キャラクターデザイン学科

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2020年5月28日  学生紹介

ゼミ通ヒーローズVol.23 鈴木うららと「Happy Elements合同授業について語る」の巻

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ゼミ通ヒーローズ Vol.23
鈴木うららと「Happy Elements合同授業について語る」の巻

 

今回のゼミ通ヒーローズは、ゲームゼミ12期生の鈴木うららさんをピックアップ。
今年設立10周年を迎える京都のゲーム開発会社Happy Elementsさんとの合同授業「ゲーム制作特殊演習」での課題内容を振り返り、キャラクター制作の話を掘り下げていきます。

 

 

村上 鈴木は絵も描けてゲーム企画もできるハイブリッドキャラだよね。この学年のゲームゼミの学生はみんなそんな感じか。

 

鈴木 私、重度のコミ障だったんですけど、グループディスカッションとかプレゼンをこなしていくうちに段々企画も出来るようになってきましたね。

 

村上 絵を描き始めたのはいつ頃から?

 

鈴木 物心つく前には既に描いてたみたいです。『おえかきせんせい』っていう玩具で四六時中絵を描いていました。

 

村上 あの砂鉄で絵を描く昔ながらの定番玩具ね。プラレールとこれは避けては通れない(笑)。これで遊んでた時は、絵を描ける喜びよりも、バーをスライドさせると絵が消えるのが不思議で、その仕組みに感動してた。まだ砂鉄を知らない歳だったから。

で、鈴木が絵を描くのが好きだと自覚した時っていつ頃だった?

 

鈴木 一人で黙って絵を描き続けてたので、家で問題も起こさないし良い子だと思われてたんですよね。絵を描くと周りの人が褒めてくれるんですよ。それが嬉しくてたくさん描いてただけですね。数をこなせば絵も上達してまた褒められるんです。それでもっと絵が好きになっていきました。

 

村上 なるほど、では今回はそんな「絵」にまつわる話ということで、ゲーム開発会社のHappy Elementsさんとの合同授業「ゲーム制作特殊演習」の課題について聞いていこうかな。

 

鈴木 はい。今回の課題としては、先生から提示されたゲームの企画書をもとに、前期でコンセプトアートとキャラクターデザインをして、後期にUIデザインと画面設計、最終的にそれらをまとめて設定資料集を作る、ということをしてました。

 

 

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鈴木さんの課題作品。

 

村上 その課題の評価ポイントをどこに置くかでHappy Elementsさんのアートディレクターと結構議論をしたんだけど、一つの考え方としては、企業が求める王道路線であるという点。これはクォリティの話ではなく絵のタッチの方向性の話ね。二つ目の考え方として、大学生のうちにしか描けない独自の表現を追求してもらった方が良いのではないか、という点。それでいうと鈴木の絵は後者に該当する。画力の良し悪しではなくて、自分にしか描けない線をしっかり持ってるっていう点で。

 

鈴木 まあ、よく言われます。

 

村上 学生の特性にもよるし卒業後の希望進路にもよるんだけど、鈴木はとことん個性を伸ばしていった方が良いんじゃないかな。独自の線を持ってるのは強みになるし。でもプロになるとどんな仕事を受注するか分からないから、所謂流行というか業務的というか王道路線のタッチも描けるようになっておかないといけないよね。

 

鈴木 そう、両方描けるようになりたいんですよね。最強じゃないですか(笑)。なので今練習中です。

 

村上 どんな練習してるの?

 

鈴木 私の絵って基本的にデフォルメが強めなので、もっと写実的というかリアル頭身でも描けるように訓練したり、色んな商品との絵柄合わせをしたり。

 

村上 Happy Elementsさんでもそうなんだけど、『あんさんぶるスターズ!(以下あんスタ)』『メルクストーリア(以下メルスト)』『ラストピリオド(以下ラスピリ)』を例にすると分かりやすいかな。その中でも『あんスタ』は、まるで一人のイラストレーターが全部を描いたかのように完全に絵のタッチを統一しなきゃいけなくて、僅かなブレも絶対に許されないんだよね。商品として考えたらそれは当たり前なんだけど。

 

鈴木 『あんスタ』は、本当に驚きましたね。こんなに完璧に絵柄を一致させる仕事なんて自分にできるかなって。
私は初めてハマったのが『メルスト』なんですよ。ゲームとしてシステムが面白いし、もちろんストーリーや世界観も魅力的なんですけど、それ以上に絵には作家それぞれの個性が生かされてるじゃないですか。なのに絵柄にブレがない。これを見たときに「ゲームの世界で絵を描くのっていいな」って思ったんです。

 

村上 今回はそんな鈴木の大好きな『メルスト』のアートディレクターさんから直接絵の指導をしてもらったね。

 

鈴木 私、感動して大泣きしました(笑)。大ファンだったので。それは授業だから言わないつもりだったんですけど、でも最後の授業の日にご挨拶させていただいて、感極まっちゃって…。もう本当に好きなんですよ。5年間想い続けて。

 

村上 そんな大ファンの人から色々作品の講評をしていただいたわけだけど、どの辺を指摘された?

 

鈴木 まずですね、今回のこの企画には、タカシ君という名前の主人公キャラクターがいるんですけど、彼は小野篁の子孫で、妖怪を探して倒す力を持っているんです。夜な夜な妖怪退治をしてるんですけど、昼間は誰もが近寄り難い陰キャでして。
ヒロインはコマチという名前で、小野小町の子孫です。彼女はタカシ君のことが大好きでストーカーをしてるんですけど、タカシ君のサポート役として妖怪退治の手助けをするっていう展開になります。
コマチについてはもう完全に私の好きな女の子の設定を詰め込み過ぎてもうめちゃくちゃなんですけど(笑)。

 

村上 まあ鈴木に限らず、女の子キャラを描く時はなぜか皆暴走するから困ってるんだけどな…(苦笑)。鈴木の場合、線画が強くて、ゲームキャラクターというよりは漫画寄りなのかな。Happy Elementsさんと採点する時も、「これ、漫画だよね」って話になって、かなり評価が分かれた。

 

鈴木 あ、そうなんですね…。

 

村上 この絵を最初に見たときに、自分が子供の頃に一番影響を受けた漫画家で藤子不二雄とか鳥山明を思い出したんだよね。最低限の線で全て表現するあの画力。ああいうのが凄く好きだったんだけど、鈴木の絵を見たときに共通するものがあるなと思った。
昔サンデーで連載してた『YAIBA』の雰囲気にも似てるなと。あの『名探偵コナン』の青山剛昌が昔連載してた漫画なんだけど。線のタッチとかデフォルメの具合とか。しかもキャラクターを真っ黒に塗り潰してもちゃんとシルエットが際立ってるように工夫してるとかね。キャラ立たせる点では物凄くよく描けてると思う。

 

鈴木 ありがとうございます。私が影響を受けた、というかよく真似をして描いてたのは、小さい頃に見た『ケロロ軍曹』の吉崎観音さんと『ポケットモンスター』の真斗さんですね。すごく好きだったんですよ。

 

村上 なるほど。ルーツを聞いて納得した(笑)。でも自分のタッチを見つけて、その独自路線を貫いてるよね。

 

鈴木 趣味で描く分には、そこは変えようとは思わないですね。自分の絵が大好きなんで(笑)。あ、もちろん、まだまだだとは思ってますけど、でも、やっぱり好きなんですよね。

 

村上 好きっていうのは凄く大事なことだけどね。義務感で描かされてるのとはモチベーションが全く違うし。

 

鈴木 いつも自分の絵を見て「わ!かわいい!!」って言いながら描いてます。

 

村上 動きがあって、重心バランスもしっかりしていて、配色バランスも良いし、絵で惹きつけるだけの力はあると思う。アナログっぽい不安定さがたまらないね。

 

鈴木 それ、褒めてます?

 

村上 もちろん。こういう皺の表現みたいなこの潔いザクっとした描き方とか、線の略し方、Gペンで描いたような線の強弱の付け方とか。相当描き込んでないとこんな省略はできないよね。リアルを理解してるからこそ簡略化できてるんだと思う。

 

鈴木 塗りについては、グラデーションを入れたくらいで、あとは目立つ所だけ部分的に影を加えたりとか、それくらいの事しかやってないですよ。影だけロックかけてその中をグラデーションにして色変更っていう、物凄く速く終わる方法でやりました。制作時間としては6時間くらいですかね。

 

 

2

鈴木さんの作成したキャラクター紹介シート。

 

村上 出すところは出して引っ込めるところは引っ込めるデフォルメの基本がしっかりできてるから、短時間でやったように見えない。
キャラクターの絵はどういうプロセスで描いてる?

 

鈴木 単にタカシのデザインを私好みにしたんですよ。前髪が長めで、髪を括ってて、ちょっと顔がオラついてるみたいな。

 

村上 リアルには興味ないの?

