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voices

映像コース 大谷 龍太朗 (Ryutaro Otani / Innocent Takes Ocean)

コース奨励賞

MusicVideo (4分10秒)

あなたの声で、わたしの声で、この世界を照らしていくことは可能でしょうか。

私たちが生きる現代社会には、あまりにも多くの二項対立が溢れています。善か悪か、成功か失敗か、希望か絶望か。こうした極端な価値判断は、時に不寛容を生み、争いの火種となり、そして自分や他者を傷つけることに繋がります。そうした対立の根底を探ると、そこにあるのは単なる怒りよりも、「不安や恐怖」であることを発見しました。

本作品『voices』は「二項対立を超えた絶望と希望の融和」をテーマに掲げたミュージックビデオです。

音楽面ではPopPunk的要素を核とし、「激しさ」と「繊細さ」が共存し、そして心のありのままを叫ぶ「衝動性」を軸に、言葉にならない曖昧な感情を表現しました。また映像面では抽象表現を中心に据え、対立のメタファーとそれらを手放すストーリーを構築し、固定観念を揺さぶる表現を選びました。音楽と映像の二つを掛け合わせることで、新たな価値観と問いを生み出せるのではないかと感じています。

例えば、音楽における「wow wow」という叫びには具体的な意味を持つ言葉はありません。だからこそ聴き手がその時々に抱く思いや、名前のつかない感情をそのまま投影することができます。また映像における「閉まる電車のドア」という表象は、一方で「隔絶や終わり」を意味すると同時に「出発や始まり」を予感させます。音楽も映像も、一つの表象に潜む多様な意味を単純化せずに受け入れることを可能にし、そしてその曖昧さの中にこそ、対立を乗り越える鍵があるのではないでしょうか。

自分の内側にある「不安や恐怖」などの痛みを、排除すべき敵ではなく、大切な自分の一部として認めてあげること。明確な答えや誰かの言葉によって感情を覆い隠さず、本当の自分の声に耳を澄ませること。その対話のプロセスへ向かう一歩を、この作品が支えられるよう心を込めました。

絶対的な価値観へ揺らぎを生じさせ、誰もが自分の持つ力を過小評価しなくなることを目指した作品です。私たち一人ひとりは思っている以上に素晴らしい力を持っています。だからこそ責任も伴うけれど、その責任をguiltから切り離し、未来へのbridgeへと転換したい。

この作品が、あなた自身の「voices」を響かせ、世界を少しだけ優しく塗り替えるきっかけになることを願っています。

voices

大谷 龍太朗 Ryutaro Otani / Innocent Takes Ocean

映像コース

CONTACT

 「優しい世界を考える」というビジョンのもと、公立学校の教師を務める傍ら、ソロプロジェクト「Innocent Takes Ocean」として音楽を制作している(非営利)。作詞作曲からマスタリングまで全工程を自ら手掛け、純粋な心の声を表現へと昇華を試みている。
 映画『スパイダーマン』から「善悪の不可分性」と「大いなる力に伴う責任」を学び、誰もが抱える心の葛藤を見つめ、自分の持つ力をどう使うべきかを自問し続けている。また、激しさと繊細さが共存するPopPunkの精神を核に据え、二項対立を超えた強さを表現の糧にしている。
 原点は、小学生の頃にフィリピンで経験した言葉を超えた心の交流だ。学ぶことや表現を通じて想像力を拡張することが、他者への「優しさ」の起点になると感じている。一人の人間として、真摯に世界と向き合い、その可能性を追求し続けたい。

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