文芸表現学科

インタビュー

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2020年7月3日  インタビュー

【先生紹介05】小説家・辻井南青紀先生-体験授業「エッセイを書こう」に向けて

 

こんにちは、スタッフの大賀です

今日は久々となりました「先生紹介」をお届けします◎

 

今回ご紹介するのは、7月5日(日)に開催する「1日体験授業(オンライン)」を担当してくださる、

小説家の辻井南青紀(つじい・なおき)先生です。

 

 

【先生紹介05】小説家・辻井南青紀先生

辻井先生01

文芸表現学科の授業のなかで、辻井先生には<小説>についてお教えいただいています。
そもそも小説とは、どんな表現なのか、どんなコトやモノが表現されてきたのか、どうのように表現するのか。
「百讀」という授業では、古今東西の名作読み深め、

「表現メソッド」では小説の構造を理解し論理的に物語を構築していく術をお教えいただき、
映画学科との協同授業「映画と文芸」では、映像表現と文章表現それぞれの表現を捉え直し、

表現の本質を自身で考察していく場を設けていただいています。

 

 

 

今回の体験授業で辻井先生には、思ったことや見聞きした物事を書いて、

自由に「気持ち」や「心情」を表現する<エッセイ>についてお教えいただきます。

ことばでフィクションの世界を描きだす小説家の先生にとって、現実の日常を描く<エッセイ>の魅力とは。

 

まずは、先生の専門領域である<小説>とその魅力についてお訊きしました。

 

 

 

 

 

先生の専門領域である<小説>とその魅力について教えてください。

 

 たとえば映画や演劇など他の表現領域だと、誰か他のひとと力を合わせて何かを作るということが必要になってくるし、そのことがうまくできないと、そこから先へ進めない、ということに陥りやすいですが、小説の場合はほとんどすべて「自分」が頼りです。
 もちろん助言を得たりする機会は重要ですが、最終的には、どこまでいっても「自分」次第です。ここがしんどくもあり、究極の自由を感じるところでもあります。
 この「自分」というものが、なんとも厄介です。他者に認めてもらいたいという「承認欲求」にまみれていて、ちょっと甘やかすとどこまでもつけあがるし、すぐ「自分」自身に酔いしれる。
 だからこそ、有史以来書かれてきたすべての小説=物語が、最終的には「自分」のものではなく、これを読むだろう、「今」「ここにいない」=「いつか」「どこか」にいる「他者」、に向かう何かだということが、とても重要だと感じます。
 では、いったい、何を、どのように書けばいいのか? どうすれば、少しでも価値ある何かになって「いつか」「どこかにいる」「誰か」にとって意味のあるものになるのか? 
 ほんとうはまったくわからない、というのが本音で、その答えを探し続けています。

 

 

 

小説家としてデビューされた後も「書くこと」について真摯に向き合う辻井先生。

自身を頼りにし、けれどときに突き放し、律することが要求される「書く」ということ。

そんな書き手である先生が、読み手となったときに、どんな視点で作品をご覧になられているのか。

オススメの小説をお訊きしました◎

 

 

 

 

辻井先生のおすすめ小説を教えてください

 

悪霊』(フョードル・ミハイロヴィッチ・ドストエフスキー/江川卓訳/新潮文庫)
日本では明治維新の時期(明治六年)に書かれたロシアの長編小説で、当時の革命をめぐる若者たちの群像劇です。21世紀の今読んでもまったく古さを感じさせないのは驚異的なことですが、優れた小説とはみなそうなのかもしれません。読んでいて、“ここに人間の世界そのものがある”と感じさせる、凄みと普遍性を備えた傑作です。

 

 『』(フランツ・カフカ/原田義人訳/青空文庫)
測量技師の主人公Kは、「城」と呼ばれている場所へ行かなければならないのですが、ほんとうにいろんなことがあって、どうしてもたどりつけない、という不思議な小説です。主人公の、前へ進むのでも後退するのでも横へ逸脱するのでもない、なんとも不思議な道行きを、様々な人物が邪魔したり味方したり、あるときはなにも寄与しなかったりする。筋立てを追うだけだと退屈するかもしれませんが、この作品の中に「映り込んでいる」ともいうべき、われわれが生きているこの世界のありようの不可思議さ、奇妙さ、驚嘆すべき何か、それらそのものが醍醐味であるような小説です。

 

 

 