 

鈴木 リアルには全然興味ないです(笑)。あとは、立ち方を考えるのが好きで、昼のタカシだったら、ちょっと猫背でダラッとしてて、肩も下がってるとか。陰キャがよくやるみたいに、手持ち無沙汰になって髪の毛をクルクル回すような仕草をさせたりとか。で、人の目が見られないから明後日の方向向いてるみたいな。

 

村上 …そういう人が好きなの…?

 

鈴木 はい(笑)。で、夜は、誰も見てないし自分の好きなことが出来るから堂々としていて、竹刀の構えもビシッとなってて、羽織も風を受けて少し広がることで力強さを出したり。特に足を描くのが好で、皺とか描き出したら楽しくて止まらなくなっちゃって(笑)。

 

村上 性別としては、男キャラの方が描きやすい?

 

鈴木 モノによります。でも、私の絵は男女の差があまりないので、変わらないですかね。。本当はちゃんと意識して差別化しなきゃいけないんですけど…。

 

村上 で、講評会の時の話に戻そうか。

 

鈴木 なんか、色使いのことを褒められましたね。

 

村上 キャラが立つキャッチーな色を使うのが得意だもんね。

 

鈴木 あ、色しか褒められてないかも(笑)。プロットを読んだ時に和風の世界観を意識しなきゃいけないと思ったんですけど、あまり表現できてないですね。

 

村上 設定は現代劇だからね。で、京都が舞台だからといって無理矢理なんでもかんでも和風にすればいいってもんでもないし。講評の時に他の学生が指摘されてたけど、和柄のモチーフと和のフォントがぶつかりあって画面がうるさくなったりとか、その部分の個性が強すぎてキャラクターが埋もれてるパターンが結構あったね。和と聞くとどうしても和柄をどこかに入れたくなってしまうんだろうけど。

 

鈴木 それやりすぎると色が暗くなるじゃないですか。落ち着いたトーンというか。私はそういうのが苦手なので、和柄はかなり抑えて組み込んでます。

 

村上 企業との合同授業という点について聞いていきたいんだけど、まずは一年終わってどうだった?

 

鈴木 やー、早かったですね。初回の授業の時に、Happy Elementsさんの社内での絵を描くプロセスを教えてもらえて、それが嬉しかったですね。『メルスト』のコンセプトアートがあったじゃないですか。世界観の作り方とか考え方とか、それをどう見せればどう伝わるのかとか、そういうことを実際に描いた本人から教えていただけて凄く価値がありました。あとは、さっきも言いましたけど、担当者が私が昔からファンだった人なので、嬉し過ぎて色々直接質問もさせていただけて、しかも授業が終わった後に長いこと立ち話で拘束しちゃって、なんというか、もう、本当に、すんませんっていう。

 

村上 プロならこうやって考えて描くんだよ、て話を聞かせてもらったけど、レクチャーの中で印象的だったことは?

 

鈴木 質疑応答でも結構話題に挙がってましたけど、どうしても学生のうちって好きなものばかりを描いてしまう傾向があって、「あなたが好きなものではなくて、皆が好きなものを描けるようにならなきゃいけないよ」って言われて。皆が好きなものって、女の子キャラなら、黒髪ロングのストレートっていうのが男性人気のキャラとして一定数ファンがいるらしくて、そういうターゲットをちゃんと考えて、幅広いファンがいる要素と、眼鏡がどうしようもなく好きとか、髪の長い男が好きとか、そんなコアな部分も意識しながらキャラクターを設計していくといいよってアドバイスをいただきました。

 

村上 当たり前だけど、趣味で描くわけじゃないからね。仕事ってのは。
それでいくと、鈴木の絵は上手なんだけど、良くも悪くも独自性が強すぎるんだよな。

 

鈴木 そうなんですよ。どうにかしなきゃって、分かってるんですよ(笑)。

 

村上 学生のうちは全然構わないよ。自分の世界を広げていって、どんどん独自の手法を開拓していってくれればね。この絵でキャラクターを自由自在に操作出来たら楽しいだろうなって思うし。そんな個性を伸ばす絵を描くこととは別に、プロとして働くことを考えると、クライアントのオーダーを100%全うする技術も習得しなきゃいけないよね。

 

鈴木 そういう訓練も最近始めました。絵柄合わせとか。

 

村上 ちなみに、鈴木が絵を描く時のモチベーションって何?

 

鈴木 まずは、自分の絵柄が好きってことですね。でも課題で描かなきゃいけないような義務感で描くときは、怒りのパワーに置き換えて描いてます。

 

村上 は?

 

鈴木 この期間でこれだけの絵を描いて下さい、て課題が提示されるじゃないですか。でもそれってめちゃくちゃ大変じゃないですか。そういうとき「あー、大変だー」じゃなくて、この制限の中で自分の納得するものが描けたらめっちゃ凄いじゃんってなるわけですよ。じゃあやってやるよ!って。今回のこの課題でも最終課題の時はかなり時間がなかったので、時間と戦う感じで制作してましたね。

 

村上 今回の冬休みは短かった上に課題が多くて、更には脱出ゲームの制作も同時進行だったから特に大変だったね。

 

鈴木 更に締め切り直前に成人式で帰省したり。なーんか忙しかったですね。

 

村上 でも、このインタビューも長いことやってるけど、「自分の絵が好き」っていう言葉は初めて出てきたな。もちろんみんな絵を描くのは好きなんだけど、やっぱり「必要だから」「コンセプトに合わせた」という理由が多くて、なんか業務的というか。逆に「自分の絵が好き」って言えるのは最高のモチベーションだと思う。ちなみにどういう所が好きなの?

 

鈴木 え?かわいいじゃないですか(笑)。

 

村上 素直か。

 

鈴木 色も好きだし、腕とか足とか、描いた後に見て「お、分かってるじゃん!」って自画自賛します。

 

村上 自画自賛ってものすごい大事。自分もよくバカみたいに毎日「俺天才」って言ってたし。

 

鈴木 私も同じです。自分にそう言い聞かせてるっていうか、暗示ですね。

 

村上 自己肯定感が低い人が多いってよく言われるけど、もしかしたら鈴木の場合はそんなネガティブの裏返しなのかもね。

 

鈴木 絵以外は物凄いネガティブですよ(笑)。

 

村上 普段ネガティブな分、絵にその反動が来てるのかな。天才って言いながら絵を描いてたら、そりゃ当然うまくなるよ。

 

 

3

ゲームゼミのウォーミングアップ課題となるペラいちの企画書。

 

鈴木 特にこれがお気に入りなんですよ。ゲーム制作特殊演習とはまた違うんですけど、ゲームゼミの最初の課題で、日本ゲーム大賞を想定した企画案です。これめっちゃかわいくないですか?

 

村上 うん。

 

鈴木 …なんかこれ、バカのインタビューみたいになってません?

 

村上 そんなことないよ。懐かしいなと思って。うちはイラストレーターも最初は全員ゲーム企画の基礎を仕込んでいくから、これは我ながら良いトレーニング課題になるなと自画自賛してた(笑)。それと、ゲーム研究をする上で自画自賛のメカニズムについて追及できたら面白いなと思って。

 

鈴木 あー、なるほど。私は、人を褒めたときに謙遜されるのがちょっと苦手です。調子に乗ればいいのにって思っちゃうんですよ。「絵うまいね」って言ったら「でしょー!」とか「私もそう思う!」て言ってほしいんですよね。その方が楽しいじゃないですか。

 

村上 君は入学当時から比べたら随分成長したなぁ。

 

鈴木 入学当時はそもそも人と話せなかったですからね(笑)。

 

村上 グループワークが多かったのもあるし、とにかく合評が多い学科だから、いつの間にか経験値が自信に変わっていったんだろうね。言霊っていうけど、自分で「天才」って言ってると暗示で本当に強くなれるからね。
ということで、今後も自画自賛を忘れず前向きに頑張っていって下さい。

 

鈴木 ありがとうございました。

 

 

Happy Elements公式サイト
https://www.happyelements.co.jp/

 

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2020年4月8日  学生紹介

ゼミ通ヒーローズvol.22 辻村奈菜子と「医療とメディアアートの連携について語るの巻」

 

 

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辻村奈菜子と「医療とメディアアートの連携に ついて語るの巻」

 

 

 

 

無題 (1)

脱出ゲーム制作中の辻村奈菜子さん(左)。

 

村上

定番の質問からなんだけど、まずはつじ子(辻村)がこの道を志した理由から聞かせてくれるかな。

 

辻村

最初は英語系の大学に入ろうと思ってたんですよ。英語が得意やったし、英語しゃべれたらカッコいいし、とか思って。でもやっぱ急に芸大に行きたいかも知れへんってなって、入試の一か月前くらいに突然路線変更したんですよ。
美術の先生が「辻村は美大に行った方がいい」と言ってくださって。で、行こうかな、でした。オープンキャンパスに行ってみたら全体的に楽しそうで、やっぱりキャラクターを描きたかったのでキャラデに決めました。

