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人物画 I

(大学院)洋画分野 大沢 美佳 (Mika Osawa)

80.3×65.3cm
油彩 キャンバス

本作は実在のモデルを対象とした油彩人物画である。制作にあたっては、人物の外見的再現よりも絵具の堆積や筆致の痕跡を通して身体と時間がどのように画面に刻まれるのかを主題とした。油絵具は乾燥や収縮といった物理的変化を経ながら定着し、ストロークの重なりは不可逆的な層を形成する。その過程は制作時の判断の揺らぎや呼吸のリズムと結びつき、画面に微細な差異として残る。本作では下地の質感や筆圧の変化を意識的に活かし、人物の周囲に生じる余白との関係を探った。
背景は人物を取り囲む空間として静かに広がるが、それは単なる装飾ではない。描き込まれた部分と描かれずに残された部分の対比は、存在の有限性を際立たせる構造として機能する。ここでいう有限性とは、死に向かう存在としての人間の時間構造を指す。油彩という媒質は物質的な不可逆過程を内包するがゆえに、その有限性を視覚的かつ触覚的に伝える力を持つ。
一方で生成AIによる画像制作は、同一条件下での再生成や即時的な分岐を可能にし、可逆的なプロセスの上に成り立っている。修了研究ではその対照を通じて「重さ」と「軽さ」という概念を導き出した。本作はその比較の基準となる作品であり、有限な身体による行為がどのように物質として定着するのかを示す試みである。絵画を視覚情報の集積としてではなく時間と存在の痕跡が沈着する場として提示することが本作のコンセプトである。

人物画 II
116.7×91.0cm
油彩 キャンバス

大沢 美佳 Mika Osawa

(大学院)洋画分野

油彩を主軸に身体性と物質性を手がかりとして人間存在の時間性を探究している。近年は生成AIによる画像制作にも取り組み、アルゴリズムによる可変的なイメージ生成と絵具の不可逆的な堆積との対照を通じて「有限性の美学」を再考している。絵画を単なる視覚表現としてではなく、物質がそこに確かに在るという存在感と人間の感情や判断の痕跡が交差する場として捉え、制作と理論研究を往還しながら思考を深めている。

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