『Berries』『Star eye』『Snapdragon』
(大学院)洋画分野 水谷 江希
各116.7x91cm、アクリル、カンバス
コンセプトは「わたしが見た花・エディブルフラワーを描く」。農家としてエディブルフラワー(食用花)の生育に向き合い、料理人として花を皿に咲かせた生活の中で、育て、素材として調理し、食し、見つめてきた「花」を媒介として得られた様々な身体的経験、味覚・香気・触覚・視覚・食覚などの感覚や記憶・想像等を、拡大描写を用いて「いろ」と「かたち」として再現した。
ここでいう「花」は、独自に定義する「花」の考えに基づく。最古の言語と言われるシュメール語やアッカド語では、「つぼみ」から「花」、やがて「果実」となって終わりを迎えるまでの一連の流れをすべて含めて「花」として捉えている。芽吹き、咲き、実り、やがて枯れ、朽ちる。枯れて朽ちるその前に、人間や動物たちを楽しませ、豊かにし、養う。「花」は、そのすべての時間を内包した存在としてあるが故に、それを「花」と定義する。また、できる限り自分で育て、食用であることを「花」の定義として付け加えたい。
その生育の気配、食材としての姿、口に含んだときの味・香り・食感など、多様な命の存在である「花」と関わることで、「わたし」が得た五感を含めた様々な感覚と身体的経験を通じた豊かな記憶が制作の源泉となっている。「花」を前にして生じる「感覚の揺らぎ」や「内的な動き」の可視化は、「わたし」が感じ、心が動いた結果として生まれる純粋で能動的な行動として、絵具の層や色彩の選択と強弱、筆致のリズムへと置き換え、「いろ」と「かたち」への再構築を試みることで、鑑賞者が花をめぐる多層的な感覚を追体験する「感覚装置」となりうる絵画空間としての作品の制作を目指した。
3枚の作品は、玄冬に鳥たちの楽しく豊かな食卓となる芳醇で甘酸っぱい味を想像した『Berries』、春の訪れを告げる小さく繊細な砂糖菓子のような花弁の『Cat’s eye』、初夏にぎやかしく甘い香りが漂う想像を交えた『Snapdragon』を描いた。
116.7x91cm、
アクリル キャンバス
16.7x91cm、
アクリル キャンバス
116.7x91cm、
アクリル キャンバス
水谷 江希
(大学院)洋画分野
2016年に農家創設のため、都心部から中山間地域へ移住。エディブルフラワー(食用花)の生産と都内の飲食店へ供給を行いながら、自身のレストランでエディブルフラワーを使用した調理と宿泊業を運営。2023年にエジプトで見たカルカデをきっかけに、24年ぶりに再び筆をとる。現在は園芸愛農家として新しい移住先で土づくり・庭作りを慣行中。自身が定義する「花」を描くことを模索している。
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