フィクションである小説のなかでも、現実と共通する真実や世界に触れられる。

フィクションとノンフィクションは隔たれたものではなく、地続きであるということが実感できる作品をお教えいただきました。

 

最後に、体験授業でお教えいただく<エッセイ>について。

文芸表現学科では小説をはじめ「創作」について学びたいという学生が多くいます。

「創作」を学びたいという人にとって、日常を描く「エッセイを書く」ということは、

どう「創作」に活きてくるのか、先生のお考えをお訊きしました。

 

 

昨年の「エッセイを書こう」の様子。

昨年の「エッセイを書こう」の様子。

小説家である辻井先生だからこそ感じる、エッセイの魅力を教えてください

 

 実は、エッセイとか随筆といったもののエッセンスは、物語を創作する営みの根本にある何かと、同一だと思います。
 そこには、「思うことを思うままに」「今」「ここで」「自由に」「語る」という、何かを言葉で表現しようとするときに必要な諸条件が、すべて揃っています。
 物語創作の作業に慣れてくると、忘れてしまいがちな感覚があります。たった今申し上げた、「思うことを思うままに」「今」「ここで」「自由に」「語る」、という、表現することの直感的な歓びの感覚です。この息吹を忘れないためにも、自由にエッセイを書くという経験は、ぜひとも必要だと感じます。
 また、エッセイというのは、読者の共感を呼び覚ますために書かれるものです。この点において、エッセイは読者という「他者」に限りなく近づいて、価値ある何かになることができると思います。
 今回の体験授業では、同じ一つの教室に、何かを言葉で表現したいという志のあるひとたちが集まります。言い換えれば、集まったひとの数だけ真摯な読者がいる、という状況です。エッセイというジャンルを通して、自由に何かを語り、読者に向かって近づいていく、という経験を、一緒に深めてゆきましょう。

 

 

 

 

 

 

辻井先生、ありがとうございました◎

 

 

 

「何かを言葉で表現しようとするときに必要な諸条件が、すべて揃ってい」るという、<エッセイ>。

 

7月5日(日)の体験授業『エッセイを書こう』では、実際にみなさんにエッセイを書いていただきます。

体験授業では、辻井先生だけでなく、これまでご紹介した文芸表現学科の先生方、学科長で文学研究者の河田先生、そして参加してくださるみなさんと、みなさんのエッセイ作品を読む時間も設けていますので、お申し込みいただいている方は、どうぞお楽しみに。

 

お申し込みがまだの方も、定員を増やして、7/4(土)24時まで受け付けていますので、まだまだ応募をお待ちしております◎

「オンライン(Zoom)で不安だ…」という方もご安心くださいね。

授業までにZoom練習の機会を設けているので、授業までにZoomを使いこなしちゃいましょう。

 

 

それでは、皆さんにお会いできるのを学科一同、心よりお待ちしております〜!

 

 

 

 

 

20 OC

■1日体験入学オープンキャンパス(オンライン)
誰でも芸大生になれる特別な2日間!
文芸表現学科の授業、「エッセイを書こう」「ショート・ショートを書こう」を体験できます。
毎回すぐに満席になってしまうので、お申し込みはお早めに◎


日程:7/5(日)「エッセイを書こう」担当:辻井南青紀(小説家)
   8/2(日)「ショート・ショートを書こう」担当:山田隆道(作家)
※オンライン(Zoom)で実施します。
※どちらの日程も、午前・午後の時間帯をお選びいただけます。

詳細・お申し込み:https://www.kyoto-art.ac.jp/opencampus/oc07-05_08-02/

イベントへの問い合わせ:京都芸術大学 アドミッション・オフィス

電話受付時間(月曜日~土曜日 09:00~17:30)

0120-591-200(アドミッション・オフィス直通)

 

 

(スタッフ・大賀)

 

 

 

 

 

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2020年5月18日  インタビュー

【先生紹介04】作家・山田隆道先生

 

こんにちは、学科スタッフの大賀です。

大学では、いよいよ今週から前期授業がはじまりました。

京都市内の小・中・高校でも、一部オンラインで臨時授業が行われているようですが、

当大学では、前期中は全てオンラインでの授業となりました。

 

学生のみなさんにとって、オンラインでの授業には戸惑いもあるかと思いますが、「この状況をどう活かすか」、新しい価値を見出す試みとして、この状況をともに乗り越えていけたらなと思っています。

 

 

