタマイズするとか。

 

五十嵐 リソースを管理して自分のオリジナリティを出すっていう所に魅力を感じてた気もしますね。そもそもアクションRPGが好きな理由が、

プレイヤーによって遊びの表現幅が変わるというところなんです。

RPGでも装備品やステータスの振り分けによってキャラクターを自由に変えられるので人によって遊び方が変わりますけど。

この表現の幅を、RPGとアクションを組み合わせると更に大きな幅になるなと思って。

 

村上 表現幅というと、ゲームを能動的にする要素として「自己表現」というのがあるよね。

例えば「ストリートファイター」みたいな格闘ゲームで遊んでるときに、小パンチを連打して勝つという方法もあるけど、

やっぱりケンを使うなら昇龍拳でフィニッシュを決めたい。

別にそうしろと命令されてるわけでもないんだけど必殺技で敵を倒したいっていうユーザーストーリーがあるよね。

 

五十嵐 実際に自分もそういう体験があります。

「エルソード」というネットゲームがあって、その中に「カウンター」っていう技があるんですよ。これは使うのが物凄く難しくて、

誰も使ってないようなものだったんですけど、うまく使えるとかなりカッコ良かったんですね。

ネットゲームなので主人公のエルスっていうキャラクターはたくさんいるんですけど、カウンターを使うエルスは誰もいないんです。

その中で僕はカウンターを使いまくって、その動画を配信したらそれが物凄く伸びて、チャンネル登録者数も増えたという時期があったんですけど、

そういったこともあって「自己表現」ができるってことがゲームで遊ぶ上でも作る上でもとても大事だと思ってます。

 

村上 アクションってビジュアル的にも特に分かりやすいもんね。

 

五十嵐 プレイスタイルも分かるし、何ならプレイヤーの性格まで見えてきますからね。

 

村上 アクションゲームって同時多発的に色んなことが起こるから、皆が同じプレイの仕方をしていてもバタフライ効果でどこかで差が生まれてくるし、

ただでさえその違いを見るだけでも面白いのに、一人の敵に対しても何通りもの倒し方が設計されてて、

特にオープンワールドのゲームなんかだとその違いを見つけるのが醍醐味みたいになってるよね。

君はそんなアクションゲームを実際に作ってるわけだけど、今度は作り手としての話を聞いていこうかな。

 

 

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イラストバトルイベント「MINUTE」の企画会議中の五十嵐さん(左)。

 

 

五十嵐 去年はUNITYを使って「ロプテトラント」というゲームを作りました。

 

村上 3Dのアクションゲームだったね。UNITYは大学の授業で習得した?

 

五十嵐 授業で習うのは2Dのみだったんですけど、今回どうしても3Dのアクションゲームが作りたかったので、3Dの処理に関しては独学で覚えました。

これに伴って、3dsMax3DCGを制作するツール)も今回の為に覚えました。CG制作の授業を履修してなかったので、結局これも独学で。

 

村上 なんでそんな面倒なことしようと思ったの?(笑)

 

五十嵐 ただ単に誰もやってないことをやりたかったんです。

さっきも出た「自己表現」の一つですね。

ゲームゼミの中で、3Dのゲームでしかもアクションゲームなんて面倒臭いものをなんで作るんだ!?て周りの人に言わせたかったんです。

 

村上 ストイックやな…。承認欲求が強い?

 

五十嵐 強いと思うんですけど…でもそれ以前に天邪鬼なところが大きいんだと思います。

「無理だ」って言われるとやりたくなりますね。

そこが創作の面白さかな、と考えてますし、面白いことをすると人も喜んでくれるんですよね。

 

村上 なるほど。では、そのゲームの内容を教えてくれる?

