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ケアする人をケアする医療空間の検討

病院建築の変遷と地域包括ケアシステム時代のサステナブルホスピタル

(大学院)空間デザイン分野 穴田 周吾

22㎝×16㎝・スチレンボード

本研究は「ケアする人をケアする医療空間」をテーマに、病院建築の変遷と現代医療現場の課題を踏まえ、医療従事者支援のための空間モデルを提案するものである。

研究方法は①病院空間デザインの歴史的整理、②働き方と空間の関係分析、③国内外の医療空間事例調査、④病棟改修を想定した理想空間のデザイン検討の四点を軸とした。成果物として、脳・身体・精神の三領域を支援する仮眠ブース、ラウンジ、1on1カウンセリングルーム等を統合した病棟改修案を提示し、文章・図表・空間イメージ図を用いた既存病院に適用可能なプロトタイプとしてまとめた。

背景には、人口減少・高齢化が進む日本において、医療・介護の持続可能性が深刻な課題となっている現状がある。病院は労働集約型産業であり、長時間勤務や夜勤に起因する疲労やバーンアウト、離職が医療の質や安全性に影響している。加えて、病院建築は長期に更新されないため、空間が働き方を固定化する構造的問題を抱える。これらを踏まえ、本研究は病院を「治療の場」に加え「ケアする人をケアする場」と捉え、医療従事者支援を目的とした空間デザインの在り方を検討した。

既存研究が個別事例や休憩効果の検討に留まる中、本研究は制度・経営・建築・働き方を横断し、脳・身体・精神の三視点から医療従事者を支援するデザインフレームを提示した点に独自性がある。また、非稼働病床や政策支援を活用し、1室単位から病棟単位まで段階的に実装可能な改修シナリオを示した点も社会実装上の価値を持つ。

自己評価として、空間設計が医療従事者の負担や医療の質に構造的影響を与えることを示し、具体的モデルを提示できた点を成果と捉える。一方、事例数の限定性、コストや運用を含む実装検討、制度的評価の不足、休息を許容する職場文化形成などが今後の課題である。

医療従事者のケアを通じた病院の持続可能性を空間デザインから再考する試みとして一定の意義を有し、今後は実証研究や制度設計との接続が求められる。

穴田 周吾

(大学院)空間デザイン分野

私は大学を卒業後、医療重従事者(理学療法士)として大阪で町に一つしかない病院に就職しました。そして同じグループの介護施設や訪問リハビリや行政の介護予防など、地域の医療と介護の現場を広く経験しました。

その中で病院の医療インフラとして持続可能性の向上に課題意識を持ち、経営学の大学院に進学し卒業後、病院経営と医療データ分析を専門とするコンサルティングファームで働きました。現在は厚生労働省で、医療をデジタルで良くする医療DX政策に取り組んでいます。

2回目の大学院となる京都芸術大学では空間デザインからの病院の持続可能性や在り方を研究していました。

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