 

村上

芸大で何をしようと思ってた?まだゲームの道を究めようとか、そんなことは考えてなかったよね。

 

辻村

最初は単に絵を描くのが楽しいなー、くらいで。将来の目標も何も見えてなかったです。今も絵は描いてるんですけど、ゲームプランナーになりたいのかデザイナーになりたいのか、それも決めきれずにフラフラしてます。

 

村上

つじ子は一年生の頃から発想力が高くて、かなりぶっ飛んだアイデアを出す場面が多かったから、そこが印象的だった。授業中につじ子が発言すると「きっと何か面白いことを言うに違いない」って周りも注目するような場面が多かったよね。もしかしたら自分が考えてるつじ子像と周りのイメージとのギャップもあるのかも知れないけど。

 

辻村

元々絵を描くだけじゃなくて、なんか作るのが好きなんですよ。ゲームの領域やったら、絵を描くだけじゃなくて、プログラミングをするかも知れへんし、工作するかも知れへん。そんな感じでなんか幅広く色々出来そうかなって思って。

 

村上

そんなつじ子は、今回ゲームゼミと大阪市立大学医学部との共同研究でゲームを企画するプロジェクトを行なって、2月半ばには発表会もあったので、その時の話を聞いていこうかなと。
で、その前にまずはプロジェクトの概略のおさらいから。これはメディアアートと医療の連携として進めていた研究プロジェクト。通常業務や研修会等で医療従事者同士がもっと円滑なコミュニケーションをとることによって医療事故を無くすための実験をしてみようという話。それには説明をするんじゃなくて、メディアアート、所謂アニメーションやイラスト、漫画やゲームを使って、人の動きを変容させるための研究ができないか、という企画内容だったね。

 

 

 

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大阪市立大学医学部付属病院の研修室にて、カードゲーム「老害集会」のプレゼンをする辻村さん。

 

辻村

そうですね。で、今回は医療関係者同士のコミュニケーション、というか研修の場で職種や立場に関係なく色々意見が言いやすいようにするためのコミュニケーションゲームを作ることにしました。
そこで自分らが作ったゲームが「老害集会」で、自分たちが老害であることを再認識するゲームです。内容としてはほぼカルタです。読み札に描かれたイラストの老害になり切って読んで、そのセリフや演技に該当する絵札を奪い合う遊びになります。

 

村上

ではゲームの内容と併せて、制作プロセスについて話していこうか。

 

辻村

企画会議で行き詰ってる時に、チームの人と雑談みたいな感じで「グループワークが苦手な人って多いよな」って話になって、その時に会話がうまくいかない例を出しながら話してたら先生も色んな例を出してくれたんですよ。
昔、開発現場でディスカッションがうまくできないチームがあって、その理由が「自分の意見が正しいはずだから他人の意見は聞きたくない」っていう人がいたとかで、それ聞いて「そんなやつおるんすか!?それめっちゃ老害やないですか!」って。

 

村上

それって老害だよね。から、じゃあそもそも老害って一体何なの?て突っ込んだあたりからディスカッションが深まっていったよね。

 

辻村

最初は単純に「あなたはどんな老害かな?老害チェッカー!!」みたいなノリで話してたんですよね。でも老害かどうかをチェックするだけで終わってしまって、ゲームにもなってないし面白くもなんともないし。
そこで、見方を変えれば誰もが老害だよね、って話になって。自分が老害であることを認めさせるゲームって面白くない?って話になったんです。

 

村上

ここでいう「老害」は、老人のことを指すわけではないよね?

 

辻村

そうですね。例を挙げて話すうちに「それって若者にもおるよね」ってなったんですね。小学6年生の時にポケモンの新作が発表されて、その時自分で詳しく確認もしてないのに「新しいシステムとかいらんし!自分の世代のポケモンが一番良かったし!いらんいらん!」と感じてたことを思い出したんです。結局はどのポケモンも大好きになるんですけど、自分で見ようともせずに最初から否定するのって、めっちゃ老害やんな、ってなったんです。

 

村上

老害の定義って何?

 

辻村

人に迷惑をかけてることに気付かず、自分の考えが正しいと感じること、ですかね。要は自己中心的なやつってことですけど。

 

村上

マウントをとりたがるとか、反発したくなるとか、昔は良かったとか。こういう人種をひっくるめて老害だと。

 

 

 

無題3 (1)

テストプレイで使用した「老害集会」の試作品。

 

辻村

そういうことです。カードには色んな老害のパターンのイラストが描かれてるんですよ。「全部おまえのせい人間」「俺、老害ちゃうし人間」「クレーム人間」「マウント人間」とか。

 

村上

マウント人間って?

 

辻村

「あなたには分からないでしょうけど」って、相手のマウントを取りたがるタイプの人間です。

 

村上

なるほど。あと、これは分かりやすいね。「価値観押し付け人間」。

 

辻村

他にも「他人の意見否定人間」とか。「アドバイス人間」とか。

 

村上

え!?アドバイスもダメなの?

 

辻村

それ自体は別に良いんですけど、要は言い方ですかね。相手が嫌がってるのに気付かずに過剰なアドバイスをしてくる人ですね。

 

村上

ちなみに、自分は小岩先生(音楽プロデュースの教授)と帰る方向が同じだから、よく車で送っていくのね。で、毎回同じ所で「次、左ですよ」って言ってくるわけ。毎日通るから当然道知ってるんだけどね。だから、「左」って言われるであろう場所の30メートル前からウィンカーを出すようにしていて、そしたら次の日は40メートルくらい前に「はい次左ですよ」って言ってきて。

 

辻村

それわざとじゃないですか?(笑)

 

村上

そうなのかなぁ。でも何となく先に言われるのがシャクだから、次の日は50メートル前にウィンカーを出す。

 

辻村

ウィンカー出すの早すぎて周りの車が混乱しますよ。

 

村上

もちろん親切で言ってくれてるのは分かってるんだよ。ただ繰り返し言われるとね、なんというか、ほんの少し鬱陶しい(笑)。

 

辻村

それ単に先生が意地になってるだけやないですか。私から見たらどっちも老害ですよ(笑)。
じゃ例えば、好きでやってるのに「えぇ~?こっちの服の方が似合うのにぃぃ~!」みたいなことを毎回言ってくるとか。

 

村上

言ってる方はどんな気持ちなんだろう?

 

辻村

善意ですよ。「お前のため」っていう。

 

村上

感謝を強要するニュアンス?もしかしたら老害って全部そうなんじゃない?

 

辻村

もちろん全員それが自分にとって最良の事やと思ってやってると思うんですけどね。

 

村上

悪意を持ってる人はいないか。

 

辻村

そうですね、いないと思います。その人にとっては正義なので。

 

村上

「クレーム人間」は?

 

辻村

これは、客が店員側を悪やと思ってるパターンですね。成敗してやるぞ、っていう。

 

村上

それって、相手に対して良かれと思って「今お説教してあげたらこの店員の将来が安泰」とかそういう意図ではないと思うんだよね。自分が傷つけられてムカついてるから発散したいだけ。

 

辻村

そうやと思いますわぁ~。

 

村上

要は「よくもやりやがったな」っていう感情。だけどそれを良かれと思ってやってる。

 

辻村

人によっては、そんな店員によってこれ以上被害者を出させるわけにはいかぬ。だからここで私が食い止めないと!っていう気持ちもあるかと思います。

 

村上

いずれにしても自分にとっての正義を振りかざす人のことやね。

 

辻村

そうやと思いますわぁ~。

 

村上

で、それは全部に当てはまりそうだね。じゃ次の「今どきの若者は人間」は、嫌みを言ってくるお爺ちゃんのことかな?

 

辻村

今の日本はダメやから、ちょっとでも自分の知恵や経験によって国を良く出来れば、っていうことですね。

 

村上

自分はあんなに苦労したのに、こいつらラクしやがって、ていう妬みの感情なのかな。

 

辻村

それもあると思うんですけど、根本はそうであっても、最初に出る言葉はめっちゃ「国のために」とか「お前たちのために」とか。

 

村上

グローバルを装ったローカル?

 

辻村

よくわかりませんですね(笑)。

 

村上

つまり世のため人のためと言いながら、結局は自分のことしか考えてないやないかい、っていう。でも、誰しも年齢を重ねるとそうなると思うんだよね。時代はどんどん変わっていくわけだし、その変化ってなかなか受け入れられないと思う。

 

辻村

そうやと思いますわぁ~。

 

村上

我々世代も、自分が子供だった頃には大人たちから散々高度経済成長期の話を聞かされて、「そんなこと言われてもなぁ」と思いつつ、でもいざ自分が大人になって君ら学生の世代を見ると「なんでこいつらLINEでしか会話しないんだ。少しは本を読め」ってなる。多分「読書をしなさい」とアドバイスした瞬間に老害ってことになる。

 

辻村

私も大人になったら、子供らに向かって「なんでお前らゲームしてないん?」って文句言うかもしれないですよね。

 

村上

そうだね。ゲームが浸透してる世代だからこそ、「ゲームばっかりしやがって」じゃなくて、自分たちと同じようにゲームしろよ、ってなるわけだ。ま、いずれにしても老害の定義としてはそんな感じであると。

そしてこれを実際にカルタとして形にして、病院で試遊したけど、反応はどうだった?