 

五十嵐 これは3Dアクションゲームなんですけど、やっぱり「エルソード」のカウンターが自分のルーツの一つにあるので、

これくらい難しいんだけど挑戦したくなる技を組み込むというのをやりました。

最近でいうと「ニーア・オートマタ」みたいにジャストで回避すると派手な演出があるとか、そういう要素を入れました。

昔のゲームにはそういうのってなかったと思うんです。

 

村上 回避とかガードといった動作を使って更にゲームを面白くするのって、今では主流になってるね。

 

五十嵐 はい。私が知る限り最初に出たのは「ファンタシースター」の中にある「ジャスト攻撃」ではないかと思っています。

逆に「ジャスト回避」の最初は恐らく「ベヨネッタ」ではないかと思うんですけど…どうでしょうか。

でもその辺りからアクションゲームの中では爆発的に流行った気がします。

それまでも「回避」はあるにはあったんですけど、どのタイミングで回避しても演出が同じでしたしね。

 

村上 アクションゲームというと「攻撃」に重きを置く傾向があってプレイヤーもそこにしか注目しなかったけど、

「回避」っていうつまらない動作に別の要素を入れて更に面白くするっていう発想だよね。

 

五十嵐 これって実は最近ではなく「インベーダー」の頃からあったんじゃないかと思います。

あのゲームは敵がどんどんプレイヤー側に迫ってきて危ない状況になっていくじゃないですか。

でもある一定の場所まで下りてくると逆に無敵ゾーンみたいなものが出来るらしいんですよ。

そういうリスクが極限まで高まると最高のリターンが得られるっていう仕組み自体がこの頃からあったんじゃないかと思います。

 

村上 なるほどね。当時の話だから、意図して組み込まれた仕様なのか単なるバグなのか、そこは定かではないね。

昨今のゲームだと、極限まで行くと最大のリターンが、ていうのはどれも当たり前のように入ってるね。

 

五十嵐 実は「ロプテトラント」には「回避」と「カウンター」の両方が盛り込まれてるんです。

「回避」の方が使いやすくて、いつでも発動できるものなんですけど、これを今までだと「ジャスト回避」にすることでバランスをとっていたんですね。

でも表現の幅という意味でいうと、少し練習したら結局みんなできるようになってしまうんですよ。

で、ここから更に表現の幅を生み出すなら、更に難しい仕掛けを用意してやろうかなと思って「カウンター」を入れました。

 

 

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五十嵐さんの作品「ロプテトラント」

 

 

村上 今だと超大作化がどんどん進んでいて、アクションの中にもそれなりのオマケがないといけない。

最近だと分かりやすいのは「FINAL FANTASY XV」。

戦闘システムにはかなり複雑な要素がこれでもかと盛り込まれてるんだけど、やりようによっては、

ただただ闇雲に斬るだけでも頑張れば勝てる。

さっきのストリートファイターで小パンチ連打で勝つような感じだね。

でもそれじゃ気持ち良くないしつまらないからジャストで何かをするとか、それに伴ってリターンも大きくなるという付加価値が積み重なっていって、

うまくなればなるほど遊びがどんどん深まって面白くなっていく。

初心者もコアなゲーマーも皆が平等に楽しめるように表現の幅が盛り込まれてる。

 

五十嵐 プレイヤーが付加価値を作るって言いましたけど、プレイヤーがクリエイティブなことができるっていう点がすごく面白いなと思います。

現実社会だと、みんな何かを表現したくてもそれができない環境にあるような気がしたんです。

そういった社会に抑圧されたものを表に出していいんじゃないかと常に思ってるので、能動的な何かを仕掛けるというのはいつも考えてます。

ゲームにはそういうアンチテーゼとか風刺の要素ってどこかに入ってると思いますね。

 

村上 ゲームの形にする時点で何らかの風刺やメッセージは含まれると思う。何かを訴えたいからモノを創るわけで。

 

五十嵐 特にゲームって「見る」だけじゃなくて「体験」して初めて伝わるものだから、制作者の意図はダイレクトに伝わりやすいですよね。

 

村上 テーマ性以前に、特にアクションゲームを作る時って、間とかリズムの調整が物凄く大事で、これがゲームの面白さを左右する全ての要素だと言ってもいい。

 

五十嵐 そこは重要視しますね。学生作品にありがちな「攻撃しても何の隙も生まれない」とか

「いつの間にか敵を倒してた」「理由はわからないけどゲームオーバーになってた」というようなザツなゲームにはしたくなくて。

 

村上 そういうのって、単純作業であってゲームじゃないもんね。

 

五十嵐 はい。単にボタンを押してるだけですからね。間とリズムを考えることによって初めて体験というものが生まれてくるので、これは本当に重要ですね。

実際にその調整にはかなりの時間を費やしました。

 

村上 どうやって調整した?

