飾字
食と視覚の往還
イラストレーションコース 西山 大輝
コース奨励賞
所要時間:約104時間
制作ツール:clip studio, blender
解像度:6772x3893px
本制作は、作字とイラストレーションを融合させ、「食」を通じて言葉に宿る情感を視覚化した三点からなる連作作品である。AIによる画像生成技術が発展し、料理や人物像といった外見的なイメージは容易に生み出されるようになった一方で、誰とどこでどのような気持ちで食卓を囲むのかといった文脈や、そこに結びついた記憶や幸福感までは再現できない。本作は、そうした「AIには理解されない部分」をすくい上げることを目的としている。
テーマを人間の営みの根源である「食」に限定し、食事を単なる栄養摂取ではなく、時間や場所、人間関係、感情が重なり合う体験として捉えた。「宴」「饗」「飯」などの漢字を主題に据え、その語感や文字の形、文化的背景、そして自身の記憶を手がかりに作字を行い、同時にその言葉が作用する状況に置かれた人物のイラストレーションを制作している。文字と人物が画面内で干渉し合う構成とすることで、説明的な描写に頼らず、その場に流れる空気や心理の揺らぎを想起させることを意図した。
作字された文字は装飾やタイトルではなく、登場人物の感情や場面を象徴する存在として機能する。鑑賞者は、文字から情景を想像し、人物の佇まいから文字の意味を読み直すという往還的な読み取りを行う。その過程で、AIが生成する「それらしい食のイメージ」と、人間の経験に根ざした「食べる幸福」との違いが、静かに立ち上がる構造を目指している。
三点の作品を通して作字表現が単調にならないよう、それぞれ異なるテイストを与えつつ、文字の視認性にも配慮した。文字や枠には落ち影を加え、人物と重なる部分では白枠を設けて視線の流れを整理している。また、コントラストが強くなりすぎる箇所では輝度合成によって調整を行い、デザイン性と可読性の両立を図った。
本制作は、商業的な完成度のみを追求するのではなく、「AIには生めないイラストとは何か」という問いを、「食」をめぐる感情や記憶に焦点を当てながら探る試みである。鑑賞者が自身の食卓の記憶や、大切な誰かと囲んだ時間を思い起こしながら、言葉と絵のあいだに生まれるぬくもりを感じ取ってもらえることを願っている。
居酒屋の一場面を通して、文字と人物の関係から場の高揚感や仕事終わりの緊張と解放感を描き、大人の食の空気を表現した作品。
子供時代の「ごちそう」の記憶をもとに、友達と囲む小さな祝祭の時間を、作字と構図、光の表現によって描いた作品。
実家の食卓を題材に、同じ卓を囲みながらもそれぞれ異なる仕草や距離感を持つ家族の、静かで温かな日常を描いた作品。
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