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『燐光、烈を宿す』

書画コース 佐々木英俊

70cm×135cm
画仙紙、墨、アクリル絵の具

不動明王の忿怒の表情は、迷いや悪を断ち切るための強い慈悲の現れとされています。卒業制作1では、この精神性を四段階の表情変化として捉
え、心の動きを描きました。卒業制作2では、さらに探究を深め、不動明王を全身像として制作しました。自ら制作した像を多方向から観察し、そ
の中で最も力強さを感じた下からの仰視の視点を選び、迫力ある不動明王の姿を目指しました。
制作の初期段階では、12×16インチの水彩紙に木炭で顔を何枚も描きました。納得のいく表情が得られた後、その紙を中心に、上下左右へ別の紙を
配置しながら全身を描き進めました。全体像がほぼ完成した段階で紙を貼り合わせ、全身像としてのバランスを確認し、不自然な箇所は修正を行い
ました。
その後、下絵を木炭で画仙紙に写し取り、本画を描く工程を何度も繰り返しました。制作にあたって特に意識したのは、剣の直線を画面の外へ弾き
出すように描くこと、背景の赤を霧吹きで大胆に施すこと、そして墨の量や筆致を思い切って扱うことです。その表現を実現するため、大筆も新た
に購入しました。
初回提出時の講評では、次のような指摘を受けました。
「現段階では、作品として非常に良い“骨格”ができている。ここから細部を仕上げていくことで、完成度がさらに高まる。髪の毛のアウトラインは
やや丸く収まっているため、腕の裏側や剣の上まで描き込むことで空間的な奥行きが生まれる。形を少し崩し、前後関係を明確にすると画面に動き
が出る。また、左手の手首が折れているように見えるため修正が必要である。剣の柄や羂索の紐についても、画面内で窮屈であれば、思い切って画
面の外へ出す構成が効果的である。画面外の空間を意識させることで、作品全体がより力強い印象になる。すでに十分な力強さを備えているため、
今の雰囲気を損なわないよう、慎重にブラッシュアップしてほしい。」
これらの指摘を踏まえ、最終段階では手足や剣のバランスを見直し、大胆な筆致を失わないよう意識しながら、細部の描写を丁寧に仕上げました。

佐々木英俊

書画コース

CONTACT

約30年前、人形作りの道に踏み入れ、人形作家の先生に導かれながら制作を続けてきました。子供、力士、仏像、祭りなどを題材に、布、木毛、樹脂粘土、和紙を用いた固定ポーズ人形を制作しています。
私の人形は、彫刻やフィギュアとも異なる曖昧な領域にあり、形そのものよりも、その奥に宿る力や気配を追い求めてきました。しかし立体表現では、形が前面に出過ぎてしまう迷いも常に抱えてきました。
画廊のグループ展で出会った墨絵は、その問いと重なり、強く惹かれました。水墨画の筆致と余白が生む表現は、形を削ぎ落としながら存在を立ち上がらせます。人形制作で培った視点を平面へと移し替え、形の奥にあるものを探る試みとして、水墨画に取り組んでいます。

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