 

五十嵐 まずは自分の感覚を信じてっていうこともありますけど、「回避」っていうアクションに対してはこれくらいの隙が必要だとか、

カウンターに対してはこれくらいの見返りが必要だとか、これは自分の経験則によるものなんですけど、リスクとリターンの釣り合いをとるように意識しましたね。

 

村上 レベルデザインはどうしてる?

 

五十嵐 えーと、結構コアな話しちゃっていいですか?(笑)

 

村上 もちろん。今回オタク枠だから(笑)

 

五十嵐 今回は、攻撃して仰け反る敵と仰け反らない敵の二種類を用意しました。なぜかというと、まず仰け反る敵が相手だと攻撃ボタンを押せば絶対に勝てるんですよ。

相手は延々仰け反るわけですから。でもそこで敵の数を増やすことによって、他の敵も攻撃を仕掛けてくるから必然的にそれを避ける「間」が生まれるんです。

攻撃の隙があるので。まずここで敵の数を調整しました。逆に一人だけ仰け反らない敵がいるとしたら、プレイヤーはこの敵に振り回され続けることになるので、

他の敵が仰け反る敵でもアクションとして活きてくるわけですよ。こういったことを何度もシミュレーションしながらレベルデザインを調整していきました。あとはその敵の配置ですね。

 

村上 これは半年で作った体験版だったので敵は二種類だけだったけど、もし製品としてリリースされるのであれば、敵は何十種類と出てきて、

飛び道具を撃ってくるやつがいたり、通常の武器では倒せないやつがいたり、そこでもまたレベルデザインは変わってくるよね。

 

五十嵐 もちろん、そうなりますね。

 

村上 改めてスーパーマリオなんかを見てると、本当に上手く作ってるなって思うよね。こいつは踏める敵で、次にカメ。

カメは甲羅が固いから踏むだけではダメ。

ここらで遊び方や敵の特性を学習して、慣れてきたころに羽の生えたカメが出てきたりね。

飛んで敵を踏むのが楽しいゲームなんだと思わせておいて、今度はトゲが生えてて踏むことが許されないやつが登場する。

一旦慣れたアクションに対してその逆をいく敵がどんどん出てくる。

このレベルデザインが秀逸すぎて、もう30年以上も前のゲームなのに、

全ての面白さがここで完結してしまってるような感じがする。

 

五十嵐 ストーリーや世界観を考えるよりも、レベルデザインを考えてる時が一番楽しいですね。

そのアクションを通してプレイヤーにどんな驚きを提供するかが決まってくるわけですから。

私が常に拘っている「プレイヤーは表現者であってほしい」が中心にあるので、レベルデザインを考えることは必然なのかなと思いますね。

ただ、王道路線のゲームにプレイヤーが慣れてしまったので、あえて逆に従来のレベルデザインの常識を覆す

UNDERTALE」なんていうインディーズゲームも出てきましたね。ゲームそのものを皮肉交じりにメタ的に表現したタイトルなんですけど。

ボスキャラが、バトル開始と同時に一番強い技をバンバン放ってきたりするんです。

その時のセリフが「なぜ誰も最初に一番強い技を使わないのか疑問だ」ていうのがあって、

そこに踏み込んできたってことは他のクリエーターも王道ゲームに飽きを感じてたのかも知れないですね。

 

村上 ゲームのアイデアが枯渇してきてるから視点を変えてメタ的な表現も含めていかにプレイヤーを裏切るかが問われてきてるね。

そんな状況下でできることって何?てなった時に、「風ノ旅ビト」や「GRIS」みたいなアーティスティックなインディーズタイトルが流行ってくるんだと思う。

 

五十嵐 今のインディーズ人気はすごいですよね。ゲーム人口も増えましたしね。

 

