空間演出デザイン学科

インタビュー 家成俊勝先生 (dot architects)

carre hair&make / Photo by Yuko Tada

carre hair&make / Photo by Yuko Tada

Q: 先生の仕事について教えてください。

A: 最近では、瀬戸内国際芸術祭2013で建築作品を出品しています。他には建築設計、インテリアデザイン、リノベーション、プロダクトデザインなどをしています。

 

Q: 瀬戸内国際芸術祭に出品している作品について教えてください。

A: 東日本大震災で津波で家が流されるのを見ました。購入した家の多額のローンを一生背負わなければいけない上に、新しく家を建てるのにさらにローンを重ねることになります。そういった状況を受けて、家を建てるということに別の選択肢があってもいいのではないかと思い制作しました。

Umakiamp

瀬戸内国際芸術祭の出品作品(建設途中)

 

Q: 別の選択肢とは?
A: 300万円で建つ建築です。しかし材料代のみですので、住み手が自分たちで建てなければいけません。

 

Q: 300万円で、生活できるんですか?
A: はい。ですが、今回のものは瀬戸内国際芸術祭用に少し変更して、大きなキッチンとスタジオがあったり、野外映画館のようなものがある建築です。

 

Q: 完全な完成品ではなく、ある程度のフレキシブルさを持っているわけですね。
A: そうです。今回は観光客の人も地元の人も自由に使える場所になっていることで、関係性を作ることができればと考えています。

 

Q: この学科では、ソーシャルデザインというテーマを掲げているのですが、先生にとってのソーシャルの範囲とは?
A: めっちゃ広いです。もののカタチだけのデザインだけではなくて、同時に関係性を築いたりというところでしょうか。

 

photo : Takumi Ota

超並列という概念で建築模型を作るプロジェクト / photo : Takumi Ota

Q: では、関係性ということについてお聞きしたいと思います。家成先生にとって関係性の遊びが有効に働くのはどういったことでしょう?

A: 過去に超並列という概念で建築模型を作るプロジェクトをしました。30人が共同して、ある一軒の建物を増築していくというものです。ルールとして全体を整えないようにして、各々が周りに暮らす人々や環境を思いやって改修/増築していくと、最終的には一人の建築家ではとても作れないような随所に素晴らしい空間を持った建築が出来上がります。皆で「共につくる」という意識が大切です。

 

Q:先生は社会の課題を発見するために実験的なリサーチも数多く行われています。意地悪な質問かもしれませんが、もし問題解決ということを抜きにして何かを作ることがあるとすれば、何を作りたいですか?
A:自己表現という制作の方法は苦手なので、やっぱり今進めていることと同じようなものを作ると思います。

 

Q: つまり、家成先生にとっては問題解決と、自分の好奇心は同一であるということでしょうか。
A: そうだと思います。問題解決というと非常に固い印象をもたれますが、色々な人の役に立つことと自分が面白いと思うことを両立することが大切です。

 

リサーチ

障がい者福祉施設の環境改善のためのリサーチプロジェクト

Q: (障がい者福祉施設の環境改善のためのリサーチプロジェクトを見て)このモップを使ってリサーチをする方法なんて、すごく面白いと思います。
A: リサーチ対象者にビデオカメラとともにモップ(クイックルワイパー)を持ってもらって、掃除しながら独り言を呟いてもらう。そうすると、まず掃除に意識が向かうので、バイアスのかかっていない言葉が拾えるわけです。その他にも様々なリサーチを行い、施設の使用者の声を大きな模型に直接書き込むことで、施設の使用状況を可視化しました。

 

Q: リサーチをするときに気をつけていることはどういったことでしょうか?
A: こちらから何かを聞き出すという態度は非常に危険です。知らず知らずのうちに、自分の常識に基づく都合の良い問題に置き換えてしまいます。そうならないように、リサーチ対象者から滲み出るような仕組みを作ることが大切です。

 

Q: では最後に、空デをさらに面白くするためのアイデアをひとつ。
A: ソーシャルデザインの軸にそって(すべてのデザインはソーシャルだと思っていますが)ソーシャルデザイン軍団として空デが面白いと思えるような状況をつくれればと思います。学生と現場に乗り込んでみたりしたいですね。

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