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ランドスケープデザインコース 東 陽一

ここは渡り鳥たちの空港 多摩川河口ウェットランドパーク計画

季節ごとに北から南、南から北へとはるかな距離を飛翔していく渡り鳥。日本列島は、その地理的特性から渡り鳥の主要な渡りコースとなっている。
かつて東京湾には広大な干潟があり、多くの水鳥がやってきた。戦後の埋立等の開発により、干潟は8割が消失した。東京都大田区と神奈川県川崎市の境にある多摩川河口周辺もその例外ではない。それでも、大きく減少したとは言え、今も干潟やヨシ原が広がり、シギ・チドリ、カモ類などの渡り鳥にとって重要な地域である。

私が初めて足を運んだ1990年頃、多摩川河口は工場地帯と空港に囲まれ、交通の便が悪かった。一部の鳥好き、釣り好き、飛行機好きが訪れるだけの場所だったかもしれない。
しかし、羽田空港の第3ターミナル開業や産業構造の変化により、2010年代以降、周辺環境は大きく変わった。京浜急行・モノレールの駅ができ、徒歩10分で干潟に対面できるのである。両岸を結ぶ多摩川スカイブリッジが開通し、商業施設や緑道公園も整備された。そのような中でも、渡り鳥にとっての湿地環境の重要性は変わらない。

人々が気軽に訪れることができるようになったが、干潟やヨシ原の自然、野鳥に目を向ける人はまだ少ない。ここでは陸から川、海へと移行する自然を体験することができ、空港の存在により高層建築物がないため、広大な水辺景観を楽しむことができる。
何よりもバードウォッチングは世界共通の趣味である。国際空港の真ん前で日本の野鳥を観察できることは、外国からの観光客にもアピールできることである。
一方で、干潟の減少や、バードストライク(航空機と野鳥の衝突)といった課題も抱えている。

ここは、ある意味「首都圏の知られざる自然」である。河口の自然を楽しみ、野鳥を観て、渡っていく遠い国に思いをはせ、そして湿地環境の改善を図るための計画を提案したい。

東 陽一

ランドスケープデザインコース

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