 

辻村

なんか意外と楽しんでもらえましたね。自分的には単純すぎたかなと思ったんですけど、ただでさえ医療業務で大変な中、複雑なルールを覚えさせるのは厳しかろうということで、あえて単純にしてました。

 

村上

5秒くらいで覚えられるルールじゃないと厳しいという話もしてたしね。

 

辻村

テストプレイの時は、遊んでて物足りないというか、何か奥が深くなるようにと色々な要素を足したくなっちゃって。でもその欲を押さえて良かったなと。

 

村上

「カルタ」っていう響き自体が、まずは中高年的には馴染みやすいよね。子供の頃に誰もが少なくとも一度は経験してるだろうということで、イメージがつきやすかったのかも知れない。更に『老害集会』なんていう、色んな意味でキャッチーなタイトルがついてるから興味をそそられる。しかもマニュアルも町内会の回覧板みたいなダサいデザインを意図的に作ってて…。

 

 

 

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『老害集会』の取扱説明書。

 

辻村

「みんなでかるたを楽しみましょう!♫」って縦に伸びた虹色のフォント使って描いてるんですよ(笑)。

 

村上

超ダセえ(笑)!

 

辻村

初めてwordを触ってみました的なダサさを意図的に表現しました。

 

村上

これはかなり勇気のいる仕事だね。芸術大学でこのデザインにするかっていう…。

 

辻村

でも私、普段からああいうことしてるんで(笑)。

 

村上

デザインはともかく、このくらい単純な仕組みだから導入で成功したという印象はあったね。
あるアナログゲーム専門店の店員さんが、仕事の合間に色んな所に出向いてゲームのワークショップを開いてるんだけど、ある時老人ホームでゲーム大会を開いたことがあったらしくて、その時感じたのが、老人に受け入れられる難易度としてはトランプの「ババ抜き」が限界だと。

 

辻村

ええー!で、その状態で何か新しいゲームを考案しなきゃいけなかったんですか?

 

村上

そう(笑)。

 

辻村

やっば(笑)!そんなん無理じゃないですか。

 

村上

だから直感的に手を振るだけで楽しいとか、リズムに合わせて体を動かしたりとか、古典的なメンコやしりとり、ビー玉やお手玉、そういったものを使って単純に遊べるものをベースにアレンジしていくみたい。

 

辻村

それはそれで楽しそうですね。

 

村上

今の学生たちだったら、もう物心ついた頃からポケモンとかスマホの複雑なRPGで普通に遊んでるよね。

 

辻村

はい。でも最近のゲームはチュートリアルがめっちゃしんどいですね。

 

村上

確かに。このあいだ学生や副手の間で流行ってるスマホの某RPGをやってみたんだけど、1時間くらいチュートリアルが続いて、延々説明を聞かされて、そこで挫けた。一度に覚えることが多すぎて何を言われてるのかさっぱり分からなくて…。
…って、なんか話だか、主旨が変わって来たな。

 

辻村

「チュートリアル長いんじゃ人間」っていう老害ですね(笑)。

 

村上

で、そうそう。話を戻そう。今回の『老害集会』の企画の着地点って何だった?

 

辻村

んふわぁ~

 

村上

あくびすな。インタビュー中やぞ。

 

辻村

ゲームで遊ぶことによって、終わった後とかに、「お前それ老害ちゃうんんん~?」とか「なんとか人間ちゃうんんん~!」とかを冗談で言い合える環境づくりを目指しました。目上の人を相手になかなか言い出しにくいこともあると思うんですけど、当事者としても「あ、これもしかしたら**人間と呼ばれてしまうのでは!?」と思って余計なことを言わなくなったり。そういうのがあるとお互いが言動を慎むというか、客観的に物事を捉えられやすくなるんじゃないかなって思うんですよ。今の発言はこの人にとって老害扱いではないのか、みたいな。

 

村上

なるほどね。そもそも今回のプロジェクトについて、「医療なのにゲーム」ていう点はどう感じた?

 

辻村

医療のゲームを作るわけではないと分かっていても、それでも最初は単純に難しそうだなって感じました。

 

村上

でも、コミュニケーションを円滑にするための遊びという考え方は、医療現場に限らずどの領域でも応用できる普遍性はあるよね。

 

辻村

ですなぁ~。最初に話してた「老害チェッカー」があるじゃないですか。あれはゲームじゃなくて占いみたいにただ結果を知らせるだけなんですよね。「あなたはCタイプの老害でした。へぇ~そうなんや~、完」とか、友達同士で「あんた何タイプやったん?えー、あんま当てはまってないなぁ~、あれ、ここ当てはまってるやぁあ~ん、完!」みたいな感じで。でも、これをゲームの形にしてみんなで遊んだら、老害自体が冗談の幅になって、本来ネガティブだったものをポジティブなエンタメにできるかなと。遊びの要素が入ることで、情報が一方通行になるんじゃなくて、体験が得られるから、そこがゲームという形の大きなポイントなのかなって思いましたね。

 

村上

つまりコミュニケーションツールってことだね?

 

辻村

んふぅ~

 

村上

あれ、違った?

 

辻村

よく分かんないっす。

 

村上

プロジェクトとは関係ないけど、つじ子は今後どうしていきたいの?

 

辻村

将来のことはいつも雰囲気だけで考えて、実際にやってみてから「やっぱここで良かった~」って考えるタイプなんですよね。ゲームゼミに入ろうって思ったのも、最初はよく分かってなくて、単にコツコツとゲームを作るだけのゼミなのかと思ったら、めっちゃグループワークばっかりで、しんどいけどこれがまた楽しい。

 

村上

ゲームやる人って、一般的な印象ってどうなんだろう。デブで眼鏡で早口で、ハンバーガーくわえながら「死ね死ね」とか叫んで敵キャラ殺してるみたいな。

 

辻村

うちそんなんちゃいますよ(笑)。めっちゃ偏見じゃないですか。

 

村上

「ゲームやる人間なんてどうせこんな奴らばっかりやろう人間」(笑)。

 

辻村

でも、ゲームゼミについてそういう印象を持ってたのは入学前の頃の話ですよ。グラフィックとかプロデュースとか、ずらっとゼミの名前を並べられて、そこにゲームゼミが混じってたら、ちょっと陰キャというか、何というか、ちょっとキモめの人がいそうかなって。

 

村上

キモめ…

 

辻村

でもゲームの授業を受けてみて、グループディスカッションが多くて、自分含めて根本はみんなインのキャラなんでしょうけど、インなりにコミュニケーションがしっかりとれてるというか、対話からどんどん構想が広がっていく感じが楽しいなと思って。そこからゲームに対する印象が少しずつ変わっていきましたね。

 

村上

ゲームゼミっていう呼び方も変えたいところだけどね。遊びを学ぶ上での一つの表現手段がゲームというだけなので。

 

辻村

じゃぁどうしますか?村上パラダイスゼミとかでいいんじゃないですかね。楽しそうですよ。

 

村上

アホやと思われるわ。

 

辻村

人体実験ばっかりやらされてるからモルモットゼミの方がしっくりきますね(笑)。

 

村上

まあそれは…否定しない…(苦笑)。さて、例の如く最後はグダグダで何を話してるか分からなくなってきたので、今回はこの辺で。どうもありがとうございました。

 

辻村

ありがとうございました。

 

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2020年3月19日  学生紹介

王吟賀と「ゲームのストーリーについて語るの巻」 Part2

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ゼミ通ヒーローズ Vol.21

 

Part1はこちら

 

村上 今回の制作期間は?

 

 ずっとシナリオだけを書いていたわけではなくて、

少し書き進めたらイメージ画を描いて…これを交互にやって全体像を明確にしていきましたね。

だから実際にシナリオを全部書き終わらせたのは後期の中盤なんですよ。

前期はシナリオを中心に、卒業制作の中間合評に間に合うようにキャラクターの立ち絵とキービジュアルを仕上げました。

 

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卒業制作作品『桃夭』のキービジュアル。

 

村上 合評の時に提示したキービジュアルはかなりインパクトがあったね。

作品のテーマを的確に表現していて、構図も色彩も素晴らしく美しい。

 

 なんか、細かい絵を細かく描くのが好きなんですよ。

今回のゲーム用としては、表情差分も含めてヒロインの服装が3パターンあったんですけど、

宮廷の服だけで表情を70個くらい描きまして、他は…もう覚えてません…。

男性キャラクターは150枚くらい描いたと思います。

 

村上 実際に中国でのロケハンもあって、膨大なシナリオと膨大な絵のデータの作成をして、

そこからゲームの世界観を伝えるための展示の設計や準備にも時間をかけて作り込んで…。

本当に大変な作業だったね。

 

 好きなことなので楽しかったですよ。

 

村上 確かに、制作中は本当に楽しそうに書いてたもんね。

ずっとセリフを呟きながらニヤニヤ笑ってたところが印象的だった。

今度はこれをゲームの媒体に落とし込んだ時に、読み物ではなくてゲームストーリーとして、

つまり遊ぶものとして工夫したポイントはある?