村上 UNITYが基本無料ということもあって、ゲーム開発に対する間口が一気に広がったっていうのも大きいね。

イラストの世界にSAIClipStudioが登場したことでデジタル作画の敷居が下がってイラストレーター人口が増えたのも同じで。

制作費100億円を投じてメジャーのAAAタイトルを作るのは個人作家には無理ってことで、

低予算で独自性の高い演出が可能なインディーズに流れていくんだと思う。

でもそんな中で五十嵐は更にその裏をかいて学生でありながらメジャー志向のゲームを作ったね。

真正面から斬り込んできた印象があるね。

 

五十嵐 はい、まさに私の天邪鬼の一面によるもので、意図的にそうしてます。

 

村上 今度は、アクションゲームを作る上で外せないのがエフェクト(特殊効果)ね。実際に現場で作っててもかなり楽しい作業の一つなんだけど、

学生のうちってゲーム用のエフェクトを作る授業がないからこの面白さが分かる人が少ないのが残念。

 

五十嵐 今回はマテリアルとシェーダーを買ってきて、それらを組み合わせてパラメータを調整して独自のエフェクトを作りました。

 

村上 ゲームの中でエフェクトがもたらす効果ってどんなものがあると思う?

 

五十嵐 ゲームの良いところって、コンシューマゲームでいうとコントローラーがあるところ。

その時に、今回私が作ったゲームだと回避のアクションがあるんですけど、画面効果が「スロー」と「エフェクト」を合わせた時だけ手応えが変わるんですよね。

攻撃をヒットさせたときに弾けるエフェクトがあるから快感が得られるし、カウンターの時にも弾く快感が得られるし。

そこから追撃した際の打撃感とか、単純にアクションが派手に見える上にプレイヤーが強くなったように感じられます。

「ロプテトラント」では様々なエフェクトを駆使して、ゲームの爽快感や達成感を表現した。

 

 

村上 そういうものって現実世界には存在しないし、実写映画でも格闘シーンでエフェクトなんか出てこない。

鉄製の武器が重なった時に火花が散ったり殴られた顔のアップで汗が飛び散ったりっていうのはあるけど。

ゲームの場合はあり得ないような魔法効果とか自然現象までもがリアルに感じられるよね。

 

五十嵐 不思議ですよね、その感覚。でも子供の頃ってよくやりますよね。

格闘の真似事をしていて、殴るとき「ビシッ!」て声出したり。

何か見えないものが見えてるんじゃないかって思いますよね。

 

村上 イメージの補完を楽しんでるんだろうね。おっさんたちは「ドット絵のゲームの方が面白いと感じてた」とノスタルジーに浸るけど、

情報が少ないから自分の想像で補完して勝手に面白いと思い込む。その前に日本は漫画文化だから記号化されたものを自然に受け入れるのかも知れないね。

 

五十嵐 ダメージマークを記号として見てたりしますよね。どんよりした時には顔に縦線が入ったり。

海外のゲームだと、エフェクトはある程度ありますけどフォトリアルな方向なので日本のゲームほど派手じゃないですよね。

人を殴ってもエフェクトなんか出ないですし。水たまりの上を歩いた時に波紋が広がったりしますけど、

あれも状況描写をリアルに表現するためのものであってイメージ補完の目的ではないですね。

 

村上 日本のゲームってデフォルメされたキャラクターが多いから、派手なものは派手に、ていう記号の集合体なんだね。

この間Switchのスマブラ(大乱闘スマッシュブラザーズ)をやったけど、エフェクトが派手すぎて自分がどこにいるか分からず全くついていけなかった。

これが分かる若いプレイヤーってすごいなって思ったね…。

 

五十嵐 あれは正直やりすぎだと思います(笑)。

 

村上 あとアクションゲームを語る上で重要なのが描画フレーム。映像系の人だと24フレームとか29.97フレームの映像に馴染みがあるけど、

ゲームって基本が60fps1秒間に60枚の絵を再生しているという意味)。

 

五十嵐 ハイエンド系だと30フレームが主流になってますけど、これは映画のルックに近づける目的ですね。

 

