歴史遺産コース 忍田 聡一郎
世界遺産に登録された明治五年(1873)操業の旧富岡製糸場には、現在非公開の直径15mの鉄水溜(水槽)が存在する。わが国最古級の鉄製建造物であり、横浜製造所に発注したこと以外は明確でないことから、建造経緯を考察した。
まず国産鉄での建造の可能性は、本鉄水溜と明治時代の釜石と中小坂の非鉄成分の分析結果を比較したが、本鉄水溜は、ヨーロッパ産の特徴をもち国産鉄との分析結果と合致しなかった。また当時わが国には鋼板圧延技術がなかった。横浜製造所は横須賀造船所建設の資材を提供する準備工場であったので、横須賀造船所の技術供与がなければ水溜建造は困難であった。フランスで製造された鋼板を輸入して、横浜で地組し部材を富岡製糸場に輸送して建造した推定できた。輸送について当時横浜製造所は、半官半民の日本国郵便蒸気船会社に貸与されていて、東京湾→江戸川→利根川→新町河岸(高崎)を舟運で、さらに陸路で部材を搬送したと推測した。
先行研究は皆無で、横浜製造所関係の資料の多くは関東大震災で焼失していた。コロナ禍で図書館の利用ができない時期やフィールドワークの未実踏があり、研究は困難を極めた。何とか論文の完成をみて安堵している。
旧富岡製糸場鉄水溜建造についての考察
群馬県
忍田 聡一郎
歴史遺産コース
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