さて今日は、「エンターテイメント」、「笑い」と言ったらこの方、

作家の山田隆道(やまだ・たかみち)先生をご紹介いたします◎

 

 

 

 

【先生紹介04】作家・山田隆道先生

 

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作家の山田先生は、主に創作の授業を担当してくださっている先生です。

授業では、学生が肩の力を抜いて、本来の力を発揮できるよう、「楽しい」を大切に授業を展開してくださっています。

(たまに楽しすぎて、これはコントショー…?と錯覚してきます(大賀談))

 

また、学科のキャリア(進路)担当もしてくださっていて、キャリアの授業では、学科の学生たちが、学科での学びを卒業後も活かせるよう、そして続けられるよう、細やかな支援・指導をしてくださっています。

 

そんな先生に、これまでのお仕事をお訊きすると「作家です」と一言。

いや、先生、作家でもいろいろあるじゃないですか…! 

「一言じゃ言えないんだよ」ということで、今回も、先生のご専門とその魅力をお教えいただきました◎

 

 

 

先生の専門領域とその魅力について教えてください。

 

この学科では、主に小説と脚本の創作指導を担当しています。僕自身、作家として長く活動してきましたから、その経験を学生に還元しているわけです。

なお、作家といっても、僕の場合は小説と脚本だけでなく、漫画原作者、放送作家、コント作家でもあります。今思えば本当に節操なく多様なジャンルを書き散らかしながら、物書き界隈の末端と隙間で拾い食いしてきました。我ながらうさんくさいです。

ただし、そんな中でもひとつだけ共通している点があるとすれば、それは「言葉によるエンタテインメント」ということでしょうか(うさんくさいですね)。僕の原点は放送作家、コント作家でしたから、そこで養われたエンタメ精神は根深いものがあります。業と俗っぽさの塊なんですね、僕は。

だから、僕は学生にエンタメの話をよくします。エンタメとはすなわち生き方だと思っています。けれど、「生き方とはなにか」みたいなものを説くつもりはありません(うさんくさいですし)。煙に巻くようで申し訳ないですが、エンタメとは生き方であると辿り着くまでのプロセスが重要で、そこを学生に歩んでほしかったりします。うさんくさいですが。

 

 

 

「うさんくさい」を連発する先生に、うさんくさくない、オススメの本をお訊きしました◎

 

 

 

 

山田先生のおすすめ本を教えてください

 

こういう暗澹たるご時世だからこそ、僕は「笑い」をテーマにして、おすすめ本を選びました。

笑いって救いだと思うんですよね。

 

①『レイ・クーニー笑劇集

(Ray Cooney (原著), 小田島 雄志 (翻訳), 小田島 恒志 (翻訳)/劇書房)

大学時代、僕がコントを書き始めたときにもっとも参考にした本です。笑いや喜劇の基本構造って悲劇の客観視なんですよね。そして、その悲劇が卑俗なものであればあるほど、客観的には滑稽に見える。喜劇と悲劇は紙一重なんです。この物語はまさにそれです。

 

 

②『頭の中がカユいんだ』(中島らも集英社文庫)

人間は絶望的な悲劇にもそのうち飽きる、絶望的な悲劇すらもそのうち笑えてくる。この小説の主人公が抱えている問題はとても重くて切実なんですが、作者はそれすらも大笑いしていると思うんです。

 

 

③『浄土』(町田康講談社文庫)

短編小説集です。2作目の『どぶさらえ』は特に笑っちゃいました。最初におすすめしたレイ・クーニーはとても論理的に笑いを書いているのですが、これはもう、そんなのも関係ないというか、なんというか、とにかくもうアホですね。すごいです。

 

 

④『現代語裏辞典』(筒井康隆文藝春秋)

辞書パロディの元祖的存在であるアンブローズ・ビアス『悪魔の辞典』と迷ったんですが、個人的に筒井版シリーズの、中でもこれが一番好きです。ちなみに普通の国語辞典も見方によってはコントですよ。しょうもない言葉についても、えらい学者が大真面目に解説しているんですから、ドリフの博士コントと構造が似ています。

 

 

⑤『蒲団』(田山花袋青空文庫)

一般的には明治時代の自然主義文学を代表する私小説として有名ですが、現代のエンタメ的な視点で読んでみると、けっこう笑いの基本構造に近いものがあって、今風に言えば「ラブコメディ」だと思うんです。

 

 

 

 

少し、単調になりだしているこの日々に、気分を変えられる「笑い」の本。

みなさん、ぜひ、読んでみてくださいね◎

 

 

それでは最後に、このBLOGを観てくださっている、在学生、そして「文芸」に興味を持ってくださっているみなさんへ。

これから、オンライン授業で活用していく「ZOOM」との付き合い方について、メッセージをいただきましたので、お伝えします◎

 

 

 

 

 

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学生のみなさんへ

 

みなさん、ZOOMなどのミーティングアプリには慣れましたか? 