村上 まあ、ポリゴンを使ったゲームだから30フレームで成立してるだけで、2Dゲームなら60じゃないと動きがガックガクになって単なる処理落ちにしか見えない。

昔「バーチャファイター」の1作目が30フレームで登場して、この時でも結構なインパクトがあったのに、2作目が60フレームになって、

あの滑らかな動きを見たときの衝撃と興奮は今でも忘れられない。

でもPlayStation3が出てまた30フレームに戻って、より映画的な動きにしていく方向になったけど、

解像度が上がってビジュアルも緻密でフォトリアルになった分、さほど違和感もなく受け入れられたね。

 

五十嵐 フレームレートを落としてもじゅうぶん綺麗に見えますからね。

モーションブラー(映像の残像処理)をかけてより実写映像的に見せるものも増えてきましたし。

60フレームだと元が滑らか過ぎてブラーの効果があまり出ないんですよね。

 

村上 PlayStation2くらいのハードスペックというか描画ポリゴン数だと60フレームにした方が見栄えがするね。

 

五十嵐 PlayStation4の緻密さで60フレーム描画されたら画面酔いしそうですね。

メインストリームとしてはそこは反比例していってる感じがします。

でもアクションゲームとしてレスポンスを重視しようとしたら60フレームの方が良いわけですよね。

ゲームにもよりますけど。で、そこが30に戻ってるってことは、

「見せる」ことを重視していて「遊ぶ」ことから離れていってるともいえるわけですよね。

 

村上 さすがに「ストリートファイターV」みたいな格闘ゲームは60フレームを維持してるね。60分の1秒の間合いで技を出し合うわけだから。

フレームレートが落ちた時点でゲーム性が損なわれてしまう。

 

五十嵐 フレームの話とはまた変わるんですけど、3Dゲームを初めて作るときって、ジャンプの処理で苦戦しますね。

2DXY軸に加えてZ軸が増えるので、物理演算を考えるとその処理も複雑になっていくんですよね。

2Dの頃は簡単だったんですけど、3D対応に慣れていないと変な方向に物凄く高くジャンプしてしまったりとか、制御が面倒臭いんですよね。

ゲームデザイナーとしては、ここを辛抱強く乗り越えられるかどうかが問われてきますね。

アセットを作ることがまず大変なので、よほど好きじゃないとキツいです。

 

村上 でも五十嵐はそれを独学だけでやってのけたわけで。

 

五十嵐 周りを見ていて「3Dアクションって難しいから頓挫しそうだよね」ていう雰囲気とか、

「学生だからこれぐらい」という無意識の抑圧があって、勝手に天井を作ってる気がしたので、まずそれをブチ破りたかったんですよね。

後輩たちもこれを見たら「なんだ、できるんだ」って思ってくれると思ったんです。

これに挑戦してくれたらゲームゼミのポリシーである「必ず先輩を越える」っていう目標が明確になるかなと。単純に希望が持てますよね。

 

村上 ゲームを面白くする要素に「達成可能な目標設定」とか「アンロック」があって、要は「今はここまでしか進めません。

でもあることを習得すると鍵が開いて次へ進めます」ていうのがあるけど、まさにそれを後輩に示してくれてるわけね。

 

五十嵐 はい、そこは意識して頑張ってみました。実際ゲーム作りって、それそのものが一番楽しいゲームだと思ってます。

 

村上 前回のゼミ通ヒーローズでも門瀬がハッカソンについて全く同じこと言ってたな(笑)。

 

五十嵐 まぁ、それ言い出したらこの世界にあるものは全部ゲームですけどね。

 

村上 人生がゲームだからね。文字通り死んだらゲームオーバーになるけど。

でもゲームにはGOOD ENDBAD ENDがあって、ゲームっていう作られたハコの中だとBAD ENDは本当にBAD

ゲームオーバー画面が出てタイトル画面へ遷移するだけ。

だけど人生の中でBAD ENDを迎えた時って、視点を変えるとそれは起死回生のチャンスだったり、

悔しさをバネにしてもっと努力しようとしたり。

だから人生にはBAD ENDって存在しないと思ってる。見方を変えると全てがゲームになって、

このあそびの力で社会をどこまで面白くできるかっていうのが大きな課題だと思う。

アクションゲームを作ってる人って、そのことを意識はしていなくても自然に理解できてると思うんだよね。

 