 

 やはりゲームである以上、インタラクティブな遊びとしてのストーリーを見せなければいけないので、

物語を分岐させることと、その中のパラメーターとして、「好感度」と「運命度」というものを組み込みました。

好感度は既存商品などによくあるパラメータで、攻略キャラクターとの愛情を示すものです。

運命度は、これが高ければ、好感度を問わずに直接「史実エンド」に向かうというものです。

要するに歴史に沿った形の展開ですね。史実エンドへの選択肢は普通は政治絡みの内容と関わってます。

運命度は恋愛感情以外のものに心を揺さぶられるということなんです。

例えば、蕭寧さんの第四章で「逃げる子供の後を追うかどうか」という選択肢がありまして、

もし子供を追うと、ここで初めて未央が平民の感情に触れることができて、

苦しんでるのは自分だけじゃないと気付くんです。

それによって、以前だと知ろうとはしなかったことを知ろうとしたり、行動が変わってきます。

そういった行動によって運命が変わっていくという展開になっています。

 

村上 そもそも悲しい歴史の話だし、史実エンドだからといってそれがグッドエンドというわけではないよね。

何がプレイヤーにとって良いエンディングなのかはあまりハッキリさせてないところが面白い。

ちなみに、物語の中に選択肢を組み込むポイントは何か法則があるの?

 

 物語は序章と本編の四章で構成されていまして、一章ごとに選択肢を2つずつ組み込んでいます。

ストーリーを読み進めていく上で78分に一回分岐が訪れるくらいのテンポ感になるので、

モチベーションの維持にはちょうど良い設計になってるかなと思いますね。

 

村上 演出的に工夫したところはある?

 

 やはり恋愛ものとして定番の見せ場ですね(笑)。

 

村上 定番の見せ場ね、ドキドキするよね(笑)。

全体を通してストーリー展開も文章もちゃんとしてるので、盛り上がるポイントが心得られてるなと思った。

 

 ありがとうございます。

 

村上 作業としては、二週間で一章完成するくらいのペースで書いてたかな。

内容自体は全く問題なくて、たまに誤字の指摘をするくらいで。

まるで連載小説作家の編集者になった気分で、毎回新作を楽しみにしながら待ってる感じだった。

ちなみに、普段はどんなゲームで遊ぶの?

 

 大学に入るまでは乙女ゲームしかやったことがなかったんですけど、

この大学でゲームを学び始めてからは経営シミュレーションゲームを少しやりました。

アクションゲームだと『トゥームレイダー』ですね。

アクションゲームでもストーリーがしっかり作り込まれているものは好きですね。

乙女ゲームの中でも、スケジュールを埋めるだけでイベントをこなしていくような

作業的なタイプのものはあまり好きじゃないんです。

好感度を上げ下げするような事件がたまに起こるだけとか。

特にスマホ用の乙女ゲームは普通は凄く短いんです。

展開の面白さというよりは、そこに登場するキャラクターとのやりとりによる

パラメータの変動が面白いってことですよね。

でもやはり読み物として成立するくらい作り込まれたストーリーが好きです。

私はオトメイトさんの作品が好きで、

一番最初にやったのが『薄桜鬼』という日本の新選組の話なんですけど、

最近だと『ニル・アドミラリの天秤』ですね。これは大正時代の話です。

 

村上 やっぱり時代物が好きなんだ。

個人的に乙女ゲームは避けてきたので実はよく分かってないんだけど…。

 

 乙女ゲームは、コーエーテクモさんから発売された『アンジェリーク』が発祥で、

これがヒットした後、ストーリーの中にパラメータを組み込んで、

読み物というよりゲームとして面白くする方向で『ときめきメモリアル』が出たと思います。

年々新しいシステムを搭載して進化しつつあるんですけど、

今回私が作ったものはキャラクター選択系のゲームで、これは既に市販されているタイプのオーソドックスなシステムです。

その他は、一本のストーリーの中に複数のキャラクターが登場して、

その中で誰との好感度を上げていくかというタイプのものになります。

そこには共通ルートというものがあって、その中の好感度によってキャラクターごとのルートに分岐していきます。

 

村上 君はストーリーの設定や展開に対して拘りがあるけど、ではストーリーを作る上で大事なこととは?

 

 まずはちゃんと感情移入できる物語であることですね。

ゲームの感情移入って二種類あると思ってるんですけど、まず一つ目はヒロインへの代入です。

つまりヒロインになり切って物語を体験するというものです。二つ目は傍観者としてヒロインを見守る形です。

 

村上 その時の感情移入の違いって何?

 

 自分の娘を見てる感じなんでしょうか。成長を見届けるというか。

 

村上 アクションゲームでいうと、完全にプレイヤー=主人公になるよね。

マリオとピーチ姫の関係性を外から傍観するって事はないし、この二人の将来がどうなろうと知ったこっちゃない。

ピーチ姫は監禁されてる身でありながら手紙を送ってきたりするから、

案外快適に暮らしてるやんけ、て余計なことを考えてしまう。

それよりも、自分がマリオになって飛んだり跳ねたりする方がゲームとしては面白いわけで。

で、今回作った『桃夭』はヒロインになりきって展開するんだね。読んだ感覚は男女で違うのかな。

 

 そうですね。違うと思います。

 

村上 女子は完全になり切れるんだと思うけど、

今回シナリオのチェックをしていてもどうしても男子目線で見てしまうから、

なり切るということはできなかったな。

選択肢がきたらその時ヒロイン目線で考えるという感じかな。

その場の状況そのものを楽しむ感じで読んでた。

 

 今回は二つのストーリーに分けていて、各ルートの中で二人の攻略キャラクターが出会うことはありません。

でもお互いの言葉の中では少しだけ触れる場面があります。

一つのルートで遊ぶと必然的にもう一つのルートでも遊びたくなるように

好奇心を掻き立てるようなシナリオ構成にしています。

 

村上 読む順番はどっちが先でも良いのね?

 

 はい、そこは自由です。

あと、今回詩をたくさん入れたんですけど、唐の時代は誰でも詩を作る時代だったので、

これは欠かせないと思って入れました。私自身も詩がとても好きですし。

できれば日本の人にもこの詩の美しさを伝えたいと思っています。

 

村上 詩の翻訳は苦労してたよね。中国語を直訳しても美しさのニュアンスがうまく伝わらないって。

多分そこは中国人にしか分からない微妙な空気感もあると思うんだけど、

どう訳せばその空気が伝わるかはだいぶ試行錯誤したね。

 

 日本には和歌があるので、古文っぽく訳したりしましたね。

私が自分で作った詩も一つ入れてあります。ストーリーの中では主人公が作った詩という設定なので、

ここはどうしても先人のものを使いたくなくて。

それは簫寧さんの第三章の上元節で詠んだ詩なんですけど、

「正月中旬紅蓮夜、火樹銀花万灯明。」「千門鉄鎖争相開、笙歌舞袖動帝京。」というものですね。

あと、笑い話をする掛け合いがあって、そこにはちゃんとした答えはあるんですけど、

主人公の未央はとても真面目な人なので、この笑い話を真面目に受け取り過ぎて普通に返してしまったんですよ。

その時の対句もヒロインのキャラクター性が出るように、ちゃんと言葉が対照的になるように意識して書きました。

対句とはそういうものなので。

 

村上 最近だと日常生活でも「表現」というより

「説明」ばかりになっていて言葉のやり取りに情緒が失われてきてるから、

こういう詩を読み解く面白さとか、何かを感じ取る面白さをプレイヤーに味わってもらえると良いね。

 

 そうなると嬉しいです。

 

村上 さて、君はこの春に学部を卒業した後は大学院で

更に深くゲームとストーリーの関係性を掘り下げていく形になるけども、もうシナリオの構想はあるの?

