過去からの逸脱とその先の未来
イラストレーションコース 吉田すずか
サイズ:1536×2800
現代では、過去の経験やそこから生じたコンプレックスに囚われ、前向きに生きていくことが苦しいと悩みを抱える人が多い。そしてSNSの発展によって他人の情報が過剰に入るようになり、自分の価値を見失ったり、比較によって苦しみ、自分の殻の中に籠ってしまうなど年代問わず増えている。また近年のゲーム作品でも、自分自身の葛藤や心の問題と向き合う物語も増えており、プレイヤーが自分の経験を投影しやすい表現が多く見られ、現代の問題として取り上げられている。
こうした自己と他人の境界が曖昧になることで生まれる息苦しさとそこから解放されて未来への希望が見え始めるといった表現を目指して制作した。
本作品の上部に描いた天使は、宗教的な「導き」「見守り」「伝える者」という役割を参照しつつ、未来へ踏み出そうとする新しい自分、あるいは深いところまで降りて寄り添ってくれる他者の存在を象徴している。天使の羽は優しく包み込む温かい存在として閉塞感の強い水中に対して、対照的な「安心」「保護」「受け入れ」の象徴としている。
作品全体の明暗の対比は、沈むほど暗い色調と、天使の周囲に差す光という構図で、過去と未来、停滞と解放を視覚的に示している。現代社会で抱える問題で抱えている息苦しさ状態を、水中での苦しさで表しており、そこへ自ら降りてきてくれる存在の光を対比させることで、「過去に囚われた自分が未来へ向かうための転換点」を表現した。
また、下部には上から反射して映るわずかな光を配置し、暗い空間の中にも視線がとどまる要素を残した。この光は、過去に沈み込んだ状態を照らすような未来に続く良い変化になる可能性を視差させる要素として追加した。
私自身もまた、過去の出来事やそこから生まれた言葉では表しきれない苦しい感情に長く縛られ、何もできず前に進めないことがあった。頭では切り替えようとしても、心が追いつかず、ただ無気力に周りに合わせて思考を放棄していたこともあった。そうした状態を言葉だけで整理するのではなく、視覚的なイメージとして表現することで、自分の内側にある停滞や不安を客観的に捉えたいと考え、本作品の制作に至った。
そして、創作を通して自分の内面と向き合うこと自体が過去から距離をとり、前に進むための一つの方法になり得るのではないかという自己を省みる点も、本作品のコンセプトの一つである。
吉田すずか
イラストレーションコース
ハリネズミを飼っています。
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