 

僕は3月下旬ごろからZOOMを使い始め、最初は不安と戸惑いが大きかったのですが、ZOOMに日々接しているうちにだんだん慣れてきて、気づけばZOOMのことが好きになって、一時期はZOOMに夢中で四六時中ZOOMのことばかり考えるようになったんだけど、そのせいかZOOMとの距離が近くなりすぎて、だんだんZOOMのことがうざくなってきて、ZOOMの些細な不具合にまでいちいち腹を立てるようになってきたから、4月の末ごろには思いきってZOOMと別れることまで本気で考えたんだけど、5月のゴールデンウィーク中に持て余した時間をZOOMに救われて、そこでZOOMの良さにあらためて気づかされたっていうか……、うーん、なんていうんだろ、とにかくそれ以降はZOOMのことが前よりもっと好きになって、今ではZOOMのことが好きだってことすら考えないような当たり前の存在になったっていうか……まあ、これが愛ってやつなんでしょうね。

 

だから、僕はもうZOOMが手放せません。そのうち、みなさんとリアルにお会いできる日が来るとは思いますが、そのときもみなさんと対面しながらZOOMでお話しするという、海辺でプールに入るみたいなわけのわからないことをするかもしれません。言わばオフライン型オンラインですね。寂しがり屋の一人好き、みたいなもんです。

よろしくお願いします。

 

 

 

 

オンライン生活が明けた後の山田先生は、どうなっているのでしょうか。

みなさん、ご期待くださいね。

 

 

 

 

 

 

【先生紹介】、前期中はまだまだ続きますので、どうぞ、お楽しみに◎

 

 

(スタッフ・大賀)

 

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2020年4月30日  インタビュー

【先生紹介03】編集者、著述家、詩人・中村純先生

 

現在、文芸表現学科がある「人間館」のロビーには、胡蝶蘭がずらっと並んでいます。

胡蝶蘭の花言葉は「幸福が飛んでくる」。

花にさそわれて、これから幸福がやってくるのかもしれない、と思うと、少し元気が出てきたスタッフの大賀です。

 

 

 

さて、文芸表現学科の先生紹介・第三弾をお送りいたします。

今回は、編集者・著述家、そして詩人である、中村純(なかむら・じゅん)先生をご紹介いたします◎

 

 

 

 

 

【先生紹介03】編集者・著述家、詩人・中村純先生

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昨年のプロフェッショナル特講の様子。その際にご紹介いただいた詩誌『詩と思想』(土曜美術社出版販売)で、中村先生は編集委員をされています。

中村先生は、編集者・著述家・詩人として、文芸に関わる様々なお仕事をされています。

 

そんな先生には、昨年から文芸表現になくてはならない「書く」「読む」、そして「編む」ことをお教えいただいています。

1年生の必修授業の「百讀」や「文芸表現基礎」では、書く・読むことの基礎力を。

2年生以上の授業では「百讀」では、基礎応用として、過去・現在・未来を超えていく作品を読み解き批評する力を。

2年生から4年生までが集うゼミでは、実社会を読み解き、雑誌やWEB媒体・ラジオ放送などで、新たに見出した価値を届ける編集力・創作力を育んでくださっています。

(中村ゼミ生執筆:ことばと芸術で社会を変革する-SDGsの実践「鶴橋フィールドワーク」(瓜生通信))

 

 

次世代に残せるものはなんだろう、と過去・現在・未来を見つめる中村先生。

 

「専門領域を教えてください」とお尋ねしたところ、ただただ文学が好きで、自身ができることを信じて、社会を見つめてきただけだ、と少し戸惑われておりました。

 

書く・読む・編むを横断される先生の根底にあるものとは。

そして、2020年の今、皆さんへお送りするおすすめの本をお訊きしました◎

 

 

 

 

 

先生の専門領域とその魅力について教えてください。

 