五十嵐 人生はゲームなんですけど、一つだけ間違いなく言えることは、「面白い」と「命」は等価値だってことですね。

面白いを生み出すことは命を生み出すのと同じくらい大事なことだし。人生を楽しめるってことは生きる理由そのものだと思うんですよね。

ゲームのいいところって結果が分からないところ。結果のあるものを作っても仕方がないからゲームを作るんだっていう気持ちがあります。

 

村上 まさにプレイヤーを表現者にするゲームね。じゃあ、表現者にさせるためのゲームデザインとは?

 

五十嵐 挑戦したくなる仕組みがあるってことですかね。

 

村上 じゃあ、挑戦したくなる仕組みとは?

 

五十嵐 無駄を愛せるかどうかですね。合理性ありきじゃなくて、人の生き方もそんなところがあって、無駄なく最短ルートで効率良く生きて、

果たしてそれは面白い人生なのかって思うわけですよ。紆余曲折全部ひっくるめて、合理的な観点からいえばそれらはすべて無駄なものになるわけですけど、

でもそれを愛してるから人生が面白いんだと思うんですよ。

 

村上 自分も昔から「遠回りこそ最大の近道だ」って思ってるから、それはよく分かる。

回り道すればするほどネタが蓄積されて、それが集まって次の作品作りに活かされるわけで。

人生で起こることは全てネタなので無駄に見えて無駄なものは何一つない。

 

五十嵐 ていうかゲームそのものが本来無駄なものなので(笑)。

 

村上 その無駄なものを止められなくなるくらい楽しいと感じてプレイヤーを長時間拘束するってすごいエネルギーを要する仕事だよね。

 

五十嵐 「ロプテトラント」だと「カウンター」がまさにそれに当たる部分なんですよね。

ぶっちゃけ「回避」だけでもゲームとしては成立しますから。

でも、自分を表現する自己承認のためにもあえてカウンターを使うっていう精神が無駄を愛するゲームデザインってことになるんだと思います。

 

村上 ゲームはなぜ夢中になるかっていうと、見返りがないから。無償の愛に対して夢中になれる。

 

五十嵐 歴史学者のホイジンガが提唱したホモ・ルーデンスの中で遊びの概念として同じこと言ってましたね。

 

村上 そうそう。報酬がもらえるよりも精神を満たすっていうことが生きる上で優遇されてるよね。だから人はゲームに夢中になる。

 

五十嵐 大昔ですけど、フリードリヒ2世が、何の言葉も与えないで育てた子供はどんな言葉を発するのか、ていう実験をしたらしいんですよ。

一切会話もしないし愛も与えない。ていうやり方で赤ん坊50人を一斉に実験に使ったんです。

すると、ちゃんと栄養を与えてるのに赤ん坊が全員死んだらしいんです。

これって結局「面白くない」から死んだんじゃないかって考えたんですけど、どうなんでしょうね。

さっき「生きる=面白い」って言いましたけど、「愛=面白い」とも考えられるかなと。

 

村上 ゲームって、ジャンルによって様々だけど、何らかの欲求を満たすものでしょ。

衣食住みたいに物理的に必要なものじゃなくて、精神を満たすものがないと人って崩壊するんだと思う。

 

五十嵐 無音室に監禁された人間が発狂するみたいな感じですね。

 

村上 大人になるとそれまで生きてきたノウハウから、精神を満たす何らかの方法を考えるけど、

赤ん坊って泣く以外に発散できないから、自己表現としての死なのかなっていう気もするね。愛なくしては生きられないっていう。

 

五十嵐 ゲームでいうところの愛は「面白さ」。

そう考えると、人は無駄を愛するっていうのも頷けるんですよね。

 

村上 要するに無駄じゃないってことだね。

 

