歴史遺産コース 【学科賞】髙野 素子
福島県いわき市久之浜では、明治期から久之浜張子と呼ばれる工芸品が作られていた。作品は郷土玩具愛好家には知られていたが、世間一般での認知度は低く廃絶にいたり、記憶の風化につれて研究課題が取り残されている。そこで本稿では、久之浜張子の「廃絶時期」と「作品の特徴」を明らかにするとともに「伝統の継承」について論考したい。三春張子は、福島県の郡山市西田町と田村郡三春町で作られており、張り子の伝統が続く制作地としては久之浜から最も近くに位置し比較対象とした。
久之浜張子は文献資料に乏しく、職人は既に他界している。制作実態の調査では現地に赴き聞き取りを重ね、廃絶時期を平成23年であると特定した。作品の造形的特徴を捉えるにあたっては、所蔵する親族やいわき市、三春町、三春張子職人の協力を得て計測や撮影が完遂し感謝の限りである。作品が示す郷土色や手作りの味わいは、張り子が地域を象徴する工芸品であることの証しであり、久之浜張子の途絶は残念でならない。廃絶を終わりとせず始まりとして受け止め、伝統工芸の継承という難題に取り組む前向きな姿勢が地域に問われていると考える。
久之浜張子の研究―三春張子と比較して―
福島県
【学科賞】髙野 素子
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