花を育てる喜びを
~旭川市常磐公園で生まれる体験型庭園の提案~
ランドスケープデザインコース 岩崎 広志
「花や植物を育てる喜びを味わってほしい」
北海道旭川市は、厳しい寒さと長い冬に包まれる都市である。そのため、植物と触れ合いながら過ごせる時間は限られている。旭川市中心市街地に位置する常磐公園周辺には、図書館や公会堂、文学資料館などの文化芸術的拠点が建ち並ぶ一方で、旧「川のおもしろ館」は十分に利活用されておらず、かつて多くの人が訪れたこの場所も、現在は静かに時が流れている。また、隣接する常盤通では商店街の衰退により閑散としている。
こうした現状を踏まえ、私はこの場所で花を中心に、植物と人々が触れ合いながら時を重ねていく庭園を提案する。それは人生でもっとも苦しかった時期に花と出会い、癒され、やがて植物を育てることが喜びへと変わっていった私自身の経験が、本提案の原点である。
本計画は旧「川のおもしろ館」を解体前提とし、その跡地周辺に「花を育てる体験」を核とした体験型庭園を構想した。庭園の中心には、旭川の象徴である旭橋をモチーフにした外観の温室を設け、冬季においても植物を育てられる環境を整えた。利用者は苗から花を育て、成長した植物を庭園内の花壇や水路沿いに植えることで、この庭園の風景づくりに主体的に参加できる。さらに、植えた花には名前やニックネームを記したプレートを添え、自らの関わりが庭園の記憶に残る仕組みを考えた。
また庭園内には、水路に沿って広がる花々、無数の鯉やカモなどがゆったりと泳ぐ大きな池(千鳥ヶ池)を望む見晴らしベンチ、温室に併設された有意義な学びの時間を過ごせる学習・イベントスペース、そして四季折々の庭園を見渡せる、温かみのあるカフェを配置した。ここを訪れた人は花を育て、眺め、学び、語らいながら、ゆっくりと過ごすことができる。
さらに、温室で育てた苗を石狩川の河川沿いや周辺地域へ展開することで、庭園の活動を都市全体へと拡張することを目指す。庭園を起点とした営みが、地域の景観形成と中心市街地の活性化へと波及していく構想である。
花を「見る対象」にとどめず「育てる対象」として人々が主体的に関わり、その体験からこの地域への愛着と都市の新たな価値を生み出すことを目的にした。
この庭園が、人々にとって花を育てる喜びを感じられる場所となり、この街に新たな記憶と風景が生み出されることを願う。
プレゼンパネル1:本提案のテーマと大事なポイント
プレゼンパネル2:旭川市と常磐公園の歴史的・都市的背景
プレゼンパネル3:対象地周辺の現況と環境分析
プレゼンパネル4:対象地周辺の課題と計画方針
プレゼンパネル5:計画平面図と主要空間の構成
プレゼンパネル6:断面図および植栽と年間の植物開花計画
模型写真:庭園全体
模型写真:本庭園のカフェと噴水、水路と花壇と小さな丘、温室と学習・イベントスペース、畑等の位置関係
模型写真:千鳥ヶ池側から見た庭園全体
模型写真:千鳥ヶ池とつながる庭園の鳥瞰
【京都芸術大学 通信教育部】卒業制作最終発表 ( 2026年3月卒業 ランドスケープデザインコース 岩崎 広志)
生まれも育ちも北海道旭川市。公立はこだて未来大学卒業後、札幌や東京での生活を送ったが心身の不調をきっかけに地元の旭川へUターンした。
旭川で再び暮らすなかで、花や植物と触れ合う時間が心を癒し、少しずつ回復へと導いてくれた。Web関連の仕事に従事する傍ら、フラワーアレンジメントやいけばなに取り組み、フラワーアーティストとして活動を重ねるうちに、花や植物を見たり飾るだけでなく「育てる」ことへの関心が高まっていった。
やがて花や植物を育てることが多くなったことから、庭やガーデニングへの関心が高まり、庭園の設計を学ぶため京都芸術大学のランドスケープデザインコースに入学。学びを深めるほどに、この街の風景や人々の暮らしに、自分の手で何か恩返しをしたいという気持ちが強くなった。
旭川で花を通してこの故郷に貢献したい。その思いが、今回の卒業制作へとつながっている。
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