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ランドスケープデザインコース 池田 裕英【コース奨励賞】

命と歴史を受け継ぐ場所−忍性の生涯を通して自らの生と死、そして他者を思いやる心を培う−


 卒業制作に至る一連の学びを通じ、ランドスケープデザインは、そこを訪れた人が「明日も頑張ってみようかな」という前向きな気持になるような場を作ることではないか、との思いをもった。蓋し、これは「創作」という営みに通底するものとも思われるが、歴史を知ることもまたそうなのだろうと思う。加えて、歴史は、それを鏡として、そこに映った自分というものを知るものでもあろう。
 卒業制作で取り上げた忍性(1217-1303)という人物は、師の叡尊(1201-1290)から「慈悲ガ過ギタ」とまで言われた、生涯を病者や貧弱といった社会的に弱い立場にある人々の救済に尽くした鎌倉時代の僧である。死に際し、墓所を3箇所作ることを遺言し、その一つが奈良県大和郡山市にある。昨年、この墓所を訪れる機会があったが、草にまみれている様子を目にし、非常に残念に思った。
 現在も、格差や貧困、そして、いま、社会を大きく揺るがしているコロナウイルスの感染拡大に伴って生じている事象など、様々な社会的な問題がある。また、2021年は個人的体験としても身近なものの病や死に直面し、「死」というものをこれほど身近に感じることはなかったと同時に、「生」ということについても考えざるを得ない年であった。
 墓地という場所は、生や死を考えるに相応しく、鎌倉時代に社会的な問題に立ち向かった忍性の墓を、その生涯や墓所に相応しく整え、その生き方に学ぶ場とすることは今日的な意義があると思ったのがこの地を対象地とした動機である。
 本計画では、人物、場所の歴史性を重視し、過去から学び、今を生きる糧となるような空間づくりを目指して制作を進めた。忍性という一粒の籾がこの地に落ちたことにより、豊かな実りがもたらされることを願って。

池田 裕英【コース奨励賞】

ランドスケープデザインコース

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