 

 はい。また同じように時代設定から突き詰めていっています。

初唐と盛唐については史書に残されてるものがたくさんあるし、中唐は今回書いたので、それ以外でと考えていて。

私が二番目に好きな時代が民国なので、この時代を書こうかなと。

近代史は中国人にとって屈辱と抗いの激動の時代で、とても魅力があります。

 

村上 その動乱の世の中で揺れ動く乙女心を描きたいと。

 

 そういうことです。舞台は19201930年代の上海です。具体的な年はまだ決めていません。

でも中国共産党は1921年で成立しましたので、その後の第一次国共合作と、

合作が破裂した後の10年内戦期に関わる内容になります。

今回は攻略キャラクターが3人登場します。

 

村上 だいぶ雰囲気変わるね。ていうかまた物語のボリュームが凄いことになっていそうで期待してます。

ということで、また引き続き頑張ってやっていきましょう。

 

 はい、ありがとうございました。

 

※王さんの作品『桃夭』はこちらURLから実際にプレイしていただけます。

 

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2020年3月17日  学生紹介

王吟賀と「ゲームのストーリーについて語るの巻」 Part1

ゼミ通

ゼミ通ヒーローズ Vol.21

 

今回のゼミ通ヒーローズは、2019年度卒業制作で優秀賞と

キャラクターデザイン学科特別賞を受賞した

留学生・王吟賀さん(以下 王)をピックアップします。

彼女が制作した『桃夭』は、乙女向け恋愛アドベンチャーゲームとなっており、

今回はこのゲームのストーリーやキャラクター造形についての話を聞いていこうと思います。

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卒業制作作品『桃夭』と王吟賀さん(右)。

 

 私は、子供の頃から日本のマンガやアニメ、ゲームが凄く好きで、

そこから日本の文化に惹かれて、いつか日本に来たいなと思っていました。

日本のサブカルチャーは世界的に見ても最先端なので、

学ぶなら日本がいいと思ってました。

最初は東京の大学も考えていたんですけど、

向こうは全体的にイラストというよりグラフィックデザインに偏ってるように感じて、

逆に関西の方だとアニメやゲームといった分野に対して学科を設けている大学が多かったので、

幅広く多く学べるかなと思って京都に来ました。

 

村上 君はこれで学部を卒業するけど、

春からは大学院に進学してゲーム制作をして、また村上ゼミという腐れ縁っぷり(笑)。

 

 はい、また2年間お世話になります。

 

村上 卒業制作では中国の歴史恋愛アドベンチャーゲームとして

超大作の乙女ゲームを制作したけど、

3年生の時の学科展(学生作品展)の時にも同じく

中国を舞台にした乙女ゲームを作ったよね。

作品の内容について詳しく聞かせてくれるかな。

 

 3年生の時に作ったゲームは、755年の安史の乱を舞台にしたストーリーでした。

卒業制作で作ったのはそれから30年後の787年を舞台にしました。

私は中国の歴史と文化がとても好きなので、

ゲームという媒介を通して文化の伝達を研究し、

唐の史実に基づいた乙女向け恋愛アドベンチャーゲームを制作しました。

これまで歴史研究を重ねてきたので、

シナリオの中にはきちんとした歴史・文学・経済などの様々な知識を盛り込んでいます。

プレイヤーが私のゲームを通して中国の文化に興味を持って、

自主的に学びたくなるようにすることが大きな目的です。

 

 ヒロインは未央(みお)という少女で、

和親の姫という設定です。結婚式までの一年間の間で、

自分の運命を変える男の人との出会いを通して繰り広げられる

悲しい恋の物語となっています。

物語は序章と四章で構成されていて、最初は787年の10月から始まるんですけど、

桃が咲く春が一番盛り上がるように構成しています。

 

村上 今回は桃が全編を通しての共通のモチーフになってるよね。

タイトルも『桃夭』だし。

 

 『桃夭』というのは、中国の春秋時代の民歌の詩経からとったものです。

詩の原文としては、「桃之夭夭、灼灼其華。之子于帰、宜其室家」となっていて、

嫁入りの可愛い娘を瑞々しい桃の花に例えて、

「その娘が嫁いで行ったら、その家に良い事をもたらすのでしょうか」

という意味の詩になっています。

それ以降は桃の花が花嫁のイメージになっていて、

桃夭という詩も桃の花の代表的な詩になっています。

これは史実に基づいた展開になっていて、

シナリオ執筆の段階ではかなり緻密な歴史の検証を通してリアリティを追求しました。

 

村上 リサーチの様子とかシナリオの検証の様子を見てて思ったのが、

映画の『タイタニック』の作り方に近いのかなと。『タイタニック』は見た事ある?

 

 はい、あります。

 

村上 何時何分にどこに誰がいて、何分後にタイタニック号が氷山に衝突して、

という出来事を分刻みで忠実に再現していって、

更にその合間を縫って架空の主人公が史実に触れないように

二人の恋愛フィクション展開していくという構成。

 

 そうですね。ただ、かなり遠い過去の歴史なので、

そこまで詳しく記されていない部分もあるんです。

だから月日とかも曖昧な部分もあって、

そういう所は検証結果から推測しながら詳細を埋めていきました。

 

村上 このヒロインは架空の存在ではなく実在の人物?

 

 はい。実在はしてたんですけど、どの本にも23行しか記述がないんです。

私はずっと和親の姫を書きたかったので、この人物をモデルに選びました。

そして私は唐の時代がとても好きなんです。

時代的にもちょうど安史の乱が収まって、中唐に入った時代の物語なんですけど、

今回は真っ先に唐という時代設定から決めて、そこから話を書き始めました。

唐の時代での和親の姫の設定を全部調べていって、

今回のヒロインが一番書きやすいなと思って、この人物にしました。

他の姫は、記述が多かった分ちょっといじりにくいなと思って。

あと、この子だけが唐の和親の姫から出される唯一の「実の皇帝の娘」なんです。

普通は王家の血筋を引き継ぐ娘のことを姫って呼ぶじゃないですか。

でも実の娘ではない可能性の方が高いんですよね。

 

村上 血が繋がってるからこその濃密な人間ドラマが作れると思ったわけね。

途中でかなり悲劇的な展開があったりして、そういう所が引き立つようになってると。

唐の時代のどんなところに魅力を感じた?

 

 唐は、中国の封建王朝の歴史の中で一番開放的な時代だと思うんですね。

私のとても好きな女性が、中国史上唯一の女帝である武則天なんですけど、

この人物もちょうどその時代の人なので。

 

村上 なるほどね。ではゲームの中身の話をしていこう。

 

 今回は二つのストーリーがあって、両方ともヒロインは同じです。

それぞれのストーリーに登場する攻略キャラクターは一話ごとに一人ずついます。

で、一つのストーリーの中でどちらかのキャラクターを攻略するのではなくて、

完全に独立した異なる物語があって、

それぞれの攻略キャラクターが立ってるっていう構成になっています。

なので全くストーリーの異なる二つのゲームを楽しめるような作品になっています。

 

村上 今回は物凄い物量のシナリオで、リサーチも大変だったと思うんだけど、

この圧倒的な物量に見合うだけの絵も描いて、

作業も大変になるのは分かってたはずなのに、なんで二つも話を書いたの?

 

 最初の企画では一人だけの予定だったんですよ。

泥棒の蕭寧(しょうねい)さんの方だけですね。

でもやっぱりゲームにしたときに、

攻略するキャラクターが一人だけだと物足りないのではないかと思って、

結果もう一本作ることにしました。

一本目のストーリーとしてはこんな感じです。

自分が和親に行くということを知った夜、主人公の未央が太液池の方へ行くと、

偶然とある泥棒さんと出会って「私を盗んでくれないか」と頼み、

そこから二人の縁が始まるんです。

その後幾度もの出会いを重ねて、感情も深くなり、

最終的に第四章あたりではちゃんと外に連れ出してくれるという流れになっています。

 

村上 普通で考えたら、泥棒がお姫様をさらっていく話だから、

だいたい悲劇的な結果にしかならないはずなんだけども、

プレイヤーの選択次第では幸せになれるかも知れないっていうストーリーになってるのね。

 

 はい、そしてもう一本のストーリーは、

未央とは父も母も違うお兄さんの李誼(りぎ)、つまり皇帝の養子が登場します。

彼は当時の第二皇子で、その上には太子がいるんですけど、

787年に郜国大長公主の獄(こうこくだいちょうこうしゅのごく)という事件が起こります。

それは太子の妃の母が起こした謀反で、

それによって皇帝も太子に疑いの目を向けて廃嫡しそうになりました。

そこで宰相からの説得によって漸く死なずに済みました。

しかし皇帝は太子よりも李誼の方を愛していて…という設定の恋愛ドラマです。

私は、李誼がそんな立場に立っていると

やはり権力を欲しがっているのではないかと推測したので、

こっちのストーリーは李誼と太子との政治争いについて深く掘り下げてみました。

その中で、未央は政治的に利用されていく、という話になります。

今回のストーリーの中、李誼は実在したんですけど、簫寧は実在しません。

でも簫寧の方は歴史上に実在しても、泥棒は表舞台に立つような身分ではないので、

史書に記されないと思います。

 

村上 二本とも全く異なる設定と展開だったから、読んでいて凄く面白かった。

さて今度は制作の手順というか、この膨大な情報を、

何からどうやってまとめていったのか、それを聞かせてくれる?

