細道回廊
石神山「三層山水譚」を紡ぐランドスケープ
ランドスケープデザインコース 清川 啓太
作品コンセプト:時間を引き受ける風景基盤の設計
1|立地条件:熊本市西区・都市近郊丘陵の竹林
対象地は、熊本市西区石神山の緩やかに傾斜する丘陵地の竹林。熊本市の都市公園である石神山公園を中腹に、裾野を住宅地に囲まれたこの地は、里山地形を残す一方、山林管理の弱体化により竹が密生し、光・風・水の循環が停滞している。里山が機能しなくなった現代において、人と自然との境界が曖昧になった場所であり、単なる緑地整備ではなく、管理構造そのものの再設計が求められる場所である。
2|設計の基本姿勢:人の関与の必要性
本計画は「細道回廊」と名付けた一本の小さな山道を起点に、人の関与とその管理強度に応じて風景に濃淡を与える設計とした。地形分析に基づく三層構造「石・竹・水」を、この山の秩序(ランドスケープ)を整える基盤と位置付け、回廊沿いに割石縁石、敷石、竹ベンチ、川床、石積水路など地域素材による「舞台装置」を配し、人が「三層」を意識できる空間を意図した。ここでは、「作庭四分・育成管理六分」の思想のもと、回廊を囲む竹林の更新管理とその時間を内包する。
3|経営構造:Park-PFIによる持続基盤
本計画では、基盤管理の持続性を図る枠組みとして「Park-PFI」を想定する。石神山公園に連なる「細道」自体は、園路整備の延長で自治体が担う一方、小回りが効く収益機能(小規模カフェや物販等の施設)を民間が担い、更新管理費を自律的に循環させる。ここでの狙いは、施設収益ではなく、対象を限定した「細道回廊」で、小さくとも持続可能な経済的土台を官民で共創することである。
4|運用装置:Living Labとして実践
もう一つ、更新管理を学ぶ「Living-Lab」を設置し、竹林更新、素材研究、行動観察などを継続的に行う。ここでは、地域住民、学生、研究者、民間事業者が参画し、実践と検証を循環させる体制を運営することで、「柔軟性のあるランドスケープ空間」を地域社会で支える。その循環(PDCA)を通じて、細道回廊を軸に、更新対象地の拡大・縮小を含む空間設計を変化させる。
5|時間を引き受けるランドスケープ
細道回廊は、「里山という機能」が成り立たなくなった現代、人が「小さな山道」を起点に山への関与を続ける地域設計への小さな試みである。従い、園路設計のアプローチで対象区画「細道回廊」を整えることに加え、それを囲む持続可能な関与条件そのもの(竹林)に働きかけること、ランドスケープアーキテクトの職能を通じた社会教育的な実装実験である。
Park-PFIパート
Living-Labパート
清川 啓太
ランドスケープデザインコース
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