所長挨拶

平成30年度を迎えてご挨拶を申し上げます。

京都造形芸術大学文明哲学研究所の所長を一昨年10月1日からつとめています。1年半が経過しました。再びの春が巡ってきて、心を新たにして職務に励みたいと思います。

本学の建学理念は『藝術立国』です。それを通じて「核」廃絶と世界平和をめざす教育をおこなっています。創設者である德山詳直初代理事長の強い思いを受けて、文明哲学研究所、略して文哲研は、2012年10月27日に設立されました。初代理事長が敬愛する吉田松陰(1830-1859)の命日です。松陰は私塾をおこし、明治という時代を切り開く人材を陶冶しました。

建学の理念と文哲研に託された使命をわたくしなりに翻案すると、「反核・反原発」と「人道主義(ヒューマニズム)」の旗を掲げ、学問と芸術を交差させることで、自由・平等・博愛といった人類が共有する理念を実体化することだと思いました。またそうした理念のもと、この世界の森羅万象に優しいまなざしを向けられる若者を育てます。

平成29年度の1年間を振り返ります。初年度の小豆島に続いて下北半島での研修旅行をしました。野生のサルとジオパークをめぐって、現場から発想する機会です。六ケ所村の核の再処理施設や北限のサルとその生息地そしてジオパークの実際を見ることができました。

またブータンとの出会いの年でもありました。10月26日にブータン王女(ソナム・デチェン・ワンチュクさま)が本学を来訪され、德山豊理事長ならびに尾池和夫学長にお会いしました。ブータン王女から託された絵本をアニメ化するという課題をいただいています。

教育面では、大学ならびに大学院と通信教育に、授業を提供することで参画しています。研究面では、芸術平和学や芸術認知科学という分野での専任教員の活動があります。ぜひHPをご覧ください。さらに昨年度新たに2名の客員教授を10月1日よりお迎えしました。河合江理子さん(京大教授)と久能祐子さん(米国S&R財団代表)です。本学にはない経済学という分野の理論と実践についてご助言いただきます。 

所長着任後の新たな取り組みとして「文明哲学セミナー」を始めました。第4回(本年4月17日開催)は坂本龍太さんの「ブータンの国と人々」です。昨年の王女の来訪を契機に、研究所の新たな取り組みとして「幸福の希求」を掲げます。ブータンは国民総幸福(GNH)の希求を憲法9条でうたっています。本年度中のブータンへの渡航を目標に準備を進めています。

まこと小さな研究所ですが、本学のユニークな試みとなるよう、これからも日々精進してまいります。
なにとぞ、よろしくご指導・ご支援を賜りますよう、所員一同に成り代わりお願い申し上げます。

2018年(平成30年)4月18日

所長 松沢哲郎

墨汁一滴

このたび尾池和夫学長の招請があり、京都造形芸術大学文明哲学研究所の所長を10月1日からお引き受けました。微力を尽くす所存です。なにとぞよろしくお願いします。

本学の建学理念は『藝術立国』です。それを通じて「核」廃絶と世界平和をめざす教育をおこなっています。創設者である德山詳直初代理事長の強い思いを受けて、文明哲学研究所は2012年10月27日に設立されました。ちなみにこの日は、初代理事長が敬愛する吉田松陰(1830-1859)の命日です。松陰は私塾をおこし、明治という時代を切り開く人材を陶冶しました。文明と呼ばれる人類の発展には明るい側面もあれば暗い側面もあります。その文明がもつ背反する両面を止揚する哲学を創成する。それが本研究所の使命だといえるでしょう。

略称「文哲研」は、連携校である東北芸術工科大学との共同研究機関として設立されました。2015年9月1日に、京都造形芸術大学単独の附置研究所として再出発しています。設立からわずか4年たらず、初代所長の井原甲二さん、所長代行の尾池和夫学長をはさんで、わたくしが第2代の所長ということになります。これまで、平和文明会議(専門家による研究会議)や、市民講座開講、藝術平和学の確立などの活動をおこなってきました。

まこと小さな研究所ですが、託された思いは大きいものがあります。建学の理念と文哲研の使命をわたくしなりに翻案すると、要は、「反核・反原発」と「人道主義(ヒューマニズム)」の旗を掲げて、学問と芸術を交差させることで、自由・平等・博愛といった人類が共有する理念を実体化することだと思いました。またそうした理念のもと、この世界の森羅万象に優しいまなざしを向けられる若者を育てます。

京都造形芸術大学のロゴは墨汁の一滴だそうです。正岡子規(1865-1902)に『墨汁一滴』という随筆集(岩波書店)があります。学長の尾池先生も俳人として知られた方ですが、私事ながらわたくしの郷里は愛媛の松山で子規と同じです。脊椎カリエスを病んだ末期の目で、「黒きまでに紫深き葡萄かな」と子規は詠みました。物事を深く見つめれば、一粒の葡萄にも世界の真実があるでしょう。一粒の葡萄、一粒の麦、一滴の墨汁、そうした小さなものに目配りすることから、日々一歩ずつ、仲間とともに前へ進みたいと思います。なにとぞ、よろしく一臂のお力添えをお願いします。

2016年(平成28年)10月10日

Profile

所長 松沢哲郎

http://www.matsuzawa.kyoto