沈黙の中の聲
沈黙が、わたしを語りはじめる。
映像コース 小野寺 あゆみ
学長賞
人前に立ったとき、
声を出そうとしても言葉が出てこなかった経験はありませんか。
この映像は、「声にならない声」や「沈黙」をテーマにした作品です。
声とは、必ずしも音として発せられるものだけではありません。
緊張で言葉が止まる瞬間や、沈黙の中にも、確かにその人自身は存在しています。
本作では、そうした目に見えにくい感情や状態を、映像によって可視化することを試みました。
幼少期から人前で話すことが苦手で、「言葉で自分を表現すること」に強い葛藤を抱えてきました。
一方で、日本舞踊や演劇との出会いは、声以外の方法で自分を表現する場を与えてくれました。
それらの経験を振り返る中で、「緊張」は克服すべき欠点ではなく、声が生まれる前に現れる大切な感覚なのではないかと考えるようになりました。
映像は、ノートに手書きする行為、写真、線画アニメーション、短いテロップによって構成されています。
ノートの〈書く・読む・開く・閉じる〉という動作は、過去の記憶や感情を整理するためのものです。
線画アニメーションは、呼吸や震え、沈黙といった内面の感情を象徴的に表現し、
写真は現実の時間を残します。
ナレーションはあえて入れていません。無音や「間(ま)」の時間を通して、「沈黙そのものを聴く」体験をしてもらえたらと思います。
緊張すること、沈黙してしまうことは、決して悪いことではありません。
この映像が
声を出せない瞬間に立ち止まり
誰かの沈黙に寄り添い、
「待つ」「聴く」ためのきっかけとなれば嬉しいです。
〜沈黙が、わたしを語りはじめる。〜
小野寺 あゆみ
映像コース
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