私は実務家教員なので、専門といわれると思案します。言葉と教育に総合的に携わってきたかな、というくらいにしておきます。編集者(雑誌、書籍、教科書)・著述業(エッセイ、聞き書き、文芸評論、書評、取材記事)、詩人です。著書は詩集とエッセイ集、インタビュー集など。(詳しくはこちら

 

言葉で自己と他者に関わると、心の中にある深く静かな湖に触れることがあります。

編集者や聞き書きや取材、あるいは教育やキャリアカウンセリングは、「いまだ書かれざるその人の物語」を掬い取って形にするお手伝いをする仕事です。その人の存在、尊厳に深く触れることになります。掬い取るこちらも、素手と素足の人間性と想像力と知性が問われます。互いの存在を感じ、深いところで出逢う幸福な仕事です。

 

20代のとき、自分の倍以上生きてきた方たちの言葉や佇まいや願いを聴き、記事や本の企画にするとき、自分の力量不足(知識も人生経験も!)に、立ちすくむような思いがありました。若いときに出会った先生、編集者、作家、詩人の先輩たちに、真摯さと謙虚さと継続的な努力のみが、自身と仕事を裏切らないということを教えていただきました。出版の仕事は時空を超えます。先人が遺した本がこれからを生きる手がかりになります。

 

 

 

 

 

おすすめの本をお尋ねしたところ、テーマを決めて選書してくださいました◎

 

 

 

 

「書を読んでひきこもろう」2020年におススメの本

being(在ること)と深めることを考える2020年に―

 

沈黙の世界(ピカート/佐野利勝訳/みすず書房)

ピカートは医学者で文筆家。言葉と沈黙、沈黙と詩について深く考察した哲学書です。

ざわざわとした出版社を辞めてひとり静かに戻った20代の時、言葉と本と自身の関係をとり戻すきっかけになった本です。

 

五月の風―山尾三省の詩のことば(山尾三省/野草社刊・新泉社発売)

世情はコロナ禍のニュースでざわめいています。それでも葉桜は美しく、人間が生産活動をやめた地球の空気は澄んでいます。

詩人山尾三省は、1970年代の高度成長と公害問題が同時に起きていた東京を離れ、家族で屋久島に移住し、晴耕雨読、詩作、いのちを慈しんだ祈りの暮らしをした詩人です。

 

ルピナスさん―小さなおばあさんのお話(バーバラ・クーニー/かけがわやすこ訳/ほるぷ出版)

ルピナスさんは、海をみおろす丘の上の、花に囲まれた小さな家で暮らすおばあさんです。 

司書をして世界中を旅した女性は老いた今、「世の中を美しくする」ためにルピナスの種を蒔き、やがて花のもとに子どもたちが集まります。美しい絵本です。

 

夜と霧(フランクル/霜山徳爾訳1985年、池田香代子新訳2002年/みすず書房)

私は霜山先生の訳が格調高くて好きですが、池田先生の訳は読みやすいです。

ユダヤ人としてアウシュビッツに収容され、生還したフランクル(心理学者)が、ホロコーストの人間を深く観察、洞察した書です。限界状況において人間性と尊厳を喪わなかった人、絶望しなかった人たちに、芸術家、詩人、心理学者、宗教者がいました。絶望をせず未来を創造、想像できる知性を持ちうるか。今を生きる手がかりに。

 

風琴と魚の町(林芙美子/青空文庫)

青空文庫から一冊ということで検索したら、女性の作家や詩人が5人ほどしかいませんでした。アファーマティブアクション(積極的格差是正)のために、林芙美子を推薦します。昭和初期の女性の物書きは、教育を受けることのできたインテリ階層(しかも支配階級)の女性に限られていました。そんな時代にフリーター労働者の芙美子が作家デビューするのは大変なこと! ながしの風琴(アコーディオン)弾きの父と母とともに、幼い芙美子が広島の海沿いの美しい街尾道を訪れたときの回想です。

 

 

 

 

 

このBLOGを読んでくださっている皆さんへ、メッセージもいただきました◎

 

 

 

 

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言葉、文芸に向き合う若い人たちへ

あなた方の佇まい、声、迷い、言葉ときっと「再会」できると思っています。

人類が今経験していることは初めてのことではありません。かつて似たことを経験した表現者たちはどのような言葉を紡いだか。今、世界の知性はどのように未来を展望しているか。よかったら辿ってみてください。朗らかに歩んでいきましょう。リスペクト(敬意)をもって、自身と他者を尊重し、言葉に向き合ってくださることを願っています。