 

 当時の地図を使って、どの位置にどんな宮殿があるのか、

またその内部はどんな構造になっているのかを調べていきました。

実際に現地に行って取材をし、シナリオハンティングをして、

そこで資料用の写真を撮ったり実際に歩き回って空気を感じ取りながら書いていきました。

 

村上 君は今回の作品に限らず普段の授業でも、

例えばキャラクターのイラストを一枚描くにもちゃんとリサーチをした上で

一旦全部文字でイメージを起こして、歴史の年表まで作って、周辺の地図まで描いて…。

で、ノート一冊分くらい丸ごとびっしりと情報を書き込んでから

イラストを描いてるって聞いたことがある。

普段からそういう緻密な下調べをするのが癖になってるのかな?

 

 そうですね。ちゃんとまとめて、

最終的にこれでいきますって納得できる設定が書けたらやっとイラストの制作に入ります。

絵を描くのも好きなんですけど、文章として伝えるのも好きなんです。

 

00002 0000300004『桃夭』の制作を始めるために作成されたノート。

 

村上 絵はいつごろから描いてたの?

 

 落書きみたいなものなら物心ついた頃から描いてましたけど、

ちゃんと物事を考察して描き始めたのは高校生からですね。

 

村上 なぜ調べなければいけないと思った?

 

 描くべき対象の裏にあるものまで落とし込まないと画面が空っぽになってしまうので、

ちゃんと世界を創り込まないといけないなと思って。

あとはシナリオを書きながら同時進行で資料を調べる事もありますね。

例えば、その時代特有のものの呼び方とか皇宮内の階級に関する知識とか。

 

村上 設定を考えてる時って、割と好き勝手に展開を考えてストーリーラインを決めていけるけど、

いざセリフを書こうとすると設定が穴だらけだったことに気付くことが多いよね。

現代劇だろうが時代劇だろうが、ちゃんとキャラクターが

その世界で生きてるように表現しようと思うと、

もっともっと詳細までリサーチして世界を創り込んでいかないとダメだってなるよね。

小道具から何から全部。

 

 確かに、書けば書くほど情報が足りないことに気付いて、

そして勉強して、ということを延々繰り返しながら書いてました。

 

村上 なるほどね、では読み物としてではなくて、

ゲームとしてのストーリー作りという観点から掘り下げていこうか。

 

 

Part2に続く

 

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2020年3月9日  学生紹介

ゲームゼミ十期生と「ゲームゼミについて語るの巻」 Part2

ゼミ通

 

ゼミ通ヒーローズ Vol.20

 

Part1はこちら

 

村上 結局ゲーム教育って一体何だったのかを振り返っておきたいなと。

ゲームの作り方の話ではなくて、遊びを学ぶ事自体が何をもたらすのか。

特にLA(ラーニング・アシスタント)をやってくれた面々は、

後輩の授業の様子を見てて、その成長度合いとか、何か感じるものはあった?

 

門瀬 私は一年生の「ゲーム制作基礎」のLAをやってたんですけど、

その時先生からは受講生の様子を観察してほしいと頼まれてたので、

「テンションパラメーター」を作って記録したんですよ。

主に座学を中心にやってたんですけど、

先生の話の内容に合わせて受講生たちのテンションの上がり下がりがどうなるのかを調査してました。

やっぱり遊びの教育には人とのコミュニケーションというものが大きいのかなって思いましたね。

一方的に講義を聞くのではなく。

チーム全体のテンションが凄く重要で、十期生が良いゲームを作れたのは、

このメンバーの空気感が凄く良かったからなんだと改めて思いました。

 

村上 十期生が一年生だった頃のゲーム授業って、何か異様な盛り上がりじゃなかった?

単に騒がしいメンバーが集まってただけのような気もするけど。

 

中西 私たちがゼミに馴染むのが早かったのかも知れないですね。

私たちが一年の時の最初の授業でお互いの名前を覚えようって事でニックネームを付け合って、

授業の時はその名札を付けてたんですよね。それで近づきやすかったんですよ。

今の一年生に聞くとそういう事をやってないみたいで、同じ授業を受けてるのに名前も知らないままとか。

 

村上 十期生は怖いもの知らずというか、

どんな企画でも恥ずかしがらずにとりあえず提案しちゃえ!みたいな所があったよね。

 

中西 二年生の時は脱出ゲームを作ってましたけど、

やっぱりそういう基礎があったからか、進み具合も早かったですね。

居残りもせず授業時間だけで完結したから他授業の課題も難なく両立できたし。

 

門瀬 やっぱり山中の存在が一番大きかったかな。

プランナーじゃなくてディレクター役が一人いるとそれだけでチームがまとまるので、

私たち制作チームは凄く動きやすかったです。

 

村上 村上ゼミじゃなくて山中ゼミって呼ばれてたしね。

 

中西 ストーリーを担当してたメンバーがイメージの伝え方で困ってたら、

山中が入って「つまりこういう事ね」って綺麗にまとめて

分かりやすい言葉に変換してくれるから、それがありがたかったですね。

 

山中 その先の仕様は五十嵐君が全部まとめてくれたんですよね。

 

五十嵐 個別のギミックを各自で考えてもらって、

それを一本の筋になるように僕が繋いでいく感じでした。

 

門瀬 その流れを見て私がギミックを作り込んでいって、

最終的に山中がチェックするみたいな一連のワークフローが出来上がってましたね。

 

村上 毎年どの学年も脱出ゲームの制作が終わると突然仲良くなって、

ゼミとしての結束が固まるんだけど、そこはどうだった?

 

門瀬 仲良くなるっていうより全員のポジションが分かるって感じですかね。

チームとして、誰が何に長けてるかがハッキリするんですよ。

こういう技術はこの人に頼めばいいとか分かるとゼミ内での動きがスムーズになります。

 

村上 キャラクター性を炙り出す意味で凄く効果的だったと。

 

門瀬 そうですね。学科展もとてもスムーズだったし。

このゼミの良いところは、仲良しじゃないってところですね。

 

村上 性格はバラバラだけど全員向いてる方向が同じって事ね。

単なる仲良しクラブではないところが良かったんだと思う。

 

門瀬 山中とは同じチームなのに一緒に遊びに行った事も一度もなかったし。

 

村上 その時点で既にプロ目線なんじゃないかな。

目的は「良いものを作ること」だけだから親しき仲にも礼儀ありっていうか、

人間関係もなあなあにはしないっていう。

それがあるから卒制でも皆の中に「妥協は絶対に許さないぞ」っていう空気が出来上がってたでしょ。

 

中西 そんなスパルタな感じでしたっけ?

 

村上 いやいや、指図されなくても皆の中で勝手にそういう意識が芽生えてたってこと。

だってこちらから何も指示や指導をした覚えもないのに、

勝手に皆でダメ出しをし合いながらどんどん出来上がっていくから、

俺はそれを見て感心してただけで。ラクだった(笑)。

 

門瀬 作品にちゃんとリスペクトできるっていうのは恵まれてるなと思いますね。

自分の作品だけじゃなくて、チーム全体の作品について素直に凄いって思えるところが誇りです。

 

杉山 それは本当に凄い事だと思いますね。

 

村上 うん、全員が全員の作品と多様性に対して愛を感じてる。

さて4年間遊びについて学んできたわけだけど、結局遊びって何だったんだろう。

例えばゲームって世の中的には

「目が悪くなる」「頭が悪くなる」「依存症になる」と言われて敵視される場面が多いよね。

でもそういうものを君らは身を削って作って来たわけで。

 

杉山 私が思うに、村上先生の授業で一番素晴らしいなって感じたのはそこなんですよ。

ゲームの作り方を教えるんじゃなくて、遊びとは何かっていう問いかけから始まって、

ゲーミフィケーションとか遊びの観念をちゃんと学ばせてくれるところが、

私にとってもゲームっていう固定化された枠組みから外して学んでも良いんだって考えられたのも大きいと思います。

私の学生生活というのは、宿命の中にあったんだと思うんですよ。

 

村上 宿命…!?

