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空間演出デザインコース 柴 遥

皆さんは「感覚過敏」をご存じですか。
発達に凸凹のあるこどもたちの中には、周囲の環境の刺激を強く受け取りやすい感覚過敏を持つ子がいます。例えばフローリングの感覚が苦手で裸足で歩けなかったり、沢山のおもちゃが散らばっていると混乱してしまったり、がやがやとした声をとてもうるさく苦痛に感じたり。
彼らが過ごす環境には工夫が必要ですが、福祉の現場では資金面や人手不足の問題から理想的な環境を整備できていない施設も多くあります。
やすらぎ研究室では、発達に凸凹のあるこどもたちがよりやすらかに安心して過ごすことができるように空間からアプローチできる福祉の形を研究しています。


作品タイトル:KABURU,TSUTSUMU(やすらぎ研究室)
コンセプト:発達支援の場での新しいやすらぎの研究

発達に凸凹のあるこどもたちが放課後に過ごす通所型の施設である「放課後等デイサービス」を対象に行ったアンケートでは、約半数の事業所が人手不足を課題に挙げています。続いて設備・環境の不全は約1/4の事業所で課題となっており、更にこれには資金面の問題が深く関わっていると分析することができます。これらの3つの問題ははこどもたちへの支援の質を低下させる悪循環として渦巻いており、一刻も早い改善が望まれます。

やすらぎ研究室ではこれらの3つの問題の中でも特に環境設備の不全に着目しました。支援に必要な空間の広さが足りない、環境刺激を抑え落ち着くためのクールダウンスペースがないなど、こどもたちの安心感を妨げる直接的な要因になり得る為です。すらぎ研究室は児童のやすらぎを主題に、諸問題が慢性化している福祉業界に空間面からアプローチした問題解決策を提案します。具体的には、遊具以上クールダウンスペース未満の「感覚過敏をやわらげる家具」を研究・開発。設備面での改善を皮切りに、支援現場の負のサイクルをプラスのサイクルに変えていくことが研究のゴール地点です。

視覚過敏などがあるこどもたちを優しく包んであげたい、という想いから生まれた手のひらモチーフのスツール。「優しく包む」をキーワードにエスキスを重ね、手加工での曲げ木により制作。木を曲げ、削っていく中で触れ心地を何度も確かめ、心地よい触れ心地を目指しました。脚が8本、等間隔に並ぶシンメトリーなデザイン。パターンの均一性により安心感を、座面から脚部への曲線や脚先の丸みでやすらぎをもたらすように狙いデザインしています。指先のような形の特徴的な脚部はスツール同士を繋げて組み合わせるのに役立ちます。並べてトンネルのようにくぐったり、組み合わせて秘密基地のようなおこもり空間をつくったり、空間の開放度を変えながら遊べます。狭いところが落ち着く子や、周囲の視覚情報を遮りたい場合などに、ほっと一息つける空間の補助を目的としています。

周囲の音や視覚情報を和らげる、一人用のかぶってもぐって組み立ててあそべる知育玩具。ユニットは丸みを帯びた正三角形で、凸面と凹面のスナップボタンが一辺に2つずつ。ユニット同士を自由に付け外しして様々な立体を作ることができます。表面は布地で、芯材には柔らかいEVA樹脂を使用。スナップボタンはこどもの手にも優しく留めやすいプラスチック製を採用しました。三角形のユニットをパチパチと沢山くっつければドームのような形や、小さなおうちだって作れます。ユニットを工夫して繋げれば、視覚情報を多く遮る空間を作り出せるのでクールダウンに適しています。形状によっては外部の音も多少和らげることができます。みんなで協力して遊ぶもよし、一人で小さな空間を作ってリラックスするもよし。KABURUは子ども達の創意工夫によって様々な使い方が生まれる知育玩具です。

柴 遥

空間演出デザインコース

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