 

 

 

 

 

中村先生、ありがとうございました◎

 

最後に、中村先生が企画から執筆を手がけた編著書をご紹介いたします。

ある分野について調べて、執筆してみたい!という方へ。

ぜひご覧になってみてください◎

 

 

茂山逸平 風姿和伝 ぺぺの狂言はじめの一歩

出版:春陽堂書店

関連記事:

「風姿和伝」現代ニッポンの古典芸能と諧謔(かいぎゃく)を語る- 茂山逸平×山本太郎(瓜生通信)

「おもしろい」を繋げる。ー 編集者という仕事(瓜生通信) 

 

 

憲法と京都』京都の15人が、憲法を語り行動する

出版:かもがわ出版

 

 

 

 

 

さて次回は、「笑い」といったら? の、あの先生です。

どうぞ、お楽しみに◎

 

 

 

 

 

(スタッフ・大賀)

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2020年4月22日  インタビュー

【先生紹介02】書評家・江南亜美子先生

 

 

無事、豆苗を収穫し終えたスタッフの大賀です。

(中華炒めにして美味しくいただきました)

 

新入生・在校生、そして文芸表現学科に興味を持ってくださっている皆さんへ。

前回に引き続き、今日は、書評家の江南亜美子(えなみ・あみこ)先生をご紹介します◎

 

 

 

 

【先生紹介02】書評家・江南亜美子先生

 

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江南先生は、様々な本と出会い、対話をするように読み、実社会との繋がりなどを導きだし、その本を必要とする人に届くように「ことば」を紡ぐ、「書評」というお仕事をされています。

 

また、当学科では「百讀Ⅴ・Ⅵ」の授業を担当していただき、さらに、一時期には研究・制作を進めていくプレゼミやゼミでの指導教員として、お越しいただいていたこともありました。

 

これまで、書評のお仕事と同じように学生たちとの関わりも大切にしてくださった江南先生。

そんな先生が、今年度から文芸表現学科に専任の先生として加わってくださることになりました!

(専任とは大学に常勤してくださっている先生のことです◎)

 

先生のお仕事である「書評」の魅力、そして、おすすめの本(!)をお訊きしましたので、ご紹介いたします◎

もちろん、おすすめ本はこのBLOGを読んでくださっている、みなさんへ向けた特別番ですよ〜!

 

 

 

 

 

先生の専門領域とその魅力について教えてください

専任講師に着任した、江南亜美子です。これまでも非常勤講師としてこの学科にかかわってきましたが、これからはもうすこし濃密に。よろしくお願いします。

おもに日本の現代文学や翻訳小説について、日々考えています。文学は社会とどんな関係があるのか、とか、いい小説の「いい」ってなんだろう、と考えては、それを書評や論考のかたちにして、新聞や文芸誌あるいはファッション誌などで発表しています。

人間は言葉を自在に使えるようになったときから、詩をつくり、歌い、物語をつむぐという表現をしてきました。現代文学は、そんな長い人間の言語活動のいちばんあたらしいところ、新陳代謝が起きているまさに「現場」の産物です。なにがそこで日々生まれているかを見るのは、現代社会を見ること、いまの人間のありようを見ることにつながると考えています。

また、書評というのは、道しるべとして、ひとの役に立つことがあります。何かを探したりまどったりするひとに、こんな本(表現)がありますよと伝える媒介物(メディア)になれる。あるいは、新人賞への応募作品から、これぞという原石を見つけ出す仕事においても、「目利き」である必要はあります。
小説を実作すること以外にも、文芸の領域にはいろいろとおもしろいことがあるんです。

 

 

 

江南先生のおすすめ本を教えてください

なにしろ書評家を名乗っているぐらいなので、ひとに本をおすすめするのは得意です。

得意ですが、簡単ではなくていつも悩みます(このことはまたあとで言います)。

 

『坂下あたると、しじょうの宇宙』(町屋良平/集英社)

詩や小説を書く高校生が主人公の小説です。「詩情」なるものがあるとして、それはAIにも生み出せるのか。逆に言えば、人間しかできない「表現」ってあるのかな、と問うていく物語です。みなさんにぴったりじゃないでしょうか。

 

『去年の雪』(江國香織/KADOKAWA)

