文芸コース 武藤 豊博
この大学で学ぶまで、小説というものを書いたことがなかった。けれど、卒業研究の題材は早くから決めていた。母と養祖母(母の叔母)の、二人が歩んできた人生を辿ること。これが今、私の書くべきことだ。そう思えたのだ。
当初の構想は、母と養祖母を取り巻く何人かの視点(私を含む)で描く短編集だった。けれど構成がなかなか上手くまとまらない。担当教員の指導もあり、時系列に沿って、二人の足跡を辿る「私」と、養祖母と共に(あるいは決別して)人生を歩んだ「母」の視点で描く、一つの物語の構成へと方向転換し、なんとか書ききることができた。
ただ、作品を書き終えて提出したあとに、大きなミスが見つかった。ある重要な「言葉」の語意が間違っていたのだ。私の思い込みだった。
初めての小説は、苦い作品になってしまった。今は、自分なりに二人の足跡を辿ることができたという安堵感と、私自身の丁寧に「言葉」を紡いで文章を書くということへの甘さ、不誠実さに対する悔いが入り混じる。
この苦さを決して忘れない。そして「言葉」の一つ一つに誠実に向き合い文章を書いていきたいと思う。この卒業研究は、まだ私のスタートラインなのだから。
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