五十嵐 社会にとっては無駄だけど、人としては必要なもの、ていうことですよね。

 

村上 ゲームっていう響きが生む誤解もあるんだろうね。

勉強以上に夢中になっちゃうから教育者から敵視されて当然だし。

それでもアクションゲームを作ってる人がゲーミフィケーションを本気で考えたらすごい事が起きるんじゃないかって思うね。

60フレームの間で同時多発的に色んなことが起きて、そこまで計算してプレイヤーの感情曲線をデザインするアクションゲームのデザイナーだったら、

世の中で起こるありとあらゆる問題に立ち向かうだけの力を発揮できるんじゃないかと思うんだよね。

 

五十嵐 その通りだと思います。アクションゲームは人を幸せにすると思ってますよ。だから私は好きなのかも知れないですけど。

 

村上 数年前に「ゼルダの伝説スカイウォードソード」っていうwiiのゲームをやっていて、横で幼稚園の娘が見てたんだけど、

父親がwiiリモコンを振り回してる姿を見てたまらなくなったのか「やりたい!」って言いだしたのね。で、リモコンを貸したら、

敵を倒すでもなく謎を解くでもなく、ただ同じところをグルグル走り回るわけ。そのあと地面に植えてある大きなカボチャを見つけて、

それを持ち上げて近くにいたおばあちゃんの頭に投げつける。するとおばあちゃんが悲鳴を上げる、という一連の動作を見て延々ゲラゲラ笑ってるわけ。

正直時間が勿体ないからリモコン返せって思ったんだけどね…。

でも、自分がとったアクションに対しておばあちゃんの「悲鳴」という即時フィードバックがあって、

反応を示してくれたっていう喜びが次の行動を促すという流れを生んで、もっと難しいことをしてみようと試行錯誤を始めた。

この様子を見たときに、無駄の中から精神を豊かにする方法を自分で発見して、能動的に難しい課題を見つけようとしてるんだ、って思った。

こういう力をもっと社会で活かせたらなって思うよね。

 

五十嵐 そのへんの話、これから卒業制作を進めるにあたって復習したいのでまた授業覗きに行ってもいいっすか?

 

村上 別にいいけど、そもそもワケ分からんものをワケ分かる形にするのがゲームデザインだし、

授業を聞くよりもこれまでの経験を活かしてフィールドワークをした方が勉強になると思うよ。

任天堂の宮本茂さんがアスレチックランドで子供の動きを見て飛ぶことの喜びを見出してスーパーマリオを生み出したのと同じように。

例えば五十嵐が木漏れ日の中を散歩してたと仮定して、光の部分を歩いてるときの喜びと、影の部分を歩いてるときの喜びがあったとしようよ。

この差について何らかの発見をしたときに、この感覚をどうやって人に伝えるか。

どんなゲームデザインにしたらここで得た感覚を他人と共有できるのかを考えるのが大事。

でもそれを言葉で伝えちゃうと「説明」になるから、操作性だったり間合いだったり、ナラティブで体感させていくのが「表現」になる。

 

五十嵐 説明は極力排除して体感させたいですね。

任天堂のゲームなんかナラティブを追及してるから「やらされてる感」がないままちゃんと自己表現をさせてくれるからどのタイトルも面白いですよね。

 

村上 アクションゲームの話からあっちこっちへと無駄な話が展開されたけど、結局は全て「自己表現」という結論に至ったし、

無駄なものはないという伏線は一応回収されたかな。

というわけで、これまでの経験を活かしてこれから卒業制作を頑張って下さい。

では、ありがとうございました。

 

五十嵐 ありがとうございました。

 

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通学部13学科21コース、通信教育部4学科14コース、大学院、こども芸術大学。
世界に類を見ない3歳から93歳までが学ぶこの大学は、それぞれが溢れる才能を抱えた“プロダクション”のようなものです。

各“プロダクション”では日々何が起こっているのか。授業や取組みの様子、学生たちの作品集や人物紹介。
とどまることなく動き続ける京都造形芸術大学の“プロダクション”の数々。
そこに充満するエネルギーを日々このサイトで感じてください。