一冊の小説に、100人を超える登場人物が描かれます。なかには死者も。文学の欲望のひとつがこの「世界」を余すところなくとらえることだとしたら、この小説はそれを明らかに目指し、とてもうまく実現しています。表現ってすごい、と感じるために。

 

『資本主義リアリズム』(マーク・フィッシャー/セバスチャン・ブロイ・河南瑠莉訳/堀之内出版)

(とうとつな選書ですが)みなさんは、この社会ってうまくいってるのかな?と疑問に感じたことはありませんか。金儲けのうまい人が「勝ち組」と呼ばれ、効率化・大量消費・グローバリズムが良しとされる世界は、ほんとに唯一絶対? この本は資本主義以外のオルタナティヴなかたちを模索しますが、その語り口は、クールで切れ味がいい。「〇〇ってどうなの?」とひろい視点で見る批評性を養える一冊です。

 

 

『ヴィール夫人の亡霊』ダニエル・デフォー /岡本綺堂訳/青空文庫)

スーパーナチュラルな出来事が起こり、それを「真実だ」と語り手が語っていくとき、フィクションの裂け目が見えてくる。物語るとは何か、考えるためのヒントに。

 

 

 

 

 

続いて、江南先生からいただいた、みなさんへのメッセージです〜!

 

 

 

 

 

入生、在校生、高校生・受験生の皆さんへ

さっき言ったことの繰り返しになりますが、じつは得意なことが、必ずしも簡単にできることとは一致しないんです。得意なのは、それにたとえ労力がかかっても熱心に粘りづよく取り組めることだから、かもしれません。あるいはこうも言えます。これは楽しくやれるなということが、必ずしも楽(らく)にやれることとは一致しない。
みなさんには、イージーでも楽でもないけど、自分にとって情熱の傾けられる得意なこと、そして楽しくやれることをぜひ見つけてほしいと思っています。

 

 

 

新入生の皆さんへ
この4月から5月、よく知らない学生や先生がいっぱいいて、あたらしい場所があって、面白そうなことに鼻をきかせながらおずおずと、わくわくと、そこへ飛び込んでいく喜びを味わってもらいたかったです、それが大学一年生の春の醍醐味のひとつだから。だからいま大学が閉鎖なのは気の毒です。でもきっといくらでも取りかえせます。大学という場を使い倒してください。

 

在校生の皆さんへ
この困難な状況下、不安を感じたり不満を抱いたりすることもありますよね。そんなときでも、他のひとはどうかなと、くっと顔をあげてひろい視界で世界をみられるようにしたいものです(わたしも努力中)。エンパシーの能力というのでしょうか、ひとを「かわいそうに」と同情的に見るのではなく、「困ってないかな」と相手の立場になりかわって共感していくこと。きっとそんな能力を身につけつつあるはずの皆さんですから、うまく乗り切れると思います。

 

高校生・受験生の皆さんへ
言葉は力を持っています。表現は、生き方の問題にもなります。この学科には、そんなことを日々考えている学生がいて、教員がいます。それ、ちょっと興味があるなあということであれば、いつか訪ねてきてくださればうれしいです。

 

 

 

 

 

書評についてや、先生のおすすめ本をもっと知りたい!という方には、下記のWEB媒体でも江南先生の書評をご覧いただけますので、ぜひ◎

 

 

【江南先生・書評】
レッテルを逃れ、もがく
書籍:『ポラリスが降り注ぐ夜』李琴峰(り・ことみ)著(筑摩書房)
掲載:東京新聞(4/19)、Chunichi/Tokyo Bookweb

 

「ひどいことが起きたときに、それぞれ自分のやり方で反応するんだよ」大人になることの意味
書籍:『サンセット・パーク』(ポール・オースター 著)
掲載:週刊文春(2020年4月23日号)、文春オンライン

 

 

 

 

 

 

今は、直に人と会う機会が減ってしまいましたが、この機会に「ことば」についての表現を一緒に模索していきましょう!

文芸表現学科の「先生紹介」、まだまだ続きますので、どうぞお楽しみに◎

 

 

 

 

(スタッフ・大賀)

 

 

 

 

 

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2020年4月16日  インタビュー

【先生紹介01】インタビュアー・木村俊介先生

 

 

皆さん、元気におすごしでしょうか?