 

杉山 私は物心ついた時からモンスターの研究をしていて、

この大学に入った命題は「モンスターとは何か」を追及する事だったんです。

ゲームを学ぶのが目的なのではなく、その命題追及の手段だったんです。

先生はゲームという箱をもっと奥底の観念として、

最初は「狩り」とか「求愛」がゲームの元祖だって言ったじゃないですか。

私はその時点で凄く感銘を受けていました。

三年の時に作ったゲーム『魔界創生』は私の追求という意味では完成されたものだったんですよ。

でもゲーム性としてはなんか外れてる感覚はあったんですね。

で、卒業制作で『GIGまもののむれ』を作った時に

「人類エンリッチメント」というテーマがあったんですけど、

あれが私の大学生活を通しての一つの「モンスターとは何か」についての答えであり、

モンスターと生命性とゲームの全てに通底した真理だったんです。

そこに至って私はこのゲームゼミに入ってゲームを学べたっていう事の宿命を凄く感じてますね。

 

ナッチャー 私も、ゲームゼミに入ろうとしたのは先生の言葉に感動したからなんです。

「ゲームとは体験のデザインだ」って言われて。

新しい体験は新しい発想にも繋がるので、ゲームデザイナーの世界や性格を、

ゲームとしての触媒を使って誰かに体験させる事ができたらいいなと思いました。

 

 今回私はゲームを媒介として使ってるんですよ。

実際にやりたかったのは、世界の人に中国の歴史や文化を伝える事だったんです。

ただ中国ではゲームはアニメーションやマンガよりも更に良くないものと認識されています。

勉強に良くないとか、お金の無駄遣いのようにも思われていて。

だから逆にゲームというメディアを勉強に結び付けて、

遊びを通して、感動するストーリーを通して学問を得てほしかったんです。

それで実際の試験の中でも使えるような知識を教えたかったです。

 

五十嵐 ゲームゼミに入った時ってゲームと遊びの区別があまりついてなかったんですよね。

 

村上 ゲームという呼び方だけだとどうしても視野が狭くなるし、

就職目的で専門知識だけを教えても大学としての価値がないと思って、

寧ろゲームという呼び方をやめようと考えた事もあった。

 

五十嵐 そうですね。それを受けて、じゃあ遊びが一体何なのかを調べてみようと思って、

文化人類学の本とか、或いはそれを受けて更に心理学の話に戻ってみて、

「遊び」と「面白い」の関係について自分の中では合点がいくものが一つ見えました。

心理学の基礎の基礎でオペラント反応とか条件付けっていうものがあるんですけど、

人間にとっては面白いっていう感覚が報酬なんで、

つまり人の行動を促進する事との繋がりが明確に見えた事で、

「あ、なるほど。人間は一種のプログラムなんだ」と如実に感じたわけですね。

なので、遊びを学んだ事で結構あらゆる物事に対しての考え方の軸になりましたね。

これは遊びに置き換えるとこういう事か、とよく考えたりします。

なんというか今後の人生においても凄く大事な事を学んだなって感じましたね。ゲームの作り方以上に。

 

門瀬 わー、賢ぉーい。

 

中西 じゃ解散。

 

村上 勝手に終わらすな。

 

矢部 皆みたいに崇高な事は言えないんですけど…。

二年生の時にゲームが一体何なのかを考えてて、

そんな時に「ゲーミフィケーション」を学んで、

その中の例で、階段を使わせるために階段にピアノの鍵盤を埋め込むのがあって、

それが凄く面白いなと思ったんですね。

その時、ポジティブ思考とかプラスの考え方を具体的な形に変えたものがゲームなのかなって思いました。

親が子供に「勉強しなさい」って言うんじゃなくて、

勉強したくなるように仕向けるような考え方がいいなって感じたので。

それから自分が何かを作る時には単に好きなものを作るんじゃなくて、

逆に自分が嫌いなものをモチーフにして作品を作る事が多くなっていきました。

今回の卒制作品でもそんなに好きじゃないものがモチーフになってるんですよ。

例えばSNSとかですね。以前Twitterで色々苦労した事が多くて。

そのマイナス感情をプラスに置き換えればゲームが面白くなるんじゃないかと思って。

 

村上 苦手を克服するためにこのゲームというメディアを使ったってこと?

 

矢部 そうですね。吟ちゃん(王吟賀)も言ってましたけど、

私にとってもゲームが媒介みたいな形になってたんだと思います。

 

門瀬 私は、ゲームって人にもう一つの新しい人生を与えてくれるものじゃないかって考えてます。

簡単に言うと、リアルじゃできない事だったり。

リアルでは魔法使いにはなれないし勇者にもなれないけど、

ゲームの中ならできるし、その時感じた気持ちとか経験は自分の中にちゃんと刻み込まれてるから、

私はゲームというコンテンツを通して誰かに新しい人生を与える事ができるところに魅力を感じてます。

それを作り手側が、人が人に与えるっていうところがめちゃくちゃ魅力的だし、

色んな世界で通用していくようなものになっていくんじゃないかなっていう、

それこそ本当に神様みたいな事が人にはできるんじゃないかなって考えてます。

 

中西 私は自分自身何でずっとアナログゲームを作ってたのかなって考えてて、

思い返したら私が実際に作ってきたゲームは全部4人プレイだったんですよ。

それについても「何でだろう」って考えたんですけど、

大人数でワイワイしてくれる場所を作りたかったって思うんですね。

テストプレイをやってて、今回の卒制で全体の協力者の数が一番多い自信があるんですよ。

テストプレイをするたびにいつも10人くらい集まってくれて。

私、手話が出来るんですけど、

そういう所からも偏見とか年齢の差とか立場に関係なく

子供の頃に戻ってワイワイできる共通言語とか環境みたいなものを生み出したかったのかなって思ってます。

 

村上 ゲームを作りたかったんじゃなくて環境を作りたかったってこと?

 

中西 環境ですね。ゲームとかシステムをメインで作りたかったんだったら、

単独で黙って楽しめるゲームを作ってたと思うんですよ。

モノじゃなくて人間関係をデザインするってことですよね。

 

 ウチがゲーム作りで一番重要視してるのは経験だと思ってるんですけど、

勉強もそうだし、何か経験をした上で学んでいくって思ってるので、

そのゲームの中で色んな事を経験して色んな事を学べたらいいなって思ってます。

自分が実際にキャラクターを動かして感情が動くメディアってそんなにたくさんないと思うんですよ。

例えばゲームの中で、笑顔になれるような体験だけじゃなくて、人を殺して泣いたとか。

これって現実世界ではできないじゃないですか。

でもゲームから生まれる感情っていうのもあるかなと思ってて、

デザイナーとして、自分の描いた世界を見てもらって感情が動くのは素晴らしい事だなと思ってます。

卒業制作では、まあ色々あったんですけど、それもこれも全部自分の経験として良かったなと。

 

山中 私は、一番最初に『ドラゴンクエスト』で遊んで感動した瞬間から、

別にゲームが好きだったわけじゃなくて、

こんな凄いゲームを作れる人を、嫌な事とかから守ってあげたいなって考えてました。

その頃はスクウェア・エニックスの事も知らなくて、

ゲームがどのくらいの人数で作られてるのかも全く知らず、

「ゲームを作ってる人」っていう大まかな括りの人たちを

お世話できるような仕事に就けたらいいなってずっと思ってました。

このゲームゼミに入って、もちろんそれをやりたいと思ってたんですけど、

それはあくまで私のやりたい事であって、

もしかしたら他の皆からしたら「え、何それキモい」って思われるかも知れなかったのに、

皆はそれを受け入れてくれて良かったです。

ゲームゼミに入ってから、本当に多くの人を大切に思えるようになりました。

ゲームに関わる全ての人が大切だなと。

ゲームを作る事自体にそれほど興味があったわけではなく、

「今回のゲームは作りやすかったな」とか言われる方が嬉しかったり、

そういう若干ズレたところにいたので、それをずっと良しとしてくれたこのメンバーに感謝をしたいです。

今のメンバーに加えて、過去にゲームゼミのメンバーだった

八阪実梨、石森由起、仁禮那音、宇野亮の事もとっても大好きです。

 

村上 死んだみたいになってる(笑)。

 

門瀬 ヤバい、泣いてしまう…!

 

中西 泣け。

 

村上 遊びって人それぞれの価値観があって、

これをゲームと考える人もいるしゲーミフィケーションと考える人もいる。

そんな多様性の中から色んなものが得られたのかなって思うね。

皆の中でそれぞれのゲームゼミが出来上がったっていうか、良い関係性も築けて、とても良かったよ。

 

門瀬 でもこのゼミを作ったのは村上先生なので、うー、泣いてしまう。

 

中西 泣け。

 

門瀬 私と山中が賞を獲れた時に、

私たちの存在が村上先生にとっての誇りになってくれてればいいなと思ってたので、

あー、やっぱり泣いてしまう。

 

中西 泣け。

 

門瀬 今回の作品は自分のために作ったものですけど、先生に恩返しができたなら良かったです。

 

中西 何でそれ授賞式の時に言わんかったん?(笑)

 

村上 授賞式では毒舌吐かれただけで終わったしね(笑)。

じゃあ後は社会人になってから、今度は世のため人のため、

一般のお客様を喜ばせる仕事になるので、精一杯社会人を楽しんで下さい。

というわけで、これにてゲームゼミ最後の授業を終了したいと思います。

皆さん四年間本当にお疲れ様でした。

 

一同 お疲れ様でした!

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