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龍虎字

龍虎字(5)

書画コース 伊澤勝典

コース奨励賞

額装 900mm×1800 mm(高知和紙) 宿墨・白墨

伝統的な龍虎図を字で表現することをテーマにした。陰陽と黒白、龍虎の対立と呼応の世界観を字で現代的に表現する試みである。墨と白墨によって生成された不定形の層は、陰陽という二項対立を固定的な象徴ではなく、揺らぎ続ける状態として提示する。その内部に現れる「龍」「虎」の文字は、書かれた形象ではなく、むしろ画面から切り抜かれた余白として機能し、背景との主従関係を反転させる。文字と地、黒と白、充填と欠如が相互に侵食し合う構造の中で、意味は解体され、視線の運動そのものが作品体験として立ち上がる。龍虎という相反する力の象徴を文字として内在化させ、視線より身体感覚で感応させ、書と絵画の境界を横断する表現を試みた。

龍虎字1a「龍」白の大いなる余白の中で、黒の滲みは龍の気脈そのものとして画面を走る。線は形象ではなく「気配」として漂い、上昇や螺旋のベクトルを暗示する。
龍虎字1b「虎」黒の深淵に浮かぶ白の痕跡は、「虎」の骨格的な力感を抽出しつつ、象形を離れた抽象的生命感として現前している。白線による痕跡は爪痕のようであり、裂帛の瞬発力と沈黙の重さを同時に宿す。
龍虎字(3)銀を含んだ白墨による「龍」を、金を含んだ白墨による「虎」を配し、陰陽、天と地、精神性と物質性といった対極的な力の拮抗と循環を一画面に内包させている。
龍虎字(4)金文の字形を引用しつつ、それを規範として再現するのではなく、解体・再構成することで現代の視覚構造へと転位させた。記号としての文字性を後景化し、運動と構造としての「字」を前景化させた。
「心寂白影」は、像、文字、影の三層による視覚構造を生成し、存在と不在の間に浮遊する心の影像を立ち上げる。黒い筆致は存在の痕跡、像の白は空虚の質感、影はその双方が生み出す第三のリアリティとして機能する。

伊澤勝典

書画コース

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