室内で自然を感じようと、豆苗を育て始めたスタッフの大賀です。

「本当に育つのかな」と3日間くらい怪しんでいたのですが、1週間をすぎたあたりから急に成長しはじめて、成長を「待つ」ことの大事さを学びました。

 

 

 

さて、文芸表現学科では、2020年度前期授業に向けて鋭意準備を進めています。

準備を進めていると、「ことば」を使った表現にも様々な方法があり、そのことを色んな先生にお教えいただいているんだなぁと、改めて実感しています。

また、昨今の状況を観ていると、場所や時間を超え、人に情報や想いを届けることができる「ことば」には、まだまだできることがあるのではと感じています。

 

そこで、今年度はこのBLOGをとおして、文芸表現のプロフェッショナルである先生方から、専門領域の魅力をお聞きし、授業開始を待ってくれている新入生・在校生、そして当学科に興味を持ってくださっている皆さんへ、その魅力をお伝えしていこうと思います◎

 

 

 

 

【先生紹介01】インタビュアー・木村俊介先生

「Storyville 2020 声と音と音楽をめぐって」では聞き書きについてお話くださる木村先生(右)。

「Storyville 2020 声と音と音楽をめぐって」で聞き書きについてお話くださった木村先生(右)。

 

まず、ご紹介するのは、今年度から新たに文芸表現学科に加わってくださった、木村俊介(きむら・しゅんすけ)先生です!

木村先生は、「聞き書き」という方法で様々な人を取材し、その人たちの「声」を伝える、インタビュアーというお仕事をされています。

また、ノンフィクション作家として数々の本を執筆されています。

そんなインタビュアーの木村先生に、恐縮ながら、先生の専門領域の魅力とおすすめ本をインタビューしました◎

 

 

 

先生の専門領域とその魅力について教えてください

 

専任講師に着任した、木村俊介と申します。
専門は、インタビューやノンフィクションです。
人の話を聞き、事実について書くというこの領域の魅力は、「声を手がかりにして、人の記憶の中へじかに飛び込めるところ」だと思っています。
それぞれの人の言葉の選び方や、喋り方のリズムも含め、生の声でなければ辿れない、記憶の中に奥深く展開されている広い世界がある、と実感しているのです。
この広い世界が、町を歩く人たちのほぼ誰の中にもあるとわかってからは、何もかもが取材しつくされた時代だとは思わなくなりました。
開拓地は、心の中に広がっている。町の声は、誰もが、天国も地獄も抱えた心の中の冒険で生き残ってきている、とも教えてくれました。その感触も、とても好きなのです。

 

 

 

木村先生のおすすめ本を教えてください

『バンド』(クリープハイプ/ミシマ社)

私が昨年、聞き書きした本です。ここで語られる、机に向かわず歌詞を書くスタイルは、皆さんの執筆の参考になるかもしれません。

 

『ゴールデンスランバー』(伊坂幸太郎/新潮文庫)

私は、伊坂さんへのインタビュー取材を交えながら、この文庫の巻末で解説を記しました。

 

『私の個人主義』(夏目漱石/講談社学術文庫)

ウェブ上の青空文庫でも読むことができます。(青空文庫はこちら

夏目漱石が人生の行き詰まりをどう打開したかという内容も素晴らしいですが、講演の書き起こしなので、夏目漱石の「声」を感じることができます。

 

 

 

 

 

 

また、新入生、在校生、高校生・受験生の皆さんへ、一言ずつメッセージをいただきました〜!

 

 

 

 

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新入生の皆さんへ
新入生の皆さんには、書く生活を楽しんでいただきたいです。
私も、19歳の頃にものを書き始め、21歳の頃に書いた本が刊行されてノンフィクション作家になりました。
私の知るノウハウなら何でも伝えますので、気軽に質問してくださいね。

 

在校生の皆さんへ
在校生の皆さんには、これからよろしくお願いしますとお伝えしたいです。
事実を書くことも面白いですよ、とノンフィクションを宣伝したい気持ちもあります。
取材をして小説に活かしたい方にも、そのための道具を渡せたらいいなと思っています。

 

高校生・受験生の皆さんへ
高校生・受験生で、この学科に興味を持ってここを読んでくださっている皆さんには、「これから、このブログでいろんな教員が専門領域の話をしていくので、もしかしたら、進路を考える手がかりになるかもしれないですよ」とお伝えしたいです。

 

 

 

 

木村先生のメッセージにもあるとおり、今後も文芸表現学科の先生を紹介していきますので、楽しみにしていてくださいね〜!!

 

 

 

 

(スタッフ・大賀)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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