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THE MUSIC ARTISANS 音楽の職人たち

グラフィックデザインコース 佐々木 優実

並製本 / 無線綴じ / A4(縦297mm×横210mm) / 112ページ

現代における我々の音楽への関わり方は、フィジカルなものからデジタルなものへと移行しつつあり、ひと昔前とは大きく異なっている。我々は、コンサートやライブに足を運ばずとも、レコードやCDをプレーヤーにセットせずとも、デバイスとイヤホンとインターネット環境さえあれば、いつでもどこでも音楽を「検索、入手、再生、停止」できる時代に生きている。

簡単に聴きたい音楽が聴ける。それはとても便利で軽やかで、個々の生活に寄り添うものかもしれない。しかし、そこには、音楽を生み出す人と受け取る人の身体性や、一期一会の緊張感がほとんど感じられない。音楽の原点は本来、人間の身体にあるはずなのに、それがどこか遠くへ行ってしまっていることに、危機感を覚えた。
私は、「音楽のフィジカルな魅力を視覚的に表現し伝える」ことで、それを取り戻せるのではないかと考え、音楽のフィジカルな魅力の一つである「演奏家の身体」を「現実の事物を目に見える形で定着させて残すことができる」写真で捉え、写真集という形で表現することにした。

今回本書で取り上げた演奏家は、ヴァイオリン、トランペット、打楽器、フルート、ピアノの奏者。
奏者の身体的特徴(痣や指だこなど)を抜き出して箔押しにしたもの、奏者の身体に焦点を当てたポートレート、奏者へのインタビュー等で構成した。

音楽そのものは、もともと目に見えない、触れられない、実体のない「瞬間芸術」である。だからこそ、音楽を生み出している人の身体や、そこにある様々な情報を「見る」ことで得られるものは計り知れない。
長い年月をかけて音楽と向き合い、自身の身体を耕し、技術を磨き、表現を追求してきた演奏家は、いわば“Artisan(職人)”である。この音楽の職人たちの身体を通して、音楽のフィジカルな魅力を感じてもらえたらと思う。

変形や痣といった奏者の身体的特徴を、「音楽に向き合ってきた時間が目に見える形であらわれたもの」として捉え、箔押しで表現。 箔押しのページを捲ると、奏者の身体的特徴を実際に写した写真があらわれる。

どこが楽器と接触し、どこに負荷がかかり、どのような身体性の拡張が見られるか。通常では見られないような距離やアングルで捉えた。

リラックスした表情の奏者のオフショットと、インタビュー。演奏において大切にしていることや日常生活の中で不意に出る演奏の癖、日々行っている身体のケアなどについて回答してもらった。

佐々木 優実

